ヨーロッパの鉄道 列車ごとの発車ホームは決まっていない?
先日とあるテレビで、ヨーロッパの駅の光景が紹介されて話題となっているようです。
それは、ヨーロッパでは乗りたい列車がどのホームに到着するか分からない、というもの。
日本では、列車ごとの到着ホームは決められており、時刻表やWebからも確認でき、初めて行った駅でも余裕を持って行動することができます。指定席を確保していない場合は列車の到着前からホームで並んで待つ光景もおなじみです。
番組内では、「直前までホームが分からない」と不満げにコメントされており、果たして現地の事情はどうなっているのでしょうか。
発車ホームは「一応」決まっているらしい でも予定と運用は別問題
実はこの話題、ヨーロッパを鉄道で旅したことがある方なら 「ヨーロッパあるある」として同じような経験をお持ちの方も多いかと思います。たしかに、乗りたい列車の発車ホームがなかなか表示されないことや、直前になって変更になることはよくあることです。
ただし結論から言えば、一応列車ごとに発着するホームは決められています。
これは、駅に掲出してある時刻表からも確認することができ、したがって「ヨーロッパでは列車が発車するホームは決まっていない」という表現は間違っていることになります。
ただし、これがその通り運用されているかというとまたそれは別の話です。
すべての列車が予定されたホームで発着するためには、すべての列車が時刻表どおりに運行されていることが前提となります。日本では当たり前のこの前提が、ヨーロッパでは当たり前ではありません。
ヨーロッパでは、列車が遅れたり突然運休したりすることは日常茶飯事で、長距離列車ともなると数十分の遅れもほとんど問題とされません。列車の運行がこのような状態ですから、その場その場で空いているホームへ列車を発着させることとなり、結局発着ホームは「ほぼ決まっていない」状態となってしまうのです。
では乗客はどうやって列車の到着ホームを見つけるのか? それが駅構内に設置された発着案内板です。ヨーロッパの主要駅には、空港で見かけるような到着/出発に分かれた大型の発着案内板が設置されており、発着する列車の番号や行先、遅れ、ホームなどのすべての情報が一目でわかるようになっています。
発着ホームは分かり次第この案内板に表示されるようになっているのですが、遅れていても随分と前から決定しているかと思えば、定刻通りなのに到着寸前になるまで表示されないことも多く、長距離列車ともなれば、乗客は大きな荷物を抱えて発着板の前で待ちぼうけとなることもよくある話で、発車間際に遠くのホームが表示されて大慌て、なんてこともしょっちゅうです。
日本人にはおなじみの「乗車目標」もありません
さて、ヨーロッパのホームではもうひとつ、日本でよく見かけるあるものがあまり見られません。
それは、乗車目標です。
日本ではこの乗車目標をめがけて乗客が並ぶ姿が一般的ですが、ヨーロッパではそのような光景はなく、長距離列車はもちろん地下鉄など乗降が頻繁な路線でも見かけることはありません。乗客はホーム上の好きな位置で待ち、列車が停止したら扉めがけてぞろぞろと移動する光景が当たり前です。
その理由としては、都市部でも日本ほど混まないため、整列乗車が必要ないという点が挙げられますが、そもそも停車位置がおおざっぱで並んでもそこに扉が来るとは限らない、というのも大きな理由として挙げられます。
その代わり主要駅では、ホームをセクションごとに区切り(A、B、Cゾーンなど)、大体どの位置に何号車が停車するか、という表示を見かけることができます。
そういえば、日本でも90年代くらいまでは、1両ずつくらいの間隔でホームの柱に番号札がついており、乗車位置を案内する際に「柱番号〇番付近」という放送を聞きましたが、近年は聞かないような気がします。
また、両側をトンネルに挟まれた地下鉄では、さすがに大体同じ位置に停車するはずで、ロンドン地下鉄の一部で乗車目標を表示するテストが行われたことがありました。
しかし、停車位置をピタリと当てて真っ先に乗り込むことを長年鍛錬してきたロンドン市民には不評だったようで、その後広がることはありませんでした。
日本人が当然と思っていても、ところ変わればなんとやら、国ごとに事情は大きく違うものです。
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