分かりやすく簡単に解説 電車に使われる「VVVFインバーター」って何? 抵抗制御、チョッパ制御との違いは?

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鉄道車両の制御 VVVF、チョッパ制御、抵抗制御

鉄道車両の用語としてすっかり定着したインバーター。「インバーター制御」という言葉は、鉄道界だけではなく電気製品に当たり前のようについてきます。ですが、インバーター制御ってどういう意味なんでしょう? ああ、なんかあの独特の音が出るやつね、というくらいの認識の方も多いのではないでしょうか。

せっかくですから、その仕組みと、従来の抵抗制御、チョッパ制御についても見てみましょう。

なお、わかりやすさを優先するため、敢えて表現を変えたり省略したりしますので、識者や専門家の方からが見れば「それは違う」という点があるかもしれませんが、ご了承ください。

長い間主流だった抵抗制御、直流モーター

電気には直流、交流の2種類があります。このうち、発電所で発電され、家庭のコンセントへ流れているのは、交流です。このため、コンセントを電源として使う身の回りの家庭用電気製品は、ほとんど全てが交流モーターを使用しています。

ですが電車に関しては、19世紀末に登場して以来長い間直流モーターを使用してきました。直流モーターは、電圧、電流を変化されせば回転数が変化するため、速度を頻繁に制御する電車に適していたのです。このため、発電所で発電した交流電源を、わざわざ地上の変電所で直流に変えて架線に供給する直流電化、直流モーターの組み合わせが標準となりました。

しかし、直流モーターにも欠点はありました。モーター内に消耗品があり、常に点検、交換が必要でした。モーター搭載位置も制限され、車内床にも点検口が設けられていました。

直流モーターを採用した117系 車内には点検口ある
Wikipediaより

一方、交流モーターは、電圧や電流を変えても回転数は変化しません。回転数を変化させる=速度を変えるためには周波数を変える必要があります。かつては、鉄道車両の限られたスペースで周波数を変化させる装置を搭載することが困難で、またできたとしても非常に高価であったことから、電車への採用は見送られてきました。

また、送電ロスが少なく、交流→直流と変換する地上設備が不要で、安上がりな交流電化についての研究も進みました。しかしせっかく交流電化しても交流モーターの搭載のめどがつかず、車両側で架線から取り入れた交流電源を直流電源に変え、直流モーターを回す方式がとられました。車両は高価になりますが、地方路線では車両数も少ないため、戦後電化が進んだ地方路線には交流電化、直流モーターの組み合わせが多くなりました。

モーターに流す電力量を制御する-抵抗制御とチョッパ制御

さて、こうして鉄道車両には直流モーターが採用され続けたわけですが、モーターにかかる電力を制御する方法として、長いあいだ抵抗制御が用いられてきました。これは、最終的に必要な電力となるよう電気抵抗の設置された回路を繋ぎ変える仕組みです。たくさん電気抵抗を通るよう回路を繋げは、モーターにかかる電力が少なくなって速度は落ち、電気抵抗を通らない回路を繋げば、電力が増え速度が上がります。

抵抗制御を採用した103系 抵抗器を備えるモハ103からはかなりの排熱があった
Wikipediaより

この方式は仕組みや装置としては単純ですが、不必要な電力を熱として排出してしまう点が欠点でした。最終的に得られる力にかかわらず、常に一定の電力を消費してしまうのです。1970年代以降、オイルショックをきