若者を始め庶民の移動手段として親しまれている青春18きっぷが、消費税増税による価格改定でついに12000円を超えることになりました。発売額は12050円で、1日あたりの金額は2410円となります。北海道新幹線オプション券も2490円と、190円の値上げです。
青春18きっぷは、国鉄末期の1982年(昭和57年)春に発売された「青春のびのび18きっぷ」として始まりました。度重なる運賃値上げと労使問題ですっかり国民の信頼を失った国鉄は、いよいよ現実味を帯びてきた分割民営化へ向け、何とかイメージ回復と利用増加へ向けて様々な新商品を登場させます。この時期には、フルムーンパスやシュプール号、地方都市や特急列車の短編成頻発運転ダイヤ、グレードアップ寝台特急など、後にヒット商品となる原型がたくさんありましたが、青春のびのび18きっぷもその一つでした。
自動車や並行するバス路線に乗客を奪われ空気輸送同然で走っていた地方の普通列車に、せめて長期休みくらい学生に乗ってもらおうというもので、5日間8000円という設定で登場しました。現在と違って2日券×1枚+1日券3枚という組み合わせで、2日券は夜行快速や普通列車がたくさん存在した当時の事情を表しています。
初年度は春夏合わせ74000枚を販売、さらに分割民営化までの5年間では合計71万枚が販売されたそうです。現在の年間60~70万枚と比べると小さな数字ですが、膨大な赤字を抱え、なにかと批判されることの多かった末期の国鉄の最大級のヒット商品でした。
青春18きっぷが当時して今年で36年、きっぷをとりまく状況は大きく変わりました。
多くのローカル線が廃止、主要幹線ですら新幹線の開業で第三セクターへ移管され、青春18きっぷの利用区間は全国で切り刻まれることになりました。普通列車扱いだった青函航路も新幹線と変わって渡道は別料金が必要で、夜行列車の廃止で長距離移動も困難となり、残念ながら青春18きっぷの利用環境は年を追うごとに悪くなっていると言わざるを得ないでしょう。
青春18きっぷ生みの親ともいわれる、当時国鉄旅客局長の須田寛氏。現在のJR東海相談役で、ホームライナーなどのヒット商品を数多く生み出したことで知られていますが、青春18きっぷの目的は直接的な増収はもちろん、「若いときに鉄道で旅に出る習慣を身につけ、年を取っても鉄道を愛用するファンを増やすのが狙いだった」とか。こうした地道な努力が、ななつ星や四季島、トワイライトといった豪華列車のクルーズの人気へつながっていると思うのです、
年々利用状況の悪化するきっぷで、果たして未来のファンを獲得できるのか。ぜひとも数十年後の鉄道の姿、旅行の姿を描きながら、魅力ある切符はもちろん、その利用環境も是非とも考えていただきたいと思うのです。
青春18きっぷで行こう ’19~’20 (JTBのMOOK)
旅と鉄道 2019年増刊7月号 青春18きっぷの旅2019-2020
