阪急「なにわ筋・新大阪連絡線」 なにわ筋線と同じ2031年度開業へ
阪急電鉄は2023年8月16日、2031年度に予定されているなにわ筋の開通に合わせ、なにわ筋線の北側の終点から十三駅を経て新大阪駅へ至る、通称「なにわ筋・新大阪連絡線」を同時に開業させることを発表しました。
なにわ筋線は大阪駅からJR難波駅と南海の新今宮駅の間を、なにわ筋に沿って建設される新路線で、JR難波駅でJR線に、新今宮駅で南海線に接続し、大阪駅から関西空港までを乗り換えなしで結ぶ予定です。
阪急の計画では、大阪駅から十三駅の地下を経由して新大阪駅までの新路線を建設するとされており、阪急沿線はもちろんのこと新大阪駅で新幹線と接続することにより、関西空港へのアクセスが格段に向上することとなります。
「なにわ筋・新大阪連絡線」 その概要は? 新大阪・十三駅はどこに?
「なにわ筋・新大阪連絡線」として建設されるのは、なにわ筋線の終点となる大阪駅から十三駅までの2.5㎞と十三駅から新大阪駅までの2.1㎞、あわせて4.6㎞の路線です。
阪急電鉄の発表や報道によれば、新たに建設される新大阪駅は大阪市淀川区宮原3丁目付近の阪急電鉄所有地となっており、地下駅となります。また、十三駅もやはり地下に建設され、既存の十三駅とはエレベーターで連絡する構造になるということです。
開業後のおおよその所要時間も公開され、十三―関西空港は約57分となっており、さらに神戸三宮駅から関西空港駅までは約1時間20分、京都河原町駅から関西空港駅までは約1時間35分とみられています。
ただし、阪急の既存路線は軌間が1,435㎜なのに対し、なにわ筋線はJR、南海と同じ1,067㎜のため直通運転はできず、阪急側とはどの路線ともつながらない飛び地路線となります。
2017年の試算によれば、2つの連絡線の建設費は約1,310億円で、1日の輸送量は大阪―十三で11~13万人、十三―新大阪で4~5万人と見積もられており、開業後13~16年程度で累積黒字を解消できる見込みということです。
ダイヤは毎時6本の急行を運転 マルーンカラーの専用車両が関空乗り入れか
さて、気になるダイヤと車両についても、阪急電鉄から発表されています。
阪急電鉄によれば、大阪―十三ー新大阪には、なにわ筋線を経由して関西空港まで直通する料金不要の急行が毎時6本運転されます。特急でなく急行となった理由について、阪急電鉄は「関空だけでなく、十三から新大阪、またなにわ筋線の各駅などに移動する通勤客なども取り込むため、予約が不要な急行列車の方が適していると判断した」としています。
また、なにわ筋線にはJRが1時間当たり特急3本と快速4本、南海が特急2本と急行4本の運転を予定しており、阪急が6本の急行を運転するとすれば、一部はJRへ乗り入れる可能性もあります。
一部の報道では、JRと南海が特急用車両を共同開発するというものもあり、もしかすると阪急からなにわ筋線を経由して関西空港まで、同じ車両が途中で経由地を変えて運行されるという姿が見られるかもしれません。
阪急が使用する車両は、軌間が違うこともあり専用の車両が開発される見込みで、阪急電鉄では伝統のマルーンカラーは維持したいとの姿勢を見せています。ただし、先にも述べた通り既存の路線からは完全に離れ小島となるため、阪急電鉄によれば「基本的に南海電鉄と共通の構造とし、メンテナンスは南海に依頼する方針」ということです。この発表を見る限り、阪急の車両とはいえどちらかというとマルーンカラーをまとった南海電車、となりそうな感じです。
迷走した阪急の新大阪乗り入れ計画
阪急電鉄の新大阪―十三を結ぶ路線構想は古くから「阪急新大阪連絡線」として存在しており、新幹線開業前の1961年(昭和36年)に淡路―新大阪―十三および新大阪―神崎川の事業免許を取得していました。
このため、新大阪駅やその周辺の構造物は阪急の乗り入れを考慮した設計があちこちに残されています。また、大半は駐車場などの用途へ転用されていますが、新大阪駅周辺には阪急電鉄の所有地が多数存在しています。
かつては国の運輸政策審議会で「着手をすることが適当な区間」とされたこともあり、必要な用地の8割が取得されていたものの、都市化の進展や情勢の変化により、阪急新大阪連絡線は実現することはありませんでした。1990年代の終わりには、取得した用地が転用されたり、売却されるなど計画はほぼ不可能となり、2002年には淡路―新大阪と新大阪―神崎川の事業免許の廃止届が提出され、実現の可能性が残されたのは十三―新大阪のみとなっていました。
事態が動いたのは2006年で、梅田貨物駅再開発に絡み、西梅田駅が終点となっている四つ橋線を十三駅まで延長する構想を阪急電鉄が発表。さらに十三―新大阪についても、その構想が阪急電鉄より発表されました。
採算性も極めて有効とされましたが、四つ橋線の延長区間が阪神電鉄の地下区間と干渉し、軟弱な地盤であることから工事の困難さが指摘され、その後計画が進展することはありませんでした。
しかし、2017年になにわ筋線の建設が具体化すると再び状況が変わり、阪急電鉄が十三―新大阪の路線建設を長期計画に盛り込んでいたことが明らかとなりました。さらに2019年以降はなにわ筋線の建設主体となる大阪府、大阪市と運営主体となるJR西日本、南海電鉄との間で、連絡線構想を一体として扱うよう阪急電鉄が協議を開始、2022年には、阪急としては初の狭軌路線となる、十三駅から大阪駅とを結ぶ「なにわ筋連絡線」と、十三駅から新大阪駅を結ぶ「新大阪連絡線」の2路線を、2031年にに開業させる方針を明らかにしていました。