中速鉄道とは? 石破首相の国会答弁で話題に 日本の実現可能性は?

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国会答弁で「中速鉄道」が話題に 石破首相に質問

鉄道ファンでも知られる石破首相が、「中速鉄道」の導入について言及したと話題になっています。

これは、2025年2月26日に行われた衆議院予算委員会の集中審議において、福島伸享議員と石破首相の答弁の中で行われたやり取りの1つで、茨城県選出の福島議員は、整備新幹線の計画の遅れを指摘したうえで、「最高速度が260㎞/hの新幹線と130㎞/の在来線の中間の鉄道が抜け落ちている。在来線を高速化することに技術的には問題なく、並行在来線問題も発生せず、例えば水戸から東京まで1時間以内で結ぶことができる」とし、将来的な構想について石破首相に質問したものです。

福島議員は、かねてからヨーロッパなどで盛んになっている自動車・航空から鉄道へのモーダルシフトについて、鉄道先進国の中で日本だけが遅れを取っていると発言していたほか、みどりの窓口の削減や鉄道事故についても意見するなど、鉄道行政に対して積極的な行動が過去にも見受けられます。

選択肢の一つに… 石破首相が答弁

この発言のもとになっているのは、2024年末に刊行された「の発言のもとになっているのが、2024年末に刊行された「中速鉄道のすゝめ(曽根悟著)」であることは本人も語っているところですので、興味のある方はリンクからご覧ください。

これに対し、石破首相の答弁は「新幹線計画が今後30年で完成するのならそれがベストに違いないが、北陸・北海道・九州新幹線の全通を待って次の計画となれば相当の年月が必要になる。その間に人口は減少しインフラは老朽化する現実の中で、フル規格新幹線をあきらめるとは言わないが、中速新幹線という選択肢も議論する必要がある。ヨーロッパの鉄道の状況も先の著書で指摘されている通りで、日本の鉄道の持っているメリットはさらに探求される必要がある」というものでした。

また、続いて福島議員は「このペースでいくと(計画中の新幹線)全線の完成は25世紀になること、整備新幹線計画はいまだ有効であるが、昭和48年に策定されたもので現実には即しておらず、これが中速鉄道の導入など新たな政策導入の妨げになっていること、国鉄が民営化された影響で、道路予算に比べ鉄道予算が非常に少なく、民間主導では設備投資が進んでいない」点を挙げ、今こそ鉄道政策を転換するべきだと発言し、これに対して石破首相が600m条項など技術的な面もあり今後対処していくと答弁したところで終了となりました。

中速鉄道とはどんなもの? 日本での実現可能性は?

そもそも中速鉄道とはいかなるものなのでしょうか?

世界には高速鉄道と呼ばれるものが存在しますが、日本では高速鉄道について、全国新幹線整備法第2条で以下のように定義されています。

  • 主たる区間を列車が200 km/h以上の高速度で走行できる幹線鉄道

ただし、これは日本独自の解釈で、国際鉄道連合によれば以下のように解釈されています。

  • 専用の高速新線は250 km/hを超える設計速度
  • 高規格化された在来線は200 km/hもしくは220 km/hの設計速度

また、国によって定義は様々で、例えば中国では

  • 250km/h以上で走行する列車用に設計された、新設の旅客専用鉄道線

と定義されています。

今回話題となった方式は、高速新線を建設することなく、在来線の改良で日本では空白域となっている150~200km/hで走行するもの、と解釈でき、こうした高速鉄道の定義に当てはまらないことから、新たに「中速鉄道」という言葉が使われたものと思われます。

ただし、あくまで国会答弁の一つとして行われたもので、果たして実現の可能性があるかは全くわかりません。たしかに、建設に必要な資金や期間、発生する並行在来線問題、さらに現在の日本の国力の現状などを考えると、フル規格新幹線が必ずしもベストであるとは言えません。

山形新幹線
在来線を改良しての高速化といえば、日本では山形新幹線や秋田新幹線が思い浮かぶ フル規格に比べて建設費は大幅に圧縮でき、並行在来線問題も発生しない Wikipedia(山形新幹線)より @Cheng-en Cheng

また、答弁内で石破首相が答えていた通り、日本の鉄道には、踏切対策上最高速度から600m以内に緊急停止できなければいけないという規定が存在し、最高速度向上のネックとなっています。

これが先の答弁で出た600m条項と呼ばれるもので、これがさらりと出てくるあたりさすがは鉄道ファンの石破さんという点はさておき、例外規定はあるものの踏切が存在する路線では、現状では最高速度向上が認められないのも事実です。

ただ、例外規定として中速鉄道が認められると、フル規格新幹線は今後建設されなくなり、これらの工事や完成を心待ちにしている利権屋などからは猛反対が起こることは容易に想像されることから、残念ながら陽の目を見る可能性は低いでしょう。

なお、本ブログでも「高速鉄道はどこまで速くなる? すでに欧州では高速化から汎用性へ」で触れたことがある通り、鉄道先進国ともいえるヨーロッパでは、新たな高速鉄道建設は下火になっています。

この理由としては、先のどの記事でも記載したように、

  • 鉄道の高速化には限界があり、一定以上の速度を要求するにはエネルギーの損失が大きくなること
  • すでに効果の見込まれる区間は供給が完了し、新たな建設区間では建設費がかかるわりにそれほど需要が見込めないこと
  • 現路線の高速化についても、例え最高速度を300㎞/hから350㎞/hとしたところで、時間短縮効果はわずかで、その割には費用がかさむこと

など、一言でいえば費用対効果があわない、という点が大きいようです。

いかにも合理的な理由を好むヨーロッパらしい考え方で、現在は最高速度は抑える代わりに、使用する線区に制限のない車両が量産されています。また、施設面では高速鉄道ほどではないにしろ、既存路線を改良することで最高速度を向上する取り組みが多くなっています。

ICE
ミュンヘン中央駅に並ぶ、ドイツ高速鉄道のICE4(左)とICE3 2000年から製造されたICE3は、高速運転対応型で最高営業速度は320㎞/hだが、2015年から製造されるICE4はコスト削減や汎用性のため最高速モデルでも265㎞/hに抑えられている このため、ICE4は在来車両の置き換えによる高速化という点に主眼が置かれており、ICE3の置き換えはICE3のモデルチェンジ型(ICE 3neo)で行われている Wikipedia(ICE)より @Håkan Dahlström

もちろん、ヨーロッパといっても多くの国の集まりで、その国ごとに置かれている事情も異なり、施策に違いがあることもあるので、一概にそうとは言えませんが、おおむねヨーロッパでは高速鉄道建設は一段落、という認識はあながち間違ってはいないようです。

日本では、新幹線の建設にあたっては現状を顧みることなく50年前の法律が脈々と受け継がれているわけですが、福島議員が質問で述べていた通り、そろそろ政治判断を下す時期なのかもしれません。

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