猛暑で列車が運休に レールは暑さでどのくらい伸びるの? 

社会
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猛暑の影響か 各地でレールが変形し運転見合わせ

2025年7月28日午後、富山市内を走る富山地方鉄道で、交差点内のレールが変形しているのがみつかりました。このため14時40分ごろから一部区間で運休となり、運行を再開した21時過ぎまでに121本が運休、約4000人に影響が出ました。

この日の富山市の最高気温は36.4℃で、変形の原因は暑さによるレールの膨張とみられ、水をかけてレールを冷やすなどの作業が行われました。富山地方鉄道では、翌29日から全線で融雪装置を使ってレールを冷やすなどの暑さ対策を行っているということです。

また、同じ日には、兵庫県内の加古川線で線路が歪んでいるのを巡回中の係員が発見し、13時過ぎから19時ごろまで一部区間で運転を見合わせました。兵庫県内もこの日は各地で35℃を超えていたことから、暑さによりレールが膨張したためとみられており、レールを冷やすなどの作業が行われました。

また、北海道でも暑さによりレールがゆがむ恐れがあるとして列車が運休したほか、山陰本線や木次線でもレール温度の上昇により運休や徐行運転が行われるなど、暑さの影響は全国的に広がっています。

暑さで変形… 気温の変化でレールはどのくらい伸びるのか

レールが熱で変形する…、かつてはアメリカの砂漠地帯で起こっていたような事態が、近年日本でも発生するようになってきましたが、レールと熱、どのような関係があるのでしょうか。

物体は、原則として温めれば体積が膨張し、冷やせば体積が縮小することは、小学校や中学校の理科でも勉強しました。

レールは鉄でできていますが、これは鉄の車輪と組み合わせることで極めて摩擦が小さくなり、少ないエネルギーで大量のものを運べるという鉄道の特徴の一つとなっています。一方で鉄はコンクリートなどに比べて熱せられやすく、また膨張しやすいという特徴があります。このため、炎天下など熱い環境に晒されると、体積が増加します。この体積の増加を枕木やバラストが支えきれなくなると、レールが変形することとなります。

では、熱によってレールはどのくらい伸縮するのでしょうか?

様々な説があるようですが、温度が1度上昇すると、線路1mあたり0.0115㎜前後伸びるといわれれています。レール1本は通常25mの長さがある(定尺レールと言います)ため、温度1度につき0.2㎜程度伸縮することとなります。

なーんだたったの0.2㎜か、と思うかもしれませんが、気温が0度と30度ではその差は30倍の6㎜となります。

炎天下では自動車のボディに熱くて触れられない、という経験を持っている方も多いと思いますが、鉄は大気よりも熱せられやすいため、酷暑の環境下では60℃以上になることも珍しくありません。こうなると、0度の時と比べ変化量は1.2㎝と大きくなります。

さらに、線路はずっとつながっています。25mの線路なら1.2㎝の変化でも、1㎞となれば48cmとなります。もちろん、長さ方向だけに膨張するわけではないので、必ずしもこれだけ伸びるわけではありませんが、かなりの変化量であることはお分かりいただけるかと思います。

レールには継ぎ目部分にわざと隙間が設けてあり、列車が通過する際のジョイント音として知られていますが、この隙間がレールの伸びを吸収する仕組みになっています。継ぎ目の固定具も、あえて完全に固定せずレールの伸縮に合わせ位置が変わるようになっており、このおかげで気温が変化しても通常はレールが変形することはありません。しかし、近年の猛暑によりレールの伸びがこの許容範囲を超えると、行き場を失った伸びようとする力が枕木や道床を動かし、変形することとなります。

ロングレールの不思議 長くても伸縮量は一定

では、暑さによるレールの変形を防ぐ方法はないのでしょうか?

その前に、今回暑さによるレールへの影響で運行に影響が出たという線区を見てみると、山陰地区や木次線、北海道など、割と列車密度の低い区間が多く、そういえば新幹線や大都市圏、それに幹線ではあまりこの手の話は聞きません。

実は、その秘密はロングレールにあります。

レールは通常1本あたり25mだと述べましたが、ロングレールとはレールを継ぎ目なく溶接し、1本の長いレールとしたもので、1本200m以上のレールのことを指します(ちなみに25m以上200m未満のレールは長尺レールと言われます)。

ロングレールは、線路のジョイント音がなく、乗り心地が向上するため、高速運転を行う路線で多く採用されています。また、接続部分や部品点数が少なく保守点検が容易になるため、列車本数の多い路線などでも採用されています。特に高速走行する新幹線には欠かせないレールで、日本最長のロングレールは東北新幹線いわて沼宮内-八戸に設置されている、全長60.4㎞のレールです。

これだけ長いと一体どれだけ伸縮するのか…、と不安に思われる方も多いと思いますが、ロングレールの場合、伸縮するのは両端の100mずつで、それ以外の部分は不動区間と言って温度による長さの変化はありません。その理由は力学的な話になるため詳細は触れませんが、ある一定の長さで線路を区切った場合、伸びようとする力と周囲から押される力が拮抗するためといわれており、レールの長さにかかわらず伸縮量は常にほぼ一定となります。このため、仮に先ほどの60㎞のロングレールの場合でも、実際に伸びるのは両端の100mずつ合計200mだけで、0℃と60℃の状態を比較してもその変化量は5㎝程度となります。

伸縮継目
ロングレールの継ぎ目となる、伸縮継目 隙間がないため乗り心地の向上の役目を果たす Wikipedia(軌条)より @+-

新幹線や主要幹線、大都市圏では、近年ロングレール化が進んでいることが、比較的高温の影響を受けにくい理由の一つであるようです。ただし、ロングレール化は施工にはいくつかの条件があり、一般的に軌道の強化などを行う必要があるため、地方路線では導入コストを嫌って普及が進まないため、これが夏場の運行不安定化の原因ともなっているようです。

なお、ロングレール化が進んでいる路線でも影響がないわけではなく、近年は各鉄道会社では監視やメンテナンスが強化されていることは言うまでもありません。また、急カーブや駅構内、分岐などはロングレール化ができないため、ロングレール化がされている路線だからと言って安心というわけでもありません。

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