時刻表完全復刻版1988年3月号 北海道長距離列車 道北 道東編
JTBパブリッシングから発行の時刻表完全復刻版1988年3月号で当時を振り返るこの話題、前回に引き続き北海道を見ていきます。今回は、長距離列車の道東、道北編です。
前回にも述べましたが、北海道の長距離列車の運行形態は1980年(昭和55年)改正で大きく転換されました。具体的には、それまでの青函連絡船と接続する函館を中心とする運行体系から、航空機との連携を意識した札幌中心の運行体系へと変更され、網走方面へは『 オホーツク』、帯広・釧路方面は『 おおぞら』という現在に至る特急列車網が作られました。このため、1988年時点でも大きな違いはありませんが、稚内方面は線路事情から特急ではなく急行であることや、各方面へ夜行を含めた急行列車が設定されていたのが、現在とは異なる点です。
それでは、まずは道東・網走方面から、1988年3月号の時刻表で特急『オホーツク 』急行『 大雪』を振り返ってみたいと思います。
1988年 石北本線『オホーツク』『大雪』時刻表 「大雪がえし」も健在
札幌から函館本線、石北本線を経由して網走までは、特急『 オホーツク』が設定されているのは今と同じです。1988年3月改正では、定期4往復+臨時1往復が設定されていました。
1988年改正 石北本線『オホーツク』『大雪』時刻表
OH1号 | OH3号 | ◆OH81号 | OH5号 | OH7号 | 大雪 | ||
札幌 | 0703 | 0930 | 1120 | 1605 | 1730 | 2250 | 札幌 |
旭川 | 0838 0839 | 1105 1106 | 1258 1304 | 1740 1741 | 1905 1906 | 0050 0115 | 旭川 |
上川 | 0923 0924 | 1151 | 1353 | 1824 | 1949 | 0215 0218 | 上川 |
遠軽 | 1035 1038 | 1302 1305 | 1518 1525 | 1936 1939 | 2107 2110 | 0358 0413 | 遠軽 |
北見 | 1136 1137 | 1359 | 1624 | 2032 | 2205 2206 | 0521 0523 | 北見 |
網走 | 1225 | 1450 | 1714 | 2121 | 2256 | 0622 | 網走 |
OH2号 | OH4号 | ◆OH82号 | OH6号 | OH8号 | 大雪 | ||
網走 | 0643 | 0930 | 1133 | 1357 | 1717 | 2146 | 網走 |
北見 | 0732 0733 | 1018 1019 | 1223 1224 | 1447 | 1805 1806 | 2258 2300 | 北見 |
遠軽 | 0826 0829 | 1111 114 | 1330 | 1541 1544 | 1858 1901 | 0011 0026 | 遠軽 |
上川 | 0949 0950 | 1234 | 1445 | 1657 1658 | 2016 | 0214 0234 | 上川 |
旭川 | 1032 1035 | 1317 1318 | 1525 1530 | 1739 1741 | 2058 2100 | 0332 0420 | 旭川 |
札幌 | 1209 | 1453 | 1704 | 1915 | 2234 | 0634 | 札幌 |
特急『オホーツク』は、現在も石北本線の優等列車として健在ですが、2017年改正で定期4往復のうち2往復が特急「大雪」として旭川―網走に短縮、札幌―旭川は特急『ライラック』に接続するダイヤとなっています。なお、2021年のダイヤ改正で『 大雪』は臨時化される模様です。
札幌―網走の所要時間は5時間30分弱ですので、2020年時点と大差はありません。
遠軽駅では、スイッチバックのため各列車とも数分の停車時間がとってあるのは今も同じです。なおこの1988年の時点では、遠軽で接続する名寄本線はまだ健在です。その最後のダイヤはまたご紹介したいと思います。
1988年時点で『 オホーツク』とは別に、深夜需要として札幌-網走に設定されていたのが急行『 大雪』でした。14系客車の寝台+座席の編成で、往年の夜行急行全盛期を彷彿させるものでした。到着時間調整のための長時間停車も随所に設定されています。深夜の上川駅では上下の『大雪』が同時間帯に停車していますが、かつては急行列車乗り放題の「ワイド周遊券」所持者が宿泊代を浮かすため、反対方向の『大雪』に乗り換えて一夜を過ごす「大雪返し」が行われていた場所でもありました。
この後急行『大雪 』は特急に格上げされ、『 オホーツク』9/10号となり、2006年改正で臨時化、翌2007年改正で廃止となりなした。
1988年3月『オホーツク』『大雪』編成表
特急『オホーツク』
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
自 | 自 | 自 | G1/4 | 指 | 指 |
急行『大雪』
1 | 2 | 3 | 4 |
B | B | 指/自 | 自 |
B:B寝台 G:グリーン車 指:指定席 自:自由席 :禁煙
1988年 石勝線・根室本線『おおぞら』『まりも』時刻表 こちらも「まりも返し」が健在
札幌を起点に石勝線・根室本線方面への特急列車は、1988年当時は『おおぞら』のみの設定でした。この2年後の1990年に『おおぞら』増発の際、帯広発着の列車を『とかち』として分離することになります。
1988年3月 根室本線『おおぞら』『まりも』『狩勝』『ノサップ』時刻表
おおぞら 1号 | ノサップ | ◆まりも 81号 | おおぞら 3号 | おおぞら 5号 | 狩勝 | おおぞら 7号 | おおぞら 9号 | おおぞら 11号 | おおぞら 13号 | まりも | ||
