フィラデルフィア市の交通機関が窮地に 予算不足で45%のサービス削減案

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フィラデルフィア市の交通当局が45%のサービス削減を提案

アメリカ・フィラデルフィア市で、公共交通機関の存続が窮地に立たされています。

市域で近郊鉄道・地下鉄・トラム・バスを運行するSEPTA(Southeastern Pennsylvania Transportation Authority 南東ペンシルバニア交通局)が、大幅なサービスの削減と運賃の値上げを提案しています。

サービス削減は2段階に分けて行われ、まず2025年8月以降にに20%、2026年1月にさらに25%が縮小され、2025年9月には、21%の運賃値上げも予定されています。

現在該当地域では1日に延べ80万人が公共交通機関を利用していますが、実施されれば、現在提供されているサービスの45%が削減され、当局によれば「迂回を余儀なくされる人や、サービスに到達できない人」が発生するとしています。

また、直接的な影響のほか、当局の試算では

  • 199億ドル(約2兆9850億円)の住宅価値の損失
  • 76700人の雇用喪失
  • 6億ドル(約900億円)の税収減

を引き起こすとしています。

45%とは? フィラデルフィア市の交通機関はどのくらい削減される?

さて、具体的にはどのようなサービス削減が提案されているのでしょうか?

Wikipedia英語版の記事によれば、SEPTAはバス139路線、トロリーバス3路線、地下鉄6路線、近郊鉄道13路線を運行し、地下鉄の総延長は126㎞、近郊鉄道の総延長は243㎞(他社線を合わせれば450㎞)に及びます。

フィラデルフィア市の人口は約160万人、都市圏人口は約600万人ともいわれています。単純に人口だけを日本にあてはめれば、名古屋市の人口約230万人、都市圏人口約680万人に近い数字となっています。名古屋市営地下鉄の総延長が約93㎞、名鉄の総延長が約443㎞と比較しても、自動車社会のアメリカとしてはかなりの規模と言えます。

ただし、地下鉄や近郊鉄道の区分は日本人のイメージからは当てはまらないものもあり、実際地下鉄6路線のうち、いわゆるヘビーレールは2路線で、残りは地下区間のあるLRTないしは路面電車に近い運行形態となっています。

路面区間から地下区間へと入る、SEPTA MetroのT線 日本人の感覚からすると「地下区間のある路面電車」といったところだが、アメリカでは地下鉄や路面電車といった区別はなく、市街地を地下で通り抜ける路線は「Metro」と呼ばれることが多い なお、1993年以降車両は川崎重工製となっている Wikipedia(T_(SEPTA_Metro))より @Schedukiam

当局の提案によれば、まず2025年8月に第一段階としてバス32路線を廃止、16路線を区間短縮、バス63路線と地下鉄5路線12系統、近郊路線全路線で運行間隔の拡大などのサービスの縮小が予定され、この時点で20%のサービス削減となります。2025年9月には料金の改定も予定され、1回券が2.50ドルから2.90ドルへと改定されるなど、平均で21.5%の値上げとなります。

2026年1月にはさらに第二段階として、バス18路線、地下鉄B線の支線区間、近郊路線5路線が廃止、地下鉄2系統がバス転換となり、残存地下鉄、近郊路線の夜9時以降の運行が取りやめとなります。これにより、2025年初頭と比べ45%のサービス削減となる予定です。

本数減やバスの路線再編といった生易しいものではなく、鉄道の路線廃線を含むかなり大きなサービスダウンとなります。

フィラデルフィア市の交通機関の大幅削減 その理由とは?

では、このような提案がなされる原因は何だったのでしょうか?

その理由はずばり、資金の不足です。

当局によれば、2025年7月1日には2億1300万ドル(約319億円)の資金不足に陥るとされています。もともとは2億4000万ドルの資金不足が予想されていましたが、緊急財政措置によりいくばくかの改善と見たということですが、当局の言葉を借りればこれ以上は「予算から削減できるものはサービス以外には何も残っていない」状態とのことです。

この状況を打開するためには、適切な運賃改定はもちろんのこと、行政からの支援を受ける以外に方法はなく、「ペンシルバニア州からの恒久的な財源確保策がなければ、SEPTAは現在のサービスレベルを維持できない、サービス提供が可能な範囲まで縮小せざるを得ない」というのが当局の主張です。

もともとフィラデルフィアを中心市とした地域では、地域や交通機関ごとに多くの交通事業者が存在しており、政府からの資金配分を調整する目的でこれらの事業者を統合して1965年に現在のSEPTAが誕生しました。こうした経緯から、もともとの事業者ごとの利権も強く、「地域に蔓延する地方主義と些細な政治的争いといった、より広範な問題を反映しているに過ぎない」とも評され、州の政治情勢や地域ごとの駆け引きが優先されてサービス提供に大きな影を落としていました。

SEPTA近郊路線の主力車両、シルバーライナーV 2010年から導入され、保有車両の1/3を占める 無骨な作りがいかにもアメリカっぽいが、韓国の現代ロテム製で、欧米にしては珍しく動力分散式となっている 車体中央の扉は2枚扉だが高床ホームと低床ホーム用に分かれ、中央には仕切りが入っている謎構造 SEPTAはアメリカらしくプッシュプル編成も所有しているが、加減速性能に劣るため主に朝夕の急行列車として使用されている Wikipedia(SEPTA_Regional_Rail)より @Dough4872

2000年代以降は、とくにアメリカで公共交通機関が見直される動きが強くなったこともあり、ハードとソフトの両面でサービス改善が大きく進み、2012年にはSEPTAが北米最優秀大規模交通機関として選出されています。

しかし、2010年代以降はガソリン価格の低下や交通手段の多様化により、2014年から2019年までで乗客数が13%も減少、これに追い打ちをかけるようにコロナ禍が発生し、財政的に大きなダメージを受けることとなりました。

なお、2025年5月19日から21日にかけて、これらの問題に関して公聴会が開かれています。

アメリカの公聴会とは、議員が政策を提案するにあたり専門家や関係者から広く意見を聞くための制度で、行政や議会が国民の声を広く聞いて政策を決定するためにの重要な制度です。この公聴会の結果によって、今後フィラデルフィア市域の交通がどうなるのかが大きく変わることになります。

※本稿では、1ドル=150円として計算しています

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