『カシオペア』を止めた迷惑撮り鉄が書類送検 逮捕とは違うの? 今後の処分はどうなる? 

社会
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線路侵入で『カシオペア』が緊急停止 鉄道営業法違反で2人を書類送検

栃木県警察は2023年12月5日、栃木県矢板市付近で線路内に侵入したとして、東京都と埼玉県に住む20代男性2人を11月30日付で書類送検したと発表しました。

この事件は2023年6月3日夕方、栃木県矢板市の東北本線で、上野発青森行きの臨時列車『カシオペア』が線路内に人を認めて緊急停止したもので、線路内で列車を撮影していた人物が現場から走り去る姿がSNSで拡散され、報道でも「撮り鉄の危険な行為で列車が止まる」と大々的に報道されていました。

「拡散希望」カシオペア紀行 緊急停止の瞬間!!!

その後の報道では栃木県警が捜査に乗り出していることなどが報じられていましたが、12月5日になってこのうち2人につき、鉄道営業法違反の疑いで書類送検したことがわかりました。

2人は容疑について認めているということで、警察は残る1人についても調べているということです。

逮捕はされておらず、処分は送検 これはどう違う?

さて、SNSなどでは早くもこの処置について話題が広がっており、危険行為や違反行為について法律に基づく対処がなされたことに対してはおおむね肯定する意見が多いようです。ただし、その内容については誤解されている方も多いように見受けられますので、書類送検とは何か、逮捕とは違うのか、その後どうなるのかなどについて少し整理したいと思います。なお、分かりやすさを優先するため専門の方から見れは厳密には違う、というところもあるかと思いますが、ある程度はご容赦ください。

まず、今回は警察による「逮捕」は行われていません。また、警察の逮捕自体は刑罰ではなく、逃げたり証拠を隠滅してその後の捜査や裁判に影響が出ないよう、捜査期間中に被疑者の身柄を拘束するものですので、逮捕の事実をもって罪を犯した、あるいは逮捕されなかったから罪は犯していない、というものではありません。逃亡の恐れがない場合や、被疑行為が明らかで証拠がすでにそろっている場合、被疑者がその行為を認めている場合などは、逮捕せず捜査が行われることがあります。

警察はただ捜査機関で、その行為があったことを強制力を持って調べるに過ぎません。実際にその人物を裁くかどうかを決めるのは、検察という機関です。警察は、原則として逮捕後48時間以内に被疑者を検察へ引き渡す必要があり、これが送検と呼ばれています。一方、逮捕されておらず任意で捜査が行われた場合は、身柄ではなく書面だけが検察へ通知されることがあり、これが一般的に「書類送検」と呼ばれるもので、今回の処遇はこのケースに当たります。

検察へ送検された迷惑撮り鉄 今後はどう処分される?

検察に送致されると、警察同様検察による捜査が行われます。検察は、最大で21日間の身柄の拘束を行い(拘留と言います)、その間に裁判となった場合に有罪となる証拠を収集し、最終的に起訴するかどうかを判断します。裁判にかけても有罪となるような証拠がないと判断された場合は、不起訴となり釈放されますが、起訴されれば裁判が終わるまで拘留が続くことが多くなっています。

また、書類だけの送検の場合も、検察は同様に違法性があるかどうか、どのような刑罰が適当かを捜査し、違法性がある場合は刑罰を科するのか、裁判をする必要があるのか、あるいは違法性はなく不起訴(処罰なし)とするのかを判断します。違法性があり処罰が必要となった場合でも、内容が軽微な場合や本人が認めて深く反省しているなどの事情が考慮されれば、裁判によらず罰金刑が科せられることもあります。

迷惑行為で列車を止めた場合、どれくらいの罪になる?

では、今回の事例ではどのくらいの罪となるのでしょうか? 容疑は「鉄道営業法違反」であり、鉄道営業法では線路への立ち入りについて次のように規定されています。

停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス

鉄道営業法第37条

鉄道営業法は1900年(明治33年)に制定されたもので、条文は文語体で表記されています。これを現代語に直せば「駅やその他鉄道敷地にみだりに立ち入ったものには80円以下の罰金刑とする」となります。

80円? と思われる方もいるのは当然ですが、先に述べた通り明治時代の法律なので、罰金額も当時の水準で決められています。このため、現在は罰金等臨時措置法が適用されて「1万円未満の罰金」と読み替えることになっています。

また、刑法には往来危険罪という決まりもあり、こちらが適用されれば2年以下の懲役となりますが、報道からは今回適用は見送られている模様です(もちろん、捜査の過程でこちらのほうが適当ということになる可能性もありますが)。従って、今回のケースでは鉄道営業法違反ということになり、最大で1万円の罰金刑というあたりで落ち着くと見られます。

社会に与える影響に比べ、あまりに罰金額が少ないと印象を持たれる方も多いと思いますが、法律である以上、規定にない刑罰を勝手に与えることはできません。この罰金額の少なさは抑止力としてはほとんど効果が期待できないことから、改正を望む声も上がっているようです。

ただし、金額の大小にかかわらず、罰金刑はれっきとした犯罪で、当然前科が付き、一生消えることはありません。前科がつけば犯罪人名簿にも登録され、職業や資格の取得に制限がつくこともあります。

迷惑行為は、軽い気持ちであっても一生を台無しにする取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。このような行為は、やはり厳に戒めるべきでしょう。

刑事責任の他に、民事責任を追及される可能性もある

なお、これまで述べた処置はすべて「刑事責任」と呼ばれるもので、法律違反に対して国家が私人に対して罰則を与える場合の話です。

列車を止めたことにより発生した損害は、「民事責任」としてこれとは別にJR東日本と本人で話し合う必要があります。

JR東日本がどこまで責任を追及するのか、あるいは損害が発生したのかなどは明らかにされていませんが、JR東日本は「撮影の際は、節度やマナーを守ってほしい」とコメントしているということです。

お断り

本稿は一般的な刑事事件の仕組みについて解説したものです。現時点では、線路への侵入者に対して何ら罪が確定したわけではなく、確定前に犯罪者として非難したり誹謗中傷を行うことは、逆に名誉棄損となりえます。捜査や社会的な罰は専門機関に任せ、我々はマナーを守り他人に迷惑をかけることないよう自分自身で心がけるにとどめてはいかがでしょうか。また、問題の動画を再掲載することも不必要に煽ることにつながりかねませんが、すでに報道でも何度も紹介され、今更控えることに意味はないと考え、掲載しました。

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