美祢線・山陰本線が大雨で鉄橋流出など被災 美祢線は路線存続問題へ発展か

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山口県で大雨 鉄道にも被害が出ている模様

2023年6月29日から7月1日にかけて西日本に降り続いた大雨の影響で、美祢線、山陰本線で線路に被害が出ていることが分かりました。

特に6月30日から7月1日かけては山口県で線状降水帯が発生、下関市では6月30日深夜の1時間降水量が100㎜を超え、山口市では24時間雨量が289㎜に達するなど、いずれも観測史上最も多い値となっています。

こうした大雨の影響で、山口県を中心に被害が相次ぎ、鉄道では、美祢線で鉄橋の崩落や路盤の流出が確認されている他、山陰本線でも鉄橋の損傷が確認されている模様です。特に美祢線では、報道を見る限り厚狭川にかかる鉄橋が完全に流出している模様で、長期間にわたり不通となることが予想されます。

美祢線は「第6厚狭川橋梁」が流出、山陰本線は「粟野川橋梁」が被災

美祢線で鉄橋が崩落したのは、美祢市内の四郎ヶ原ー南大嶺にある、厚狭川にかかる第6厚狭川橋梁です。

報道からは、鉄橋が中央で完全に崩落して、下流側へ押し流されている様子が確認できます。

また、この周辺の複数の区間で、線路の盛り土が流出している個所があり、信号通信施設も被害を受けているということです。いつ崩落したのかはわかっていませんが、現場付近の水位計では、7月1日午前3時ごろには堤防高さを2m以上超える水位が観測されていたということです。

なお、美祢線は6月30日の昼前から大雨のため運休しており、列車や人身の被害はありませんでした。

この他、山口県内では山陰本線長門粟野ー阿川にある、粟野川にかかる粟野川橋梁が増水により被害を受けています。粟野川下流の下関市宮迫では、7月1日未明に氾濫危険水位の2.7mを大きく上回る、6.7mにまで水位が上昇していました。

報道によれば、水位の上昇で粟野川橋梁が傾き、線路が曲がった状態になっているということです。

粟野川橋梁 被災状況
山陰本線 粟野川橋梁の被災状況 JR西日本 おでかけネット 中国エリア運行情報より

JR西日本によると、2023年7月3日現在、美祢線は厚狭ー長門市の全線で、山陰本線は長門市ー小串で不通となっており、運行再開の見込みは立っていないということです。

「幹線」扱いの美祢線だが、存続問題に発展する可能性

美祢線は、山陽新幹線や山陽本線と接続する厚狭駅から、山陰本線と接続する長門市駅を結ぶ、全長46㎞の路線です。もともとは沿線で産出された石炭を輸送するために建設された路線で、現在の山陽本線を開業させた山陽鉄道の手によって1905年(明治38年)に厚狭ー大嶺が開業しました。

大嶺から北へは、軽便鉄道による開業を経て1924年(大正13年)に正明市駅(現在の長門市駅)までが全線開業、来年2024年で開業100年を迎えます。かつては山陰地方と九州を結んだ急行『あきよし』『さんべ』など、陰陽連絡の使命を持った列車が運行されていました。

これらの列車は、山陰本線、山口線、美祢線のどれを経由しても距離がほとんど変わらないことから、日本海側の長門市駅や益田駅、瀬戸内側の小郡駅や厚狭駅で分割され、また同じ列車と併結されるという、いわゆる「離婚・再婚列車」として有名でした。

また、美祢線には沿線で産出される石炭、石灰石輸送のための貨物列車が多数設定されており、1970年代の最盛期には、美祢駅は宇部線の宇部駅とともに貨物発着量日本一と言われていました。1980年(昭和55年)、国鉄は「収支の均衡を確保することが困難である」路線を地方交通線として選定、割高の運賃が設定されましたが、美祢線は貨物取扱量が多かったことから幹線として指定されることとなりました。

美祢線 貨物列車
資源の乏しい日本にあって、自給できる数少ない資源の一つである石灰石 美祢線沿線では特に豊富に産出されるため、古くから貨物列車が多数運転されていた 美祢線の貨物列車は2013年で終了したが、ローカル線に似つかわしくない広い駅構内などに、現在もその名残をとどめる  Wikipedia(美祢線)より @DD51612 

しかし、沿線の道路整備に伴って陰陽連絡の使命は次第に薄れ、1985年(昭和60年)改正で美祢線経由の急行『さんべ』が廃止されると、美祢線を通る優等列車が全廃されるとともに、国鉄線から「離婚・再婚列車」も姿を消しました。

貨物輸送も、1975年(昭和50年)に石灰石の大口輸送先であった宇部興産(現在のUBE三菱セメント)の専用道路が完成したことにより、1978年度(昭和53年)をピークに減少。これに国鉄の運賃値上げや労使関係悪化による運行の不安定さが加わり、自動車輸送へのシフトが進みました。

宇部伊佐専用道路
山口県宇部市から美祢市までを結ぶ、UBE三菱セメントの専用道路「宇部伊佐専用道路」 全長は31.9㎞で、美祢市付近で算出された石灰石と製造された半完成品を宇部市の工場まで輸送するための日本一長い私道である もともとは単線で輸送力の限界にきた美祢線を補完するために開通したが、国鉄のストや順法闘争による貨物列車の運休、遅延、運賃値上げにより次第に自動車輸送にシフトされ、1998年に貨物列車による輸送は終了した 全線私有地のため道路交通法は適用されず、写真のようなアメリカンサイズのトレーラー輸送が行われている Wikipedia(宇部伊佐専用道路)より @OAzipper

このため、宇部興産向けの貨物列車は1998年で廃止、わずかに残った石灰石輸送の列車も2009年に廃止となりました。

貨物輸送の衰退と陰陽連絡使命の低下により、美祢線は純然たるローカル線となりました。1960年(昭和35年)には60,000人あった美祢市の人口は2021年には21,000人に減少するなど、沿線経済の衰退により利用数も衰退の一途をたどり、JR発足時に1700人を超えていた輸送密度も、2010年頃には500人程度まで減少。追い打ちをかけるように2010年には水害により1年2カ月にわたって不通となる大きな被害を受けました。この際は、美祢線の復旧に合わせて河川工事を実施することにより、美祢線の復旧を公共工事とみなすことで復旧費用約13億3400万円のうち半分を国と自治体が負担、残りの半分をJR西日本が負担することで復旧にこぎつけました。

2022年4月、JR西日本が発表した「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」の中で、美祢線が「2019年度の輸送密度が2,000人/日未満の線区」に該当するとして、今後の在り方について、水害によって不通となったことをきっかけに結成された「JR美祢線利用促進協議会」と協議したい姿勢を明らかにしました。

JR西日本によれば、美祢線は2018年度から2020年度の平均で100円稼ぐのに必要な経費を示す営業係数が788、年平均の赤字額が4億7000万円となっています。

路線の復旧となれば、ふたたび巨額の復旧費用が必要となり、その負担を巡ってはJR、国、沿線自治体の間で紆余曲折が想定されます。また、復旧させたとしても赤字経営は避けられないだけに、JR西日本が復旧に向けて消極的になる可能性もあり、最悪の場合はこのまま廃線となる恐れもあります。

促進協議会や沿線自治体では、2024年の開業100周年に向け利用促進を図っていた矢先の出来事だけに、今後の進展にしばらく目が離せなくなりそうです。

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