『ロシア』号が新型車両で毎日運転へ シベリア鉄道でダイヤ改正
シベリア鉄道は、7月に行うダイヤ改正の概要を発表しました。極東のウラジオストックからモスクワまでの約9,000㎞を結ぶシベリア鉄道の看板列車『ロシア』号は、現在の週3日の運行から毎日運行へと変更され、車両も新型車両に置き換えられます。もともとは毎日運行の列車でしたが、旧ソ連崩壊後は利用客が減少、1993年からは隔日運行となっていました。しかし、近年国内外からの観光客が増加、シーズンによっては予約の取りにくい状況が続いてたこともあり、シベリア鉄道の象徴である『ロシア』号のテコ入れとなったようです。
具体的には、先にも述べた通り週3日の運転を毎日運転化、約60あった停車駅を140まで増加させ、長距離だけでなく近距離利用もしやすくなります。地元利用はもちろん、航空機と組み合わせた観光客の「チョイ乗り」を期待するダイヤとなるようです。ただ、停車駅の増加に伴って所要時間は大幅に伸び、資料により異なるものの概ね15~20時間の所要増となる見込みです。まあ、そもそも7日間かかるわけですから、乗り通す人にとっては大した変化には感じないのかもしれませんが…。
これに加え、車両の置き換えも行われます。現在は2009年に投入された車両が使用されていますが、新たに2019~2020年製の新型車両が投入されます。特に、今回の新型車両は各車両にシャワー室が設置されることが報じられています。全区間を乗り通した多くの日本人の旅行記のうち、つらかったこととして「7日間シャワーがなかった」というものが多数挙げられており、風呂好き日本人としても車内サービスの向上を実感できそうです。
国内列車としては世界最長の『ロシア』号
一般的に言われるシベリア鉄道とは、ロシアの首都モスクワから太平洋に面する極東ウラジオストックまで、広大なロシアの国土を東西に結ぶ鉄道です。その営業距離は約9,300㎞で、世界最長の鉄道とも言われています。
『ロシア』号はこのシベリア鉄道全線を走破する看板列車で、モスクワのヤロスラフスキー駅 とウラジオストック駅を、6泊7日をかけて運行され、世界で最も長い距離を走る国内列車となっています。編成は日によって異なる場合もあるようですが、概ね10~16両程度、現在は2等級製で食堂車も連結されています。出発日によっては途中駅まで(から)の車両や、北朝鮮・中国からの車両も連結されて運行されます。ちなみに、世界最長距離を走る列車はこの北朝鮮・ピョンヤン―モスクワを結ぶ国際列車で、その走行距離は実に10,214㎞、ピョンヤン行きは9泊10日をかけ運行されます。
かつては駅に停車するたびに物売りが多く集まり、乗客はロシアらしい食べ物を買うことができたそうですが、現在は駅構内の物販が厳しく取り締まられているという情報もあります。また、食堂車以外での飲酒が禁止されたという情報もあり、少し古い方が体験したシベリア鉄道とは少し様子が異なる部分もあるようです。
シベリア鉄道は、シベリアの開発と、ヨーロッパ―極東を結ぶ重要なルートとして、古く帝政ロシア時代の1850年代からその構想が持ち上がっていました。幾度か計画が立ち上がっては頓挫を繰り返したもの、1891年にフランスの援助を得て着工しました。途中ウラル川やアムール川、オビ川などの大河、琵琶湖の46倍もの面積があるバイカル湖などの難所が立ちはだかりましたが、1916年全線が完成しました。特徴的だったのは1520㎜という広軌を採用したことで、のちの共産圏を除くとヨーロッパやアジア諸国とは陸続きながら、互換性のないものとなりました。
シベリア鉄道の開通は沿線地域に劇的な変化をもたらし、それまで未開の大地だったシベリアは一大農業地帯となりました。政情不安や国際情勢に振り回されながらも、ソビエト連邦成立後は経済面だけでなく、軍事的にも大きな役割を果たします。1966年には、全線を走破する『ロシア』号が運転を開始、シベリア鉄道の全盛期を迎えます。その後は航空機の発達により、旅客輸送のシェアは低下しましたが、貨物輸送では依然として大きな役割を果たしてきました。
大きな転機が訪れたのは1991年のソ連崩壊で、それ以前のペレストロイカ失敗から続く経済の混乱によりシベリア鉄道の輸送力は低下します。 看板列車『ロシア』号も毎日運転から隔日運行となり、設備更新も滞り、乗客数は激減します。しかし2000代以降はロシアの経済発展に伴い近代化が進められ、2002年には73年かけた複線化が完成しました。日本の企業も参加したプロジェクトも進められ、さらなる輸送力増強が進められています。