成田空港第2ビル駅の二重改札解消 そもそもなぜ? 利用者目線で交通機関を考える 日本の当たり前は世界では?

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成田空港第2ビル駅 京成経由でのJR出札を廃止 二重改札解消

成田空港第2ビル駅では現在、JR線で到着した乗客は京成との中間改札を通りもう一度京成出口を出て空港ターミナルビルに入りますが、12月10日よりこれを解消し、JR線から直接ターミナルビルに入れるようになることが発表されました。施設の改良により、入口専用だったJR改札口を出入口とすることで、乗客は2度改札を通る手間から開放されることになります。

これは嫌がらせでこのような構造をとっていたわけではありません。成田空港では、2015年までターミナルビルに入る際にセキュリティチェックを行っていたため、改札口を1箇所に絞る必要があり、全ての乗客は最終的に京成側の改札を通る構造とされたのです。しかし、このセキュリティチェックは廃止され、2重改札の手間だけが残されていたのでした。

施設や運営会社の管理の都合だけで利用者に不便を強いることは、利用者目線の欠落以外の何者でもありません。まして空港駅という特性上、海外からの不慣れな利用者が多いことは容易に想像できるわけですから、こうした管理上の都合は極力省き、わかりやすさを徹底すべきでしょう。

改札や境界のない、交通機関シームレスな欧州

スイス チューリッヒ中央駅前を走るトラム
撮影:鉄道模型モール制作室

さて、これで少しは利便性は向上しますが、そのそも会社ごとに改札が違う、というのも利用者目線ではなく、会社の管理上の都合に他なりません。日本では当たり前ですが、欧米では交通機関はシームレスにつながり、会社ごとの境界をほとんど感じないことの方が多いのです。

例えば、郊外の自宅から都心の目的地へ行くとしましょう。まずは最寄りのバス停からバスに乗り駅を目指します。駅に着いたら電車に乗り換え、都心側の駅に着き、ここで今度は地下鉄に乗り換えます。目的地は地下鉄駅から若干の距離があり、また雨も降っているので、バスに乗ります。

このような光景を思い浮かべる時、日本なら乗車の度に運賃を支払うのは当然です。しかし欧米の多くの都市では、通常交通機関ごとに支払う必要はありません。欧米の多くの都市では、交通機関の運賃は時間制、ゾーン制、その併用が見られます。

時間制とは、定められた区間内、時間内ならなら乗り放題となる制度で、多くは60分や75分といった制限が設けられています。

ゾーン制とは、交通機関が提供されているエリアをいくつかのゾーンに分け、ゾーン内は乗り放題となりますが、ゾーンをまたぐ場合は該当するゾーン数に応じて料金が変わる仕組みで、多くの場合時間制と併用されます。有効期間内ならどの交通機関を使っても切符を買い直したり改めて運賃を払う必要はありません。ただし都市によっては、有効期間内のうち地下鉄は何回まで、郊外電車は何回までと決まっていることもあります。また、ゾーンや有効時間は曜日や乗車開始時間によって変わることもあり、一般的にラッシュのピークは条件が厳しく、逆に週末は条件が緩やかになることが多くなっています。

いずれの場合にしても、支払いや乗車券の所持はその都度チェックされません。欧米では「信用乗車方式」を採用している例がほとんどで、支払いは自己申告制に近いものがあります。

長距離列車も会社の違いを意識することは少ない

様々な列車が発着する イタリア ミラノ中央駅

さて、都市内交通は上記のような感じですが、長距離列車になっても状況は同じです。

そもそも欧米の駅には、改札口がありません。そのため、会社ごとに駅を分ける必要がないのです。違う運営会社の列車や、新幹線、ローカル列車に至るまで、同じ駅、同じホームから発車します(一部空港専用列車を分離したり、混雑を避けるため長距離列車と近距離列車を分ける例は存在します)。乗客は、会社や路線を気にする必要はなく、駅に行きさえすればいいのです。このあたりも、大変わかりやすいですね。また、国鉄路線でも、都市近郊は先の都市内交通の運賃体型に組み込まれ、バスや地下鉄と共通になっていることがあるのも乗客にとってもありがたい制度です。

なお、以上の話は国、都市によって事情の異なる場合があります。もし実際に行くことがありましたら、訪れる国や都市の交通事情をよくお調べいただくようお願いします。

また、欧米では駅での改札はありませんが、通常は車掌による車内改札があります。車掌の乗務しない都市内交通でも、係員が乗り込んで抜き打ちで車内改札をすることがあります。この時、有効な乗車券類を持っていないと、直ちに不正乗車とみなされます。日本のように言われてから払えばいいという考え方は通用しません。紛失も利用者の責任ですから、不所持と同じです。不正乗車に対する処罰は日本と比べ物にならないほど厳しく、高額の罰金を科せられるほか、その場で警察へ通報される例もあると聞きます。当ブログをご覧の良識ある読者の方には関係ないでしょうが、不正乗車=犯罪ということをしっかりと肝に銘じるべきでしょう。

日本ではシームレスは実現する? Maas導入を目指すも、日本では垣根の高い会社間の壁

もちろん、この様なシステムをすぐに日本に導入することは不可能です。交通機関を独立した公営企業や民営企業に頼る日本では、採算性を抜きに考えることはできません。共通乗車券の発行は、直ちに減収につながる恐れがあります。

昨今、交通機関においてさかんに「Maas」という言葉が使われるようになってきました。これは交通機関ごとの垣根を越えて、移動のシームレス化を目指す、というものです。欧州がその発祥で、日本ではJR東日本などが積極的に導入を目指しています。一方で、残念ながらJRという組織自体、他社との垣根が非常に高く、線路のつながっているほかのJRとの協力体制も非常に薄いように思います。新しいシステムの導入も結構ですが、まずは利用者目線、という原点に立ち返って考えてほしいと思います。

今後都市の人口減少が進み、公共交通機関の利用客は一層減少することが予想されます。また、インバウンドで大勢の外国人が日本を訪れる今、利用者目線の分かりやすいシステムも望まれます。自動車の普及で都心の空洞化も叫ばれ、根本的に公共交通機関のシステムの見直しも必要かもしれません。

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