札幌 | 0804 | 0808 | 0957 | 1115 | 1215 | 1411 | 1635 | 1758 | 2000 | 2300 | 札幌 | |
千歳空港 | 0834 0835 | 0844 0845 | 1025 1026 | 1144 1145 | || | 1440 1441 | 1703 | 1826 1827 | 2029 2030 | 2338 | 千歳空港 | |
滝川 | || | || | || | || | || | 1322 1328 | || | || | || | || | || | 滝川 |
新得 | 1016 1017 | 1103 1104 | 1214 | 1342 1343 | 1539 1541 | 1631 1632 | 1839 | 2013 2014 | 2219 2220 | 0222 0226 | 新得 | |
帯広 | 1050 1051 | 1148 = | 1254 1255 | 1415 1417 | 1624 1630 | 1704 1706 | 1913 1914 | 2047 2048 | 2255 = | 0311 0335 | 帯広 | |
釧路 | 1246 = | 1251 | 1454 = | 1615 = | 1948 = | 1907 = | 2104 = | 2240 = | 0610 = | 釧路 | ||
根室 | 1502 | 根室 |
おおぞら2号 | おおぞら4号 | おおぞら6号 | おおぞら 8号 | 狩勝 | ノサップ | おおぞら 10号 | ◆まりも82号 | おおぞら 12号 | おおぞら 14号 | まりも | ||
根室 | 1029 | 根室 | ||||||||||
釧路 | 0747 | 0900 | 1030 | 1053 | 1237 = | 1333 | 1527 | 1710 | 2228 | 釧路 | ||
帯広 | 0727 | 0939 0940 | 1049 1050 | 1220 1221 | 1350 1401 | 1525 1526 | 1628 | 1719 1720 | 1901 1903 | 0111 0120 | 帯広 | |
新得 | 0803 | 1016 1017 | 1123 | 1257 1258 | 1446 1446 | 1601 1602 | 1713 1715 | 1753 | 1941 1942 | 0212 0248 | 新得 | |
滝川 | || | || | || | || | 1708 1709 | || | || | || | || | || | 滝川 | |
千歳空港 | 0944 0945 | 1205 1206 | 1255 1256 | 1440 1441 | || | 1749 1750 | 1923 1928 | 1943 1944 | 2123 2124 | 0604 0605 | 千歳空港 | |
札幌 | 1015 | 1235 | 1325 | 1512 | 1818 | 1820 | 2012 | 2104 | 2154 | 0652 | 札幌 |
2020年現在では、『おおぞら』定期6往復、『とかち』定期5往復体制ですので、1988年当時よりは増便が図られています。
急行『 狩勝』は、札幌-釧路を石勝線ではなく、函館本線・根室本線経由で結ぶ列車でした。石勝線の全線開業は1981年(昭和56年)と新しく、それまでは『 おおぞら』などの優等列車もすべて滝川経由でした。最盛期には札幌-釧路の主力列車として夜行を含めて4往復が運転されていましたが、石勝線開業以後は次第に減便され、1988年時点では1往復となっていました。なお、1990年改正で『狩勝』は快速に格下げとなります。
そして、やはり深夜需要として存在していたのが急行『まりも』でした。『まりも』の名称は古く1951年(昭和26年)改正で函館―釧路の急行列車に与えられたのが始まりですが、途中で廃止期間を挟み、1988年当時の運行体系として復活したのは1981年の石勝線開業時のことです。1988年当時は、定期列車として夜行1往復の他に昼行の臨時列車も設定されていました。なお、『まりも』も深夜の新得駅で上下列車が並ぶことから、「まりも返し」という言葉も存在していました。
『まりも』の名称は、1993年改正で特急化、キハ183系化され『おおぞら』13/14号となり消滅しますが、2001年改正で再び特急『まりも』として復活、2007年改正の臨時化を経て2008年改正で廃止となりました。
また、釧路―根室にも1往復だけの急行『ノサップ』が設定されていました。使用車両はキハ54-500番台で、こちらは1989年改正で快速列車に格下げとなっています。
1988年3月『おおぞら』『まりも』『狩勝』 編成表
おおぞら1・5・9・13号/2・6・10・14号
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
自 | 自 | 指 | 指 | G1/4 | 指 | 指 |
おおぞら3号/12号
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
自 | 自 | 指 | G1/4 | 指 | 指 |
おおぞら7・11号/4・8号
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
自 | 自 | 自or指 | 指 | G1/4 | 指 | 指 | 指 |
まりも
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
