JR西日本が2019-2020年の大晦日終夜運転概要を発表 近畿地区は規模・本数とも縮小に 働き方改革も一因か

2019-2020終夜運転は規模縮小 琵琶湖線など運行なし

JR西日本は、2019年の大晦日から2020年元旦にかけての終夜運転の概要を発表しました。例の働き方改革の影響を受けてか、例年に比べ区間、規模とも縮小されているのが特徴です。

 

発表によると、昨シーズンまで終夜運転を行っていたJR琵琶湖線(京都-草津)、JR宝塚線(尼崎-宝塚)、阪和線(天王寺-鳳)、万葉まほろば線(桜井-高田)について、今年は終夜運行を取りやめ、終電までの運転となる他、奈良線、大和路線、学研都市線、JR東西線についても、午前3時ごろまでの運転となります。

運転を行う区間についても、本数が削減され、例えばJR京都線、神戸線は京都-高槻間が40分間隔、高槻-西明石間が20分間隔(ただし3時台以降は40分間隔)、大阪環状線は天王寺~京橋~大阪~西九条間が10~20分間隔、西九条~新今宮~天王寺間はその半数程度となります。並行私鉄のある京阪神やその周辺はともかく、JR琵琶湖線や、初詣の人出が全国5本の指に入る伏見稲荷大社を抱える奈良線でも、終夜運転が休止となります。

 

今のところその他の会社から終夜運転の発表はなく、この動きに追従するかどうかはわかりません。JR西日本も、運転を取りやめる線区があるせいか、昨年より2週間程度早い発表です。

 

JR西日本は、働き方改革と人材確保を目的に、先日京阪神の終電の大幅な繰り上げを伴うダイヤ改正を行うことを発表したばかりです。今回の縮小について公式な発表はありません。正月という一般に休みの期間に、自社の社員も休みやすくする、ということなんでしょうか。

大晦日の終夜運転は、現在縮小傾向にあり、関東でも東急電鉄や西武鉄道が1990年代後半に休止したほか、JR北海道やJR東海、名古屋鉄道などでも2000代以降休止する例が増えています。理由としては利用の低迷や採算性があげられています。終夜運転ともなると通常の賃金に加え深夜、休日手当なども加算され、人件費は通常以上に高騰しますから、採算という点ではやむを得ない面もあります。

鉄道の持つ社会的使命と影響

一方、鉄道は社会性の高い機関です。社会の需要がある以上、それに応えるのが公共交通機関の使命でもあります。もちろん、鉄道会社で働く人も休みたいのは当然です。その両者のバランスは実に難しいところですが、最終的には労働にふさわしい賃金を払う意以外に解決策はないでしょう。そうなると採算性はさらに悪化することが容易に想像できます。それを受け入れられないならば、社会性を放棄して、労働者の立場、採算性を維持することが第一ということになります。

 

世界の大都市では、真夜中でも交通機関が提供されていることが普通、とまでは言いませんが、提供されているケースも多くなっています。ニューヨークの地下鉄が24時間運行なのは有名な話です。また、鉄道である必要はありません。ヨーロッパの大都市では、日中と路線を変えて深夜バスが営業している例もたくさんあります。

日本では、公共交通機関と言えどその存在を「採算性」で判断します。儲からなければダメ、というわけです。一方、欧米では「必要性」で判断します(もちろん費用対効果は吟味されます)。深夜交通でもローカル線でも、必要とする人がいて、存在したほうが社会的にプラスであると判断されれば、社会のインフラの一つとして運行が維持されます。本来鉄道やバスをはじめとする交通機関は、電気やガス、水道、道路、インターネットといった社会基盤に組み込んで考えるべきものだと思うのですが、日本では残念ながら直接収支だけで判断されることが多くなっています。

 

労働者が休みたいのは当然の権利ですし、民間会社である以上採算性も無視はできません。しかし、そればかりが先行して、社会全体が委縮してしまわないか、少し気になるところではあります。

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