2021年改正で首都圏から全廃となる「ホームライナー」 その歴史とは

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2021年改正で首都圏から全廃 「ホームライナー」とは

JR東日本は、2021年ダイヤ改正で東海道本線東京口で運転している『湘南ライナー』を始めとするいわゆる「ホームライナー」について、新たに運転を開始する特急『湘南』に置き換わる形で全廃することを発表しました。

185系を使用した『湘南ライナー』
Wikipediaより

かつては東海道線だけでなく東北線や中央線、常磐線、総武線など各方面に多数の列車が運行されていましたが、現在はすべて廃止となっています。最後に残った東海道線からも全廃となることで、発祥の地でもある首都圏から「ホームライナー」がすべて姿を消すことになります。

「ホームライナー」とは、主に通勤時間帯において着席できるサービスを提供する列車の総称で、JRの営業規則上は普通列車に分類されます(各駅停車という意味ではなく、営業規則上の急行列車に対する普通列車。快速という種別は案内上わかりやすくするために呼称されているだけで、規則上はあくまで普通列車の一種です)。

路線によって多少違う場合もありますが、おおむね乗車券の他に乗車整理券が必要となっており、乗車券として定期券の使用も認められています。乗車整理券は座席が指定されるか、または座席の数しか販売されないため、整理券を購入すれば着席が保証されます。特急として使用される車両が使用されることも多く、混雑を避けたい特に長距離通勤客からは好評を得ていました。

回送列車の有効利用から始まった「ホームライナー」

現在の制度としての「ホームライナー」の運行が始まったのは、国鉄末期の1984年(昭和59年)6月とされています。

1970年代には労使関係の悪化や度重なる運賃値上げですっかり国民の信頼をなくした国鉄も、1980年代となるといよいよ分割民営化が現実味を帯びてくるようになりました。アタマの固かったお役所体質を捨て、利用促進につながる商品が次々と開発されるようになります。「青春18きっぷ」や「フルムーンパス」など、現在まで続くロングセラー商品が登場したり、後に一世を風靡する「シュプール号」などが運転を開始したりしたのもこの時期でした。そして、「ホームライナー」が運転を開始したのもまさにこの国鉄改革の最中でした。

1984年当時は、東北新幹線はまだ大宮―盛岡の暫定開業で、1日当たり定期10往復の運転にとどまっており、東北本線の在来線特急網は新幹線開業前から大きく変わることなくネットワークを維持していました。このため、上野駅には東北各地からの特急列車が多数発着していました。

東北各地を午後に出発した列車は、夕方以降に上野駅に到着します。これらの列車は、上野から埼玉県内の車両基地まで回送され、夜を明かすことになります。夕方以降に都心から郊外へ出ていく列車であり、当然需要は存在していましたが、当時の国鉄には「回送列車を営業化して乗客を乗せる」という発想はありませんでした。

しかし、当時から私鉄に存在していた有料特急が短距離の通勤需要に利用されている例をヒントに、これらの一部を営業化してはどうかという声が上がります。営業化に当たり、特急車両は通常の通勤列車として運行するには不向きであることから、座席整理券を発行し、1編成のうち数両に限って乗車を認めることとしました。これが「ホームライナー」の始まりとされ、7月23日からは『ホームライナー大宮』という列車名も付けられました。同時に総武線では『ホームライナー津田沼』、関西地区では9月から阪和線で『ホームライナーいずみ』が運行を開始しました。発案者は後にJR東海の初代社長となった須田寛氏といわれ、須田氏は同時にオレンジカードの開発に携わり、青春18きっぷなども考案した国鉄末期のアイデアマンとして知られています。

こうして登場した「ホームライナー」ですが、利用者には大変好評で、当初数両で行っていた客扱いではとてもさばき切れず、順次解放される車両が増えていくこととなり、1年後には全編成を開放することになります。

1986年(昭和61年)11月のダイヤ改正では、後に一大勢力となる『湘南ライナー』が朝2本、夜4本の内容で運行を開始します。この列車の設定に当たっては、「回送列車の有効利用」という名目を外れ、ラッシュ時の普通列車として難のあった185系を有効活用することと、増収目的とサービスアップのためわざわざ列車を新設することとなりました。

『湘南ライナー』は人気列車となり、その後の改正で増発を重ねていくことになります。運行開始当初は300円(当時は消費税もありませんでした)という廉価で着席サービスが提供されたことから、「コーヒー1杯我慢すれば座って通勤」と長距離通勤客から大好評で、快適な通勤のはずがライナー券を求めて早朝から長蛇の列ができるなど本末転倒な状況も発生しました。

利用客の増加に対応するため、『湘南ライナー』専用のオール2階建て車両215系も製造されるなど、本来の名目はどこへやらという状態になり、2020年現在は関連する新宿発着系統を含めて朝の上り9本、夜の下り11本が運転されるまでになりました。

『湘南ライナー』として使用される215系 10両編成で比べた場合、編成定員は185系の604名に対して215系は1,010名となる 現在『湘南ライナー』以外に定期運用がなく、今後の運用が注目される

東海道線や首都圏以外でも、「ホームライナー」の好評を受けて日本各地の都市圏を中心に運行が始まり、名古屋地区や近畿地区のみならず札幌、長野、新潟、静岡、九州圏での運行が見られるようになりました。こちらも、回送列車の有効利用という名目が必ずしも当てはまらず、利用促進と増収を狙って設定された列車も多数存在しました。

「ホームライナー」の衰退

こうして全国各地に設定された「ホームライナー」でしたが、2000年代以降は縮小が始まります。

定期列車の充実、都心回帰で長距離通勤客の減少、首都圏では普通列車へのグリーン車連結で次第に「ホームライナー」の利用は右肩下がりとなります。加えて増収を図りたいJR各社の思惑もあり、2011年までに関西や九州では需要の高い「ホームライナー」は特急に格上げされるかたちで全廃となりました。

電車だけでなく、気動車が充当される場合もあった 福知山線では、当初上り列車のみキハ65を使用して『ほくせつライナー』が運行された 後に183系化され、2002年に特急『北近畿』(現在の『こうのとり』)となった

「ホームライナー」発祥の地でもある首都圏でも、常磐線では早くも1998年改正で『フレッシュひたち』に置き換えられて全廃となり、2010年以降は各線区で特急への格上げが進みました。ホームライナー第一号となった列車の流れをくむ『ホームライナー古河』『ホームライナー鴻巣』が2015年3月改正で特急化、2019年改正では中央線、総武線でも特急化され、残るは東海道線の『湘南ライナー』のみとなっていました。

なお、首都圏以外で「ホームライナー」あるいは乗車整理券を必要とする列車のある札幌、新潟、静岡、名古屋地区においては、2020年11月現在その動向についての情報は発表されていません。

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