B | B | B | 指/自or指 | 自 |
狩勝
1 | 2 | 3 |
自 | 自 | 自 |
B:B寝台 G:グリーン車 指:指定席 自:自由席 :禁煙
1988年 急行列車の独壇場だった宗谷本線優等列車時刻表
さて、最後になりましたが1988年3月改正時点の道北方面の運行体系です。
宗谷本線は、戦前は樺太との連絡線という重要な使命を帯びていたため、大正時代にはすでに優等列車が設定されていました。戦後はこうした役割はなくなったものの、1958年以降一貫して優等列車が設定されています。しかし、線路規格も低く高速化も難しかったことから、1988年時点では他の北海道の主要路線とは異なり急行列車のみが設定されていました。この運行形態は1990年代いっぱいまで続き、2000年以降高速化工事が完成して現在の運行体系へ整理されました。2020年改正時点では、札幌―稚内の特急『宗谷』1往復と、旭川―稚内の特急『サロベツ』2往復が運転されています。
1988年3月 宗谷本線『宗谷』『天北』『礼文』『利尻』時刻表
礼文 | 天北 | 宗谷 | 利尻 | |
札幌 | 1130 | 1628 | 2157 | |
旭川 | 0848 | 1324 1326 | 1820 1824 | 2359 0020 |
名寄 | 0957 0958 | 1439 1447 | 1945 1947 | 0147 0213 |
音威子府 | 1044 1046 | 1542 1544 | 2037 2038 | 0312 0317 |
幌延 | 1148 | || | 2151 | 0444 0447 |
浜頓別 | || | 1650 1651 | || | || |
南稚内 | 1239 | 1820 | 2253 | 0555 |
稚内 | 1244 | 1825 | 2257 | 0600 |
宗谷 | 天北 | 礼文 | 利尻 | |
稚内 | 0730 | 1153 | 1603 | 2143 |
南稚内 | 0735 | 1158 | 1607 | 2149 |
浜頓別 | || | 1327 1328 | || | || |
幌延 | 0834 0835 | || | 1657 1658 | 2308 2310 |
音威子府 | 0949 | 1436 1438 | 1800 1801 | 0028 0033 |
名寄 | 1040 1042 | 1534 1544 | 1846 1848 | 0131 0150 |
旭川 | 1154 1204 | 1657 1703 | 1953 | 0319 0339 |
札幌 | 1357 | 1856 | = | 0555 |
先にも述べた通り、1988年当時の宗谷本線の優等列車はすべて急行として運行されていました。現在の特急『宗谷』が札幌―稚内を5時間強で結んでいるのと比べ、急行『宗谷』は6時間半ほどかかっていました。
特徴的だったのはやはり急行『天北』で、音威子府―南稚内を今はなき天北線経由で結んでおり、所要時間はさらに30分ほど長いものでした。『天北』は、翌1989年の天北線廃止に伴い、急行『宗谷』に編入されます。また、深夜需要として急行『利尻』も運転されていました。例によって、名寄駅での「利尻返し」も可能なダイヤでした。
1988年当時の宗谷本線の優等列車は、急行「礼文」を除き客車列車で運行されていました。全国的に客車列車が減少していく中で、昼行の定期急行列車としては全国的にも珍しい存在でした。
それまで北海道の気動車急行として使用されていたキハ56系は、一部準備工事がなされていたものすべて非冷房車でした。冷涼な北海道とはいえ、冷房なしの長距離輸送はさすがに競合交通機関と見劣りするため、冷房付きの14系客車が使用されることになり、『天北』などはわざわざ気動車からの置き換えが行われていました。牽引機はDD51が基本でしたが、線路規格の低い天北線を経由する『天北』は、全区間DE10がけん引しました。
一方、急行『礼文』は民営化直前に完成した急行仕様のキハ54-500番台が1986年(昭和61年)より使用され、自由席のみの2両編成で運行されていました。
1988年3月『宗谷』『天北』『利尻』 編成表
宗谷(稚内行き)
1 | 2 | 3 | 4 |
自 | 指/自or指 | 自 | 自 |
宗谷(札幌行き)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
自 | 自 | 指/自or指 | 自 | 自 |
天北
1 | 2 | 3 | 4 |
自 | 指/自or指 | 自 | 自 |
利尻(稚内行き)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
B | B | 指/自or指 | 自 | 自 |
利尻(札幌行き)
1 | 2 | 3 | 4 |
B | 指/自or指 | 自 | 自 |
B:B寝台 指:指定席 自:自由席 :禁煙
編成表からも見てわかる通り、『宗谷』『利尻』は共通運用が組まれ、方向によって編成両数が異なっていました。昼行列車として使用する場合、寝台車は自由席として使用されていました(一時期グリーン車などとして使用された時期もありましたが、1988年当時は自由席でした)。『利尻』は1991年よりキハ40改造のキハ400、480に14系寝台車を連結するスタイルとなり、気動車+寝台客車の組み合わせは後の『おおぞら』『オホーツク』でも見られるようになります。
2000年の高速化工事完成後はすべての列車が特急へ格上げされ、キハ183系の後にキハ261系へと変更されましたが、『利尻』は引き続きキハ183+14系寝台のスタイルで運行された後、2006年の臨時化を経て2007年が最終運行となりました。