再構築協議会とは? 廃止・存続 芸備線の将来はどうなる?

社会
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芸備線の一部 地域公共交通活性化再生法に基づく再構築協議会を要請へ

JR西日本は2023年10月3日、芸備線の一部について、国に対し再構築協議会の設置を求めたことを発表しました。

再構築協議会は、2023年10月改正の地域公共交通活性化再生法に基づき、鉄道事業者などの求めに応じて国が主導して沿線自治体にヒアリングを行い、その結果国が必要と認めれば路線の存続を含め地域交通の在り方を協議する場所が設置されるもので、適用されるとなれば初の事例となります。

対象となるのは、芸備線の中でも特に利用の少ない備中神代ー備後庄原の68.5㎞で、JR西日本の発表によればこの区間の平均通過人員は1日当たり48人、最も少ない備後落合ー東条に限れば11人、列車本数も1日3往復という閑散区間です。

JR西日本の要請に対し、国土交通省は「事務的な準備が整い次第、なるべく速やかに意見聴取を始めたい」としており、結果次第では年内にも第一回目の協議会が開かれる見込みです。

この「再構築協議会」とは、いったい何をするところで結局のところ、芸備線はどうなってしまうのでしょうか。

再構築協議会とは何のため? 誰が求めて誰が参加するの?

再構築協議会とは、2023年10月に改正された地域公共交通活性化再生法に基づき、地域の公共交通機関の在り方について協議するものです。もともとこの法律は2007年に制定されたもので、当初は将来にわたって公共交通機関が維持できるよう、長期的な計画を自治体に努力義務を課すものでした。

しかし、今改正では利用客の減少により、赤字が続くローカル線の今後について踏み込んだものとなり、鉄道事業者、沿線自治体などの関係者からの要請があれば、再構築協議会を国が開催するか否かを決定します。協議会のメンバーとして想定されているのは、鉄道事業者の他、沿線自治体やバス・タクシーなどの地域の交通事業者、道路管理者などで、必要に応じて参加することとなっています。

なお、協議会の設置に当たっては一定の基準があり、国土交通省の指針では以下の条件を満たす場合とされています。

  • 都道府県をまたぐ線区
    • 沿線自治体だけでは協議がしにくいため、調整役として国が参加する
  • 輸送密度が4,000人/日未満(1,000人/日未満を優先)
    • 国鉄時代には輸送密度4000人が廃止基準でしたが、現在ではそれよりはるかに合理化も進んでいることや、モータリゼーションや過疎化の進展により利用状況が悪化していることを踏まえ、ひとまず輸送密度1000人未満を対象とする
  • 特急列車や貨物列車が走行している線区や災害代替となりうる路線は対象外
    • これらの路線は鉄道ネットワークとして重要な役割を果たしているため、対象外とする

再構築協議会は、鉄道がその特性を発揮できるかどうか、利用状況から考えて鉄道として存続させることが適当かどうかといった点はもちろん、代替交通手段の確保や道路整備に必要な費用などを考慮して、その地域にとって交通体系を最もふさわしいと思われる体制に再構築することを目的としています。また、必要な社会実験を行う場合は事業費の半分を国が負担し、その結果鉄道で残すことが望ましいと結論付けられた場合には、軌道強化や高速化など、鉄道が特性を発揮するために必要な改良費の半分を国が負担することとなっています。

再構築協議会が必要になった理由とは?

では、2023年10月の法律改正でなぜこのような協議会が必要とされるようになったのでしょうか。

これまで日本では、鉄道・バスなどの公共交通機関は極めて高い公共性を帯びながら、そのほとんどが事業者任せで運営されてきました。利用が多く利益が出ている時代、地域は問題ありませんでしたが、モータリゼーションや過疎化で利用が減少するにつれ、路線の存続が問題となるようになりました。

しかし、ほとんどの自治体やあるいは国も、地域の公共交通問題には援助の手を差し伸べることはほとんどなく、それどころか話題にすることすらタブーとなっていました。というのも、話題にすれば結局自治体へ費用負担が求められるか、廃線議論となるため、あえて問題となるのを避けていた、というほうが正しいかもしれません。社会環境の変化で利用減少が続く中、行政からの支援を受けられない事業者は単独で対応せざるを得ず、利用増加が望めない以上は経費を削減するしかありませんでした。経費の削減はサービスダウンを招き、さらに利用客が減少するという悪循環に陥り、いよいよ限界となって存続が問題となるころには、運行本数も極端に少なくなって、もはや利用促進や改善が図れる能な状態ではなく、廃止以外に道はないという例が全国で発生していました。

また、経費削減を狙って鉄道を廃止しバスに転換しても、結局更なる利用減少を招き、もはやバス路線さえ維持できない地域も、北海道などを中心に見られるようになりました。

こうした例が全国で見られるようになったことから、国土交通大臣が「事業者任せ、地域任せではなく責任を持って地域公共交通を守る」と公言したように、地域交通の維持に対して国が一定の役割を果たすことを定めたのが今回の改正地域公共交通活性化再生法であり、再構築協議会です。

こうした制度は、廃線に向けてのハードルが下がったと捉える一方で、まだ利用のあるうちに国の資金を投入し、改善策を見出すことが可能になったとする考えもあり、具体的な事例がまだないだけにその評価が分かれているところです。

結局のところ、再構築協議会が開催されるとどうなるの?

改正された法律に基づく協議会は芸備線が初の適用例であり、今後どうなるかはまだはっきりとはわかりません。

法律に基づけば、今後国の機関である中国運輸局が広島県や沿線の市町村に聞き取り調査を行い、その結果に応じて早ければ年内にも第一回目の協議会が開催される見込みです。

【懐かしい備後落合・木次線】1986年備後落合駅・出雲坂根駅 急行ちどりも登場
芸備線は、木次線とともに山陰ー山陽の重要な連絡線として機能していた 広島ー米子には両線経由で急行『ちどり』が設定され、最盛期には夜行を含めて3往復が運転されていた 伯備線の電化や道路整備により、国鉄末期には1往復となり、1990年改正では芸備線内完結列車となっていた 動画には国鉄時代の木次線を行くキハ58の急行『ちどり』などが写っており、キハ47のほか、キハ52、キハ23などもう見られない車両が登場する

また、必要に応じて実証実験などが行われ、おおむね3年以内に路線の存続に関して結論が出されるものとみられています。

仮に存続となった場合でも、現在のようなJRの単独運営ではなくなる可能性は高いと思われ、只見線で見られたように上下分離式が採用されることも考えられます。しかし、沿線自治体の財政も厳しく、広島県は否定的ともとれるコメントを出しており、行方は分かりません。

なお、これまで鉄道廃止後の代替交通については、地元の事業者や自治体が行っているものがほとんどで、その後の過疎化で代替交通が維持できなくなる例や、利便性が大きく低下する事例が多数報告されていることから、法律改正とともに基本方針として「代替交通もJRが十分な協力を行うこと」が定められており、仮に廃線となった場合でも、運行に何らかの形でJRが参加するものと思われます。

再構築協議会の対象となる路線は? ローカル線はどうすればいいのか

再構築協議会の対象となるのは、現在のところ全国で50路線程度とみられていますが、芸備線の他に具体的にこの制度を利用する例は今のところ挙がっていません(よろしければ「廃線危機の輸送密度1000人未満の路線はどこ? 輸送密度の計算方法とは?」もご覧ください)。

ただし、この制度を利用しなくても、沿線自治体との間で協議の続けられている路線は多くあり、ローカル線の整理は待ったなしの状態になっています。また、JR東日本は直ちにこの制度を利用するつもりはないことを表明しています。

現在はローカル線と呼ばれる路線も、かつては地域の人たちの熱意と努力により、将来の地域の発展を願って作られたものがほとんどです。これらの路線は、当時の人々の税金や、中には私財を投げ打って建設されたものもあり、国民全体で所有する貴重な財産であるともいえます。

その財産を守るため、国鉄分割民営化の際には、本州3社には新幹線や大都市圏などの必ず儲かる路線(それも国鉄や国が作った路線)が割り振られ、三島会社には税金で経営安定基金が設けられ、ローカル線維持の原資となるようになるはずでした。さらに、運営の足かせとなる国鉄の借金は大半が国民負担とされ、JRは「国鉄の資産は引き継いで負債は国民に押し付けた」という状態でスタートを切ったわけです。

国鉄分割民営化に当たっては、「ローカル線はなくなりません」という約束が国民と交わされました。その他にも「会社間をまたぐ不便はありません」「ブルートレインなど長距離列車もなくなりません」などの文言が並んでおり、だからこそ国民は国鉄の借金を引き受けることに納得しなのです。しかし、この約束は残念ながらどれ一つ守られていません。情勢の変化、と言われればそれまででしょうが、片方が約束を守れないならば国民が借金を負担しているという枠組みもそろそろ見直してもいいのではないか、とも思いますが、いかがでしょうか(借金をJRが直接負担すれば、そのお金でローカル線の維持など簡単にできます。そもそも自分たちの借金なわけですから、JRが返すのが本来は当然なのですが)。

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