本記事のポイント
JR西日本は、運賃体系の見直しを行うことを発表しました。市街地の拡大により、郊外部での利用が増加していることから、電車特定区間と通常の幹線運賃の格差をなくすことが目的でとしています。値上げ、値下げとなるのはどの区間で、どのくらいの変更があるのでしょうか。
JR西日本 運賃体系を見直しへ 電車特定区間は廃止か
JR西日本が京阪神の運賃体系について見直しを検討していることがわかりました。
これは2024年4月22日付で報道各社が報じたもので、具体的な体系や金額については触れられていませんが、利用者の多い区間とそれ以外の郊外部では同じ距離でも金額が違う国鉄時代の体系を一新し、統一するとされています。
運賃体系の抜本的な見直しは民営化後初となり、2025年春の実施を目指しているということです。
幹線運賃より割安 国鉄時代に設定された電車特定区間運賃
JR西日本の運賃体系は、旧国鉄時代のものをおおむね踏襲しており、幹線運賃と地方交通線運賃に分けられます。
ただし、京阪神地区では利用客が多いことに加え、私鉄との競争が激しく、1970年代半ば以降国鉄の運賃の値上げが続くと、通常の幹線運賃ではとても対抗できず、国鉄離れが加速することとなりました。
このため、1984年(昭和59年)に国電区間運賃(現在の電車特定区間)が設定され、東京・大阪の指定区間内であれば幹線運賃よりも安い運賃が適用されることとなり、2024年現在も新規路線の開業を除いては、電車特定区間は国鉄時代とおおむね変更はありません。
しかし、JR発足後は市街地の拡大により郊外部でも利用客の増加傾向が続き、電車特定区間とそれ以外の幹線運賃適用区間とでは、同じ距離を乗車しても運賃が違う状態が続いていました。このため、今回の改定ではこの格差をなくし、運賃体系を統一することになった模様です。
JR西日本 値上げ区間、値下げ区間はどこ? 特定割引区間はどうなる
具体的な変更後の区間や運賃については言及がありませんが、報道によれば
- 電車特定区間より割安な大阪環状線は値上げ
- 京都線や神戸線などでは十~数十円の値上げ
- 神戸線の西明石以西やJR琵琶湖線など周辺部では値下げ
となる見込みです。また、見直しによりJR西日本全体の収益が変わらないよう調整するとしています。
なお、京阪神地区では、特に私鉄との競争の激しい区間などではさらに割引率の大きな特定区間を設定し、この区間のみを利用する場合は通常の運賃表は用いない「特定割引区間」が存在しています。
例えば、大阪ー京都を利用した場合、2024年4月現在は通常の幹線運賃では770円のところ、電車特定区間を適用して740円となりますが、平行する阪急が410円であることを考えればまったくお話にならないため、既存の運賃表は無視して580円と定められています。
また、高槻ー大阪(21.2㎞)と高槻ー京都(21.6㎞)では距離はほぼ同じながら、阪急とほぼ平行する前者の区間は特定区間割引を適用して290円なのに対し、阪急とは比較的距離の離れる後者の区間は電車特定区間運賃の410円となっています。
今回の報道では、この特定割引区間の見直しについては言及がありませんが、報じられている運賃の見直し幅が十円単位であることから、特定割引区間については見直しが行われない可能性が高いと思われます。。