『奥出雲おろち号』がラストラン 後継車両は? 存続に揺れる木次線の観光活性化どうなる

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『奥出雲おろち号』がラストラン 老朽化で26年の歴史に幕

木次線で運行されていた『奥出雲おろち号』が、老朽化を理由に運行を終了しました。

最後の運行になったのは2023年11月23日で、沿線には鉄道ファンはもちろん地元の住民や関係者など多数が集まり、列車を見送りました。

運行を終了した『奥出雲おろち号』は木次駅構内で車両展示が行われ、その日のうちに米子駅へと回送されました。

『奥出雲おろち号』の運行は26年間、利用客数は延べ30万人に及び、利用不振にあえぐ木次線だけでなく、島根県にとって重要な観光資源となっていただけに、廃止を惜しむ声はあちこちから上がっている模様です。

『奥出雲おろち号』とは DE10+12系改造の木次線観光列車

『奥出雲おろち号』は、木次線の宍道(多客期は出雲市)―備後落合で運行されていた列車で、1998年に運転を開始しました。

運行開始当初からDE10 1161号機に12系客車2両の3両編成で、いずれも白と青をベースとした専用塗装が施されていました。また、12系客車のうち1両(スハフ13 801)はトロッコ列車構造となり、窓ガラスがすべて撤去されていました。もう1両(スハフ12 801)は控車両として連結され、トロッコ列車と同じ席番の座席が使用できるようになっていましたが、シーズンによっては2両とも別車両として販売されたこともありました。

『奥出雲おろち号』12系客車
『奥出雲おろち号』用に改造された12系客車 手前からスハフ13 801とスハフ12 801 手前のスハフ13はトロッコ仕様になって窓ガラスは撤去され、推進運転に備えて車掌スペースは運転台となった Wikipedia(奥出雲おろち号)より @W0746203-1

機回しの手間を省くため、スハフ13の車掌室には運転台が設置され、下り列車となる備後落合行きはスイッチバック区間を除き、全区間とも推進運転でした。

出雲坂根駅に停車する『奥出雲おろち号』
出雲坂根駅で交換する『奥出雲おろち号』と普通列車 交換設備はあるが、『奥出雲おろち号』の廃止でこの駅で列車が交換する光景は、現行ダイヤでは見納めとなる 撮影:鉄道模型モール制作室

牽引機には予備としてDE15 2558が用意されていました。DE15は本来は両端にラッセル車両を配置した除雪用機関車ですが、冬以外は機関車単独での使用が設計段階から想定されており、DE10同様の専用色に塗装され夏には除雪ヘッド取付装置をつけたまま『奥出雲おろち号』に、冬には一般色の除雪ヘッドを連結して除雪列車として運用されていました。

ただ、温暖化による降雪量の減少や、機関車自体の老朽化、後継車両の登場などにより、DE15 2558は『奥出雲おろち号』より一足早く2021年12月に廃車となっています。

DE15 おろち号塗装
2021年までは牽引機としてDE15も使用された 本来は除雪用だが、冬以外は両端のラッセルヘッドを外して入換やローカル輸送用として使用できる設計となっているが、前後の形式プレート位置にラッセルヘッド接続装置はついたまま Wikipedia(国鉄DE15形ディーゼル機関車)より @切干大根 

残された車両も、12系客車は1970年(昭和45年)から製造されており、特に控車のスハフ12 801は初年製造ロットのスハフ12 40からの改造で車齢が53年に達すること、牽引のDE10 1161も初配置が1972年(昭和47年)と老朽化が進んでいることから、2021年の時点で2023年度の運行をもって廃止となることが発表されていました。

『奥出雲おろち号』用の車両はどうなる? 木次線観光列車の後継車両は?

JR西日本によると、『奥出雲おろち号』用の車両のうち12系客車は廃車となり、DE10は事業用として使用されるということです。これにより、600両以上が製造された12系客車もいよいよ残りが18両となり、JR西日本には原型の5両のみとなります。

また、木次線の観光列車としては、キハ47形改造の『あめつち』が投入される予定となっています。

ただし、普通車だった『奥出雲おろち号』に対し、『あめつち』は車内での飲食を想定したグリーン車で、「気軽に乗れる」から「高価な旅」へと性格が変わってしまうため、集客に影響を及ぼす可能性があります。

キハ47形『あめつち』
『奥出雲おろち号』の後継と決まった『あめつち』 こちらはキロ47の形式が示す通り、2両ともグリーン車となっている 機関出力の関係から、運行区間も出雲横田駅までに短縮される予定 Wikipedia(あめつち)より @MaedaAkihiko

また、JR西日本よると、勾配と車両出力の関係から、木次線のハイライトともいえるスイッチバック区間には乗り入れず、宍道ー出雲横田での運行となる予定です。このため、沿線の市町からは出雲横田駅での接続列車について考慮してほしいという意見が上がっています。

沿線市町では、ひとまず観光列車の存続という点でJR西日本と合意しましたが、列車のスタイルや性格、そして運行区間までが変わってしまうため、果たしてこれまでのような集客効果が発揮できるかは相当に疑問であると言わざるを得ません。

『奥出雲おろち号』は、多い年には年間で2万人の利用があり、コロナ禍を除くと平均しても年間で1万人という、大きな集客力を持っていました。木次線のうちでも利用の少ない出雲横田―備後落合では、2021年度で輸送密度が35人しかなく、このままでは存続議論が加速する恐れもあります。

また、「汽車旅」というスタイルも集客には大きな影響を与える見込みで、2015年度で運行を終了した『流氷ノロッコ号』は1列車当たり500~600人の乗客がありましたが、後継となったキハ54形の『流氷物語号』は1列車当たりの利用客は200~300人に留まっており、木次線でも同様の現象が起きるのではないかと危惧されるところです。

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