『ムーンライトながら』廃止へ 2020年で運転終了
JR東日本とJR東海は、『ムーンライトながら 』について、2020年3月の運転をもって廃止することを発表しました。1月22日の春の臨時列車についての発表の中で明らかにされたもので、またひとつ伝統を受け継ぐ夜行列車が消えることになります。
『 ムーンライトながら』の存続をめぐっては、2009年の臨時化以降毎年のように廃止の噂が流れていました。とくに2010年代後半は運行日の縮小が著しく、いつ運転が終了してもおかしくない状態が続いていました。
さらにそれに追い打ちをかけたのが昨年以降のコロナウイルスの拡大でした。不要不急の外出が自粛される中、『ムーンライトながら』は2020年夏以降の設定がなく、休止なのか廃止なのか判断がつかない状態が続いていました。
『ムーンライトながら』185系の引退とともに廃止
さらに廃止論に拍車をかけていたのが、使用される185系の引退でした。
185系は1981年(昭和56年)に製造が始まり、車齢は間もなく40年に達することから、2021年改正をもって定期運用から離脱することが早くから報道されていました。
185系引退後は、JR東日本とJR東海を広範囲に直通できる車両は存在せず、185系の引退が『 ムーンライトながら』の廃止に直結するのではないかと言われてきましたが、まさにその通りの結果となってしまったわけです。
会社間をまたいで運行する列車の場合、両方の会社の乗務員がその車両の扱いに精通する必要があります。かつてどの会社でも使用されていた国鉄型車両はともかく、民営化後の車両が大半となった今では、会社またぎの長距離列車はこれらの手間を嫌ってさらに設定が難しくなるでしょう。
『ムーンライトながら』廃止の理由とは? JRの言う使命とはなんだろう
JRからの発表によれば、『 ムーンライトながら』廃止の理由として、まず第一に「お客さまの行動様式の変化により列車の使命が薄れてきたこと」、第二に「車両の老朽化」が挙げられています。
車両の老朽化についてはもちろん自然に進行していくものなので当然ですが、すくなくとも車両を置き換えて運行するという意思はないということでしょう。そして老朽化により運行日や運行頻度が減少し、乗客減につながりますます収益が悪化、そしてまた運行頻度の減少と乗客減を招き、最後は廃止という、いつものスパイラルに入っていったことになります。まるで「乗らなかったお前らが悪い」と言わんばかりの態度で、なぜ乗客減につながったのか、どうすれば列車の魅力が高まり乗客増につながるのか、といった視点は全く欠落しているように思います。
また、どのように行動様式が変化し、それが列車の使命にどう繋がるのか、ぜひとも具体的な説明が欲しいところですが、それには触れられていません。コロナウィルス感染拡大以降、人との接触をできるだけ避けるよう行動様式の変化が求められていることはわかりますが、それと夜行列車の廃止がどう結びつくのかわかりません。各社は盛んに鉄道は適切に換気している旨をアピールしていますし、そもそも通勤電車のように車内に詰め込まれるわけでもなく、睡眠時間でもある夜間帯に走るわけですから、大声で話すケースも少ないでしょう。鉄道という空間が危険で、感染拡大を徹底的に抑えるなら、新幹線も通勤電車も今すぐ運休させるべきでしょう。春休みに数日1往復だけ動く『ムーンライトながら』の運転をやめるより、よっぽど効果があります。
そもそも、コロナウィルス感染拡大を原因とするなら、必ず近い将来やってくる拡大収束後には関係がないはずで、未来永劫運転取りやめ、廃止とする必要はありません。
JRの言う使命というとが一体何を指しているのかわかりませんが、儲かる新幹線は提供してやるから移動したければそれを利用しろと言わんばかりです。利用者は、例えば高くても速く、いや快適に、あるいは安く移動したいという様々なニーズを持っているはずで、それらににこたえる使命は少なくともないと考えているということになります。
ともかく、『ムーンライトながら』の廃止により、日本国内のJR線で運行している夜行列車は、クルーズトレインや観光列車を除くと臨時も含めて『サンライズ』系統だけという誠にさみしい状態となりました。
しかし、『サンライズ』に使用される285系もすでに車齢24年、連日長距離走行をしていることから、車両の老朽化も進んでいるものと思われます。
『サンライズ』は、一部を除き全車両が個室構造で、他人との接触を減らしつつ移動するには最適な構造になっています。また、年間を通じて高い乗車率を維持しており、その存在使命も十分にありそうです。
現在の状況では『サンライズ』についても車両更新が行われる可能性は低そうで、このままではやがて臨時化→乗客減→廃止の流れを辿ることは容易に想像がつきますが、その時のJRの言い訳がなんであるか、いささか興味深いものです。