阪神8000系がかつての「赤胴色」に 2025年より全車両を塗装変更
阪神電鉄は、同社の所有する8000系について、登場時の「赤胴色」と呼ばれる塗装に変更することを発表しました。
対象となるのは8000系の全19編成114両で、2025年から3~4年かけて順次変更されます。
当初赤胴色だった8000系は、2002年以降実施されたリニューアルを機に、当時生産されていた9300系に合わせて上部オレンジ、下部ホワイトの塗分けになっていますが、これを2025年から3~4年かけて順次変更していくということです。
また、新型車両として2027年度に3000系を投入することが発表されていますが、こちらも赤胴車をイメージした「リ・バーミリオン」を配色するほか、8000系以外の既存車についてはこの3000系をベースとした塗装に変更されるということです。

余談ですが、現在8000系などで使用されているオレンジと白の塗分けは、オレンジ色が宿敵のあのプロ野球チームを連想させるとしてたびたび株主総会などでもやり玉に挙がっており、その声が届いたのかどうなのかはなんともわかりません。
赤胴色とは? 優等列車は赤、普通列車は青、阪神独特の事情が
阪神の「赤胴車」とは、同線の特急・急行など優等列車に使用される車両のカラーとして、1956年(昭和33年)に製造された3301形・3501形で採用された塗装です。

1950年代初めの阪神電鉄は、軌道法を根拠として建設された経緯から、14m級の中型車両が主力として使われていました。さらに地上設備の制約もあって国鉄、阪急が阪神間を20分台で結んでいたのに比べ、阪神は35分以上となっており、旅客数でも大きな差がついていました。しかし、経済成長に伴って旅客数は急増し、設備の改良とともに高速運転に対応した大型車両を投入して巻き返しを図ることとなり、新たに設定された特急用の車両として1954年(昭和29年)に阪神初の大型車両となる3011形が投入されました。
これにより、阪神間はノンストップで最速25分となり、所要時間では国鉄、阪急と並び、直通客数も大きな伸びを見せましたが、一方で特急の運転にあたっては問題も発生しました。
路面電車として開業した名残で、阪神本線は平均駅間が1㎞と短く、特急の高性能化だけではなく各駅停車にも特急から逃げ切る性能が求められるようになりました。
このため、1950年代後半以降は、高速運転を主体とした優等列車用車両と、高加減速性能に重点を置いた各駅停車用と2種類の車両に分けて製造されるととなり、優等列車用の塗装として登場したのが赤胴車でした。

ちなみに、普通電車用としては1958年(昭和34年)から製造された5101形・5201形が採用したマリンブルーとクリームの塗分けが標準となり、こちらは「青銅車」と呼ばれるようになります。
阪神の象徴だった「赤胴車」「青胴車」 震災復旧を機に変更
阪神の「赤胴車」「青胴車」は、その後長い間阪神電車の象徴として使用されることとなりますが、思わぬ形で塗装変更の機会が訪れました。
1995年に発生した阪神大震災がそれで、当時所有していた車両の1/3にあたる126両が被災、このうち41両(赤胴車33両、青銅車8両)が修理不能として廃車されました。
このため、急遽車両の補充を行うこととなり、各駅停車用としては震災前から計画されていた5500系を前倒しして投入することとなりましたが、この際に塗装も青銅車のイメージを残しながら水色と白の塗分けとして36年ぶりに青胴車の塗装変更が行われました。

もともと計画のあった5500系に比べ、優等列車用車両は新たに設計する必要があり、工期短縮のため従来阪神用の車両を製造していた武庫川車両工業(当時)ではなく、製造ラインがたまたま空いていた川崎重工業兵庫工場で製造されることとなりました。さらに、このラインがステンレス車両用であったことから、設計と製造期間の短縮を狙って阪神としては1959年の5101-5201編成で試験採用した以来の、37年ぶりのステンレス車両となっています。

2025年現在、優等列車用としては2001年から製造された9300系を、各駅停車用としては2010年から製造された5550系を最後に、導入予定の3000系を含めて阪神ではステンレス車の製造が続いています。