東北地方の大雨で鉄道に大きな被害 長期不通が6か所も
2022年8月は東北地方で断続的に大雨となり、各地に被害をもたらしました。
鉄道も大きな被害を受けており、一時は日本海縦貫線とIGRいわて銀河鉄道の両方が被災、東北北部と南部の鉄路が絶たれる事態ともなりました(よろしければ「東北地方で大雨 被害の情報相次ぐ 8/5追記」もご覧ください)。
IGRいわて銀河鉄道はすでに復旧していますが、日本海縦貫線を形成する奥羽本線は被害も大きく、復旧までには相当の時間が必要とみられています。
また、主要幹線だけでなく五能線、米坂線、磐越西線、花輪線、津軽線といったローカル線も大きな被害を受け、東北地方の6路線で長期運休が発生する見込みです。これらの路線ではバス代行による運行が始まっていますが、ローカル線では普段の利用状況から今後の路線の存続や復旧費用の負担をめぐって、紆余曲折が予想されます。
奥羽本線 糠沢ー早口で道床流出など 鷹巣ー大館が長期不通に
奥羽本線では、糠沢ー早口をはじめ盛土、道床流出が4か所、土砂流入が2か所など、約20か所が被災しました。このため、鷹ノ巣ー大館で不通となっています。
JR東日本によれば、運転再開には盛土の再構築が必要なことや、線路わきに設置していた通信線なども損傷しているため、復旧には少なくとも数か月が必要ということです。
被災区間はバスによる代行輸送が行われています。また、青森ー秋田を結ぶ特急『つがる』は、全列車とも弘前ー秋田が運休、普通列車は秋田ー東能代で折り返し運転となり一部が運休、東能代ー鷹ノ巣は朝夕の一部の列車のみ運転されています。
五能線 花輪線 津軽線 被害大きく復旧のめど立たず
五能線では、陸奥赤石ー鰺ケ沢と松神~十二湖で鉄橋が損傷するなど鉄橋4か所で変形が確認されたほか、土砂流入が39か所、盛土の流出が13か所など、合計約70か所で被害が確認され、岩館ー鯵ヶ沢で運転を見合わせています。
このため、五能線では岩館ー深浦ー鰺ヶ沢で代行バスを運転しているほか、路線バスへの振り替え輸送が行われています。また、観光列車『リゾートしらかみ』は、青森ー鯵ヶ沢の区間運行となり、鰺ヶ沢ー深浦は代行バスで運転されています。
花輪線では、盛土・道床流出などが50か所以上確認され、花輪ー大館で運転見合わせとなっています。また、津軽線でも大平ー津軽二股で盛土・道床流出などが12か所確認され、蟹田ー三厩で不通となっています。
いずれも代行バスによる運行が始まりましたが、朝夕以外は既存の路線バスや乗り換えタクシーによる運行となっています。
五能線、花輪線、津軽線は被害が大きく、また場所によっては調査もできてない個所もあり、今後の状況によっては復旧まで1年以上かかる見通しも出ています。
米坂線 磐越西線でも鉄橋が崩落 復旧見通しは立たず
米坂線では、山形県飯豊町の羽前椿ー手ノ子にかかる「小白川橋梁」が崩落し、今泉ー坂町で土砂流入、磐越西線では、喜多方ー山都にかかる「濁川橋梁」が崩落したことなどは、すでに「東北地方で大雨 被害の情報相次ぐ 8/5追記」でお伝えしました。
この2線についても、被害が甚大であることから、やはり復旧の見込みは立っていません。
両線区ではもともと利用が芳しくないことから、今後の存続について心配する声も上がっており、JR東日本に対して沿線自治体からは早期復旧を求める要望がすでに提出されています。
日本海縦貫線の不通で貨物列車にも大きな影響
日本海縦貫線を構成する奥羽本線の不通は、貨物列車にも大きな影響を与えています。
JR貨物では、奥羽本線の不通により秋田貨物ー大館の運行ができないことから、東海道本線・東北本線・IGRいわて銀河鉄道経由で関西―北海道を結ぶ臨時貨物列車を1往復設定している他、秋田貨物ー大館及び仙台貨物ターミナルー秋田貨物の間でトラックによる代行輸送を行っています。
また、8月23日からは秋田―札幌でフェリーでの代行輸送も始まっています。
しかし、迂回輸送や代行輸送は輸送能力に限りがあることや、1日の運休列車が8月28日分だけでも上下12本(区間運休含む)に及んでいることから、長期的に見れば物流への影響も避けられない状況です。