最近耳にするLRT、いったい何だろう? 氷見線・城端線の在り方検討でLRT化報道も

社会
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JR西日本が氷見線、城端線の在り方検討を開始

富山県の高岡駅を起点に運行されるJR氷見線、城端線について、この2路線を運行するJR西日本は、「安全で持続可能な鉄道・交通サービスの実現」に向けて 、「 新しい交通体系の検討を進めていく 」ことを沿線自治体に提案したことを発表しました。具体的には、両線のLRT化、直通運転などを行い、富山県西部の発展に寄与するともに持続可能な公共交通の実現を目指すとしています。

雨晴海岸を走る氷見線
Wikipediaより

氷見線、城端線は、いずれも高岡駅を起点に運行される盲腸線(終点でほかの路線と接続しない路線)です。2015年の北陸新幹線開業に伴い、北陸本線が並行在来線としてあいの風とやま鉄道に移管されましたが、この両線は並行在来線とはみなされず、JR西日本のいわば飛び地として存在することになりました。

2018年度の氷見線の輸送密度は2552人、城端線は2899人で、この数年は横ばいなものの、JR発足当初と比べると6割程度にまで落ち込んでいます。今後も沿線人口の減少が見込まれ、さらに飛び地という一関係上、運行効率も良くないことから、今回の提案となりました。

富山県では、2006年に旧富山港線をLRT化する形で受け継いだ富山ライトレールが運行中です。JR時代には1日20本に過ぎなかった運転本数は3倍となり、増発と停留所の増設で利便性が向上したことから、利用客数もJR時代の2倍程度まで増加するなど、好調な運行が続いています。2020年2月には、富山駅をはさんで市内の南側を運行する富山地方鉄道の市内線と接続、同時に経営も富山地方鉄道へ移管される予定です。この状況から、今回の提案を受けた富山県や沿線の高岡市、氷見市、砺波市、南砺市はおおむね歓迎する意向のようです。

成功を収めた富山ライトレール

また、JR西日本としても、富山港線に続き岡山県の吉備線をLRT化することで地元と合意しており、実現すればこれらに続き3例目となります。

最大の問題とされるのが、LRT移管費用の負担者と移管後の運営者の問題です。JRの発表によれば、この点には触れられておらず、「今後の議論」とされています。対して沿線自治体からは、「移管コストの負担と今後の運営はJRに負担していただけるものと考えている」との牽制とも言える発言もあり、実現には金銭負担を巡って紆余曲折が予想されます。

ただ、報道によるとLRT化が決定したわけではなく、今後の可能性の一つとしてあげられているに過ぎず、今後の議論が待たれます。また、比較的市街地を走り、潜在的な需要が多かった富山港線や、毎時2本程度の本数がある吉備線とは違い、毎時0~1本の両線ではどれほどの需要が起こせるのかは不安材料として挙がっています。

LRTとは? 原型は西ドイツで誕生

LRTとは、Light Rail Transit( ライトレールトランジット)の略で、あえて日本語に直訳すれば軽量軌道交通となります。鉄道ほど大きな輸送力がない代わりに、設置・運営にかかるコストも少ないのが特徴で、もともとは1970年代のアメリカで作られた言葉です。

1960年代のアメリカは極度に自動車社会が進み、人々の行動範囲が広がって郊外の開発が進む一方、市街地の空洞化、自動車を所有できない低所得者との生活格差と、それに伴うスラム化が大きな問題になっていました。アメリカの鉄道の営業キロは全盛期と比べ6割程度にまで減少、残る路線も旧態化が進んでいました。そこでアメリカは、当時の西ドイツの「シュタットバーン」を参考に、都市交通の再編に乗り出しました。

そのころ西ドイツでも、第二次世界大戦からの復興がすすむにつれ、自動車社会の進展が続いていました。多くの都市にあった路面電車は廃止されるか、廃止の危機にありました。しかしアメリカ同様、都市の空洞化や交通渋滞、そして排ガスによる環境汚染などが問題となり、路面電車を中心に交通網の再編が行われるようになります。新しいシュタットバーンは、土地取得が困難な市街地は地下線を走り、郊外では専用線路の上を普通鉄道と同じように走ることで、郊外と都心を乗り換えなしで結びました。車両は路面電車タイプのものが使用され、1両ではなく2両または3両が1組になった連接車を使用し、需要に応じてそれらを2編成以上つなげることである程度の大きな需要にも応えることが可能となりました。

1968年、路面電車の輸送力では限界を迎えていたフランクフルトでUバーン(地下鉄)が開業します。従来のような本格的な地下鉄ではなく、地下を走るのは都心部のみで、郊外では併用軌道、専用軌道を走ります。車両は路面電車を一回り大きくした2連接車体を採用。地下区間の一部では、近郊電車Sバーンと線路を共用します。路面電車、地下鉄、近郊電車のどれにも近く、そしてどれとも違う、今までの括りにはない新しい交通機関の誕生でした。

開業当初のフランクフルト地下鉄
Wikipediaより

この西ドイツの例を参考に、市街地の回遊性の向上と、郊外を結ぶ新しい交通機関として、アメリカはLRTの建設が進められました。2020年現在、LRTの走る都市は全米で30を超え、総延長は1500kmに及んでいます。

1992年、東西統一後のドイツ・カールスルーエで、さらに1歩進めた「トラムトレイン」が開業します。今までのLRTのように専用路線を建設するものとは異なり、既存の路面電車と郊外電車の連絡線のみを建設し、直通運転を行うものでした。車両は路面電車タイプの連接車が投入され、路面区間と高速運転の両方に対応、最高速度は100km/hで、高規格路面電車とも呼ばれます。最初に運行を始めた路線では、新設された駅も含め郊外電車ながら路面電車並の駅間、本数、そして都心部への直通という便利さから、1年で5倍の乗客数を数えるようになり、拡張が進められた結果、現在その総延長は400kmに達します。拡張に伴い、今では新幹線ICEとトラムトレインが線路を共有する姿も見られるようになりました。また、ドイツの他都市や周辺国でも導入例が見られ、これらは「カールスルーエモデル」とも呼ばれています。

カールスルーエのトラムトレイン。市街地を出ると鉄道線を高速走行する。系統番号は近郊電車(=Sバーン)を表すSで始まる番号
Wikipediaより

LRT=路面電車ではない 

日本ではLRTというと「次世代型路面電車」などという表記で、あくまで路面電車の発展型というイメージで紹介されることが多いですが、既に述べた通り、本来はそのような意味はありません。路面電車の役割も含んだ、今までの分類方式にあてはまらない新しい交通機関、と言うべきものなのです。そして、LRT単独で得られる効果は限定的で、その他の交通機関と組合せ、結合することで最大限の効果を発揮します。

日本では、複数の交通機関の組み合わせ、特に事業形態や法律区分の違う場合は、事業者ごとの縦割りが作用して実現するには相当に厚い壁が立ちはだかります。近年各地で導入が検討されたり、建設が進んでいるものもほとんどが「LRTを新規に1路線作る」というものがほとんどで、新たに市内ネットワークが形成さえた富山市の例などはごく珍しいものです。それ故富山市の例は成功例となりつつあるのでしょう。

今回の計画も、単にLRT路線を開業させるだけでなく、利用者が本当に利用しやすい街づくりと合わせて進むことが望まれます。

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