歴代お召列車を所蔵の御料車庫で解体工事が始まる
お召列車として使用されてきた歴代の御料車両を保管している、東京総合車両センターの一角、通称「御料車庫」の解体が始まったと話題になっています。
SNSなどでは、パワーショベルがレンガ建ての建物にアームを突き当てて破壊しようとする様子や、解体工事の告知が掲載され、解体工事が進んでいる様子が投稿されています。
解体工事が始まったのは2023年3月27日からで、それから約2週間が経過していますが、壁や一部の屋根が解体された以外はまだ原形を保っているようです。
工事期間は2023年11月23日までとなっており、現在のところ、解体なのかあるいは移設保存なのかは情報がありません。
御料車庫とは? 歴代お召列車などが保管されていた車庫
御料車庫とは、東京都品川区にある東京総合車両センターの南西隅にあるレンガ建ての建物の通称で、皇室が使用する車両を保管するためのスペースです。
東京総合車両センターの前身の一つである、国鉄大井工場が現在地に移転してきたのが1915年(大正4年)のことで、御料車庫はそれから間もない1924年(大正13年)ごろに建設されたと言われています。この車庫がいつから皇室関係の車両を保管する建物として使用されていたのかははっきりしないようですが、同じく大正期には原宿駅にいわゆる宮廷ホームが完成、そうなると同じ山手貨物線に車両基地が作られるのは当然のことで、その頃から御料車庫として使用されていた模様です。
近年お召列車を務めるE655系のうち、皇室行事などで使用される特別車両も通常はこの御料車庫で保管されており、E655系登場以前にお召列車として使用されていた1号編成も、この御料車庫を基地としていました。また、大正期からお召列車や皇室行事で使用されてきた歴史ある車両の一部も、この御料車庫で厳重に保管されています。
築100年を迎える御料車庫 なぜ解体される? 保管車両はどこに?
築100年をまもなく迎えようとする御料車庫の建物ですが、どうして解体されてしまうのでしょうか。
JR東日本では、将来の羽田空港の国際化強化やリニア開業を睨んで浜松町駅から大井町駅にかけて高輪ゲートウェイを中心に「東京南エリア」と称した街づくりを進めており、その中でも京浜東北線や東急大井町線、臨海線が交差する大井町駅周辺においては「大井町駅周辺広町地区開発(仮称)」が進められています。
これは、東京総合車両センターの南側に、隣接する品川区総合庁舎の建て替えを含めて新たなショッピングセンター、行政施設などを再整備するもので、jr東日本の再開発エリアにはオフィス・商業施設・ホテル・賃貸住宅が入る26階建てのビルが1棟と、2階建ての施設が1棟建設されます。
表示されない場合: 大井町駅周辺広町地区開発(仮称)に本格着手します
さらに、老朽化が指摘されている品川区役所など行政施設もその西側に配置されることとなっています。
この開発にあたり、新に建設される道路が御料車庫と重なることとなったため、今回解体に至った模様です。
JR東日本では、調査の結果歴史的に特筆する建築物ではなかったとし、残念ながら保存や移設については検討されていない模様です。また、品川区でもこれらの建設物については関与しない立場をとっている模様で、一部都民や団体からの問い合わせにも回答がないようです。
なお、JR東日本によれば、保安上の理由から場所は言えないものの、保管車両については既に別の場所に移っているとのことです。