駅舎のデザインから見た、地方の将来設計 その1 土佐くろしお鉄道中村駅と川西康之さん

土佐くろしお鉄道 中村駅
撮影:鉄道模型モール制作室

私の好きな鉄道デザイナーの一人に、川西康之さんという方がいます。

 もちろん直接お会いしたとかお話したとかいうわけではありません。お名前を知らない方でも、越後トキめき鉄道の『雪月花』といえば思い浮かぶ方も多いでしょう。この『雪月花』をデザインしたのが、川西さんが代表取締役を務める株式会社イチバンセンです。

 鉄道デザイナーと言われてもっとも有名なのは、やはりドーンデザイン主宰の水戸岡鋭治さんでしょう。当時10代だった川西さんも、JR九州から発表された水戸岡さんのデザインパースに感銘し、デザイナーになった後に、鉄道にかかわる仕事をしたいと思うようになったそうです。

 さて、冒頭の写真は土佐くろしお鉄道の中村駅です。

 この中村駅も2010年のリニューアルに当たって、川西さんがデザインしました。

 そのデザインは世界的にも注目され、鉄道関連では世界唯一となる国際デザインコンペのブルネイ賞をはじめ、国内外の10を超える賞を受賞しました。ずっと気になっていたのですが、先日訪れる機会に恵まれました。

撮影:鉄道模型モール制作室
撮影:鉄道模型モール制作室

 何のことは無い外観ですが、案内板やサインボードは今どきなデザインで、まるで大都市圏の駅の雰囲気をかもし出しています。

 かつては大編成の列車が行きかった長いホームも今では宝の持ち腐れ。広いホームを生かし、改札内にも長いベンチが設置されました。

   しかし、この駅の最大の魅力は、なんと言っても待合室だと思います。

   ふんだんに木材を使用した落ち着いた空間で、イスの他テーブルまで用意されています。実はこれ、川西さんが利用者目線て設計したものです。

停車中のあしずり6号
撮影:鉄道模型モール制作室

 中村駅は、四万十市の中心駅で土佐くろしお鉄道の実質的な本拠地が置かれています。

 四万十市は人口約35000人で、高知県内では高知市、南国市に次ぐ人口を誇っていますが、ピーク時に比べ人口は1万人以上減少し、少子高齢化も進んでいます。中村駅も、かつては国鉄中村線として開業しましたが、中村線が第3次特定地方交通線として廃止対象とされたため、土佐くろしお鉄道が引き継ぎました。

    市の中心として整備したい四万十市と、拠点駅として利用サービスの向上を図りたい土佐くろしお鉄道は2010年に駅舎をリニューアルすることとし、限られた予算の中でデザインを川西さんを始めとしたグループが担当します。

    当初の市の計画では、当時待合室はエアコンとテレビが設置されていたため近所の老人の憩いの場となっていたことから、高齢者が触れ合える駅作りとなるはずでした。

    長くなりそうなので、次回へ続きます。

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