いまさら聞けない? 吊り掛け駆動とカルダン駆動とはなんだろう

社会
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吊り掛け駆動とは? 動力を伝達する方法の一つ カルダン駆動との違い

鉄道関連の書籍やWebでは、時折「吊り掛け駆動」や「カルダン駆動」といった単語が出てくる場合がありますが、その割にはこれらについて解説した記事はあまり多くないような気がします。少し年配の方なら、吊り掛け駆動…、ああ、あの独特の音の出るやつね、などという感じで認識していただけるのではないでしょうか。21世紀の今日、新しく製造される鉄道車両はほとんどがカルダン駆動を採用し、吊り掛け駆動はその存在すら非常に少数で、駆動方式について気にする記事も少なくなりつつあります。

電車は、電気でモーターを回し、その力で走行します。しかしいくらモーターを回しても、その回転を車輪に伝えないことには電車は動きません。吊り掛け駆動とカルダン駆動は、どちらも電車(電気機関車や電気式ディーゼル機関車も含む)においてモーターの回転を車輪に伝える方法の名称です。そして、吊り掛け駆動とカルダン駆動との違いとは、モーターの設置個所と動力伝達の仕組みの違いです。

なお、以下でその特徴について記述していきますが、わかりやすさを優先して記載するため、専門家の方から見れば少し違う場合もあるかもしれませんが、ご了承ください。

通常電車のモーターは、台車内に設置されます。台車内は、まず線路側から順に車輪があり、左右の車輪は車軸によって結ばれ、台車本体ともいえる台枠に設置されています。多くの場合、台車の中には2組の車軸が収められます。その次にはバネが設置されており(金属製のバネの他、圧縮空気の場合もあります)、線路からの衝撃を吸収することに加え、重い車体本体を支えたり、乗り心地を向上させたりする役割があります。このばねより下(実際の位置関係ではなく、構造的に線路に近い側)をバネ下、上(構造的にバネより上の部分)をバネ上と呼びます。

独特な作動音を発する吊り掛け駆動

吊り掛け駆動は、19世紀後半に発明されて以来、20世紀の半ばまでは一般的に使用されてきました。

現在ではすっかり少数派となり、日本で電車として新製されたのは1990年が最後となっています。JRや大手私鉄では、一部の事業用車やイベント用としては存在しているものの営業用車では残っていませんが、あとで述べるように路面電車などではまだまだ活躍している車両も多く残っています。

特に発車の際には、振り回すような、低く唸る独特の作動音が発生します。新しい電車では聞くことのできない何となく昔懐かしさを感じさせるもので、吊り掛け音のファンも多いと聞きます。

【吊掛】広電1900形(元京都市電)マスコンさばき
広島電鉄1900型の運転風景 唸るような吊り掛けモータの音が特徴 

吊り掛け駆動では、車軸と台車にまたがるようにモーターが取り付けられます。これが吊り掛け駆動の言葉の由来で、ギアを介してモーターの回転を車軸に伝えます。バネ下にある車軸にモーターを取り付けるため、吊り掛け駆動の場合はバネ下に重いモーターが取り付けられることになり、必然的にバネ下重量が増加します。

吊り掛け駆動のイメージ モーターAは車軸C、台車Gに設置されている。モータに取り付けられたギアEが回ることで、車軸に設置されているギアDも回転し、車輪が回転する。
Wikipediaより

バネ下重量の増加は、鉄道に限らず自動車においても高速性能の低下、乗り心地の悪化を招くため、いかにこれらを軽量化するかが設計上のポイントです。また、線路からの衝撃が直接伝わるため、バネ下は本来モーターのような精密機械を設置するには不向きで、破損や故障を防ぐため構造的に頑丈にせざるを得ず、これがさらにバネ下重量を増加させることになります。

これらの点から、日本では鉄道車両の大型化、高速化が進んだ1950年代半ば以降、後に述べるカルダン駆動の普及で採用される例は激減しました。

日本では主流のカルダン駆動

1920年代、アメリカではインターアーバン(都市間鉄道)が全席期を迎えます。電車は大型化、高速化し、吊り掛け駆動に代わる新たな動力伝達の仕組みが模索されます。折から発展してきた自動車産業の技術を応用し、モーターの回転を距離や角度にかかわらず車軸に正確に伝えることができる自在接手を採用することで、モーターの設置場所を台車内で自由な場所に選べるようになりました。当然のことながらモーターはバネ上に設置されることになり、高速性能や乗り心地は格段に向上しました。1930年代以降アメリカではインターアーバンはもちろん、路面電車や地下鉄でも積極的に用いられることになりました

カルダン駆動を採用した台車のイメージ図 モーター本体(イラストでは水色)は車軸に取り付ける必要がなく、その回転は自在接手を介して車軸に伝えられる
Wikipediaより

ちなみにカルダンとは、16世紀に自在接手が伝達機構として使えることを説いた(実際に作ったかどうかは不明)イタリアの数学者ジェロラモ・カルダーノの名から来ているもので、自在接手はユニバーサルジョイントやカルダンジョイントとも呼ばれています。

自在接手(ユニバーサルジョイント)のイメージ
Wikipediaより

路面電車や電気機関車では一般的 まだまだ残る吊り掛け駆動

1960年代以降、日本でもカルダン駆動が広く採用されるようになり、またそれまで吊り掛け駆動を採用していた中小私鉄でも、2000年代以降カルダン駆動を採用した大手私鉄の譲渡車などが普及したことから、大型の電車用としては急速に姿を消しています。

一方で、吊り掛け駆動は構造的に単純で、使い方によってはコストがカルダン駆動より安上がりな場合もあります。

例えば路面電車においては、高速性能は最初から考慮されず、乗り心地も通常の鉄道ほど要求されていません。車体も小さく、複雑な構造を取り入れるよりは単純なほうがよいことや、吊り掛け駆動は構造的に頑丈で長持ちすること、事業者が小規模で車両更新のスピードも遅いことなどから、21世紀に入っても多くの事業者でまだ使用されています。

路面電車では、多くの事業者で吊り掛け駆動が健在

また電気機関車でも、21世紀に至る今日まで、ほぼ全ての形式で吊り掛け駆動が採用されています。大出力のモーターの力を損失なく車軸に伝えるためには、狭軌を採用する日本ではスペース的な問題と、構造的に単純なほうが優れているとされています。また、電気機関車では旅客車両のような乗り心地も要求されていないことも大きいと思われます。

EF210も吊り掛け駆動を採用している
Wikipediaより

一般的に吊り掛け駆動=旧型車両というイメージも強いですが、実は使用される状況によってそれぞれにメリット、デメリットがあり、今後もどちらかに完全に統一される、というものではなさそうです。

なお、日本では少数派になった吊り掛け駆動ですが、海外では事情が異なる国もあります。標準軌以上を採用して車体幅にも余裕があり、線路も日本よりはるかに頑丈に作られているヨーロッパ諸国などでは、少しずつ数を減らしているとはいえ、今なお吊り掛け駆動を採用している国も多くあります。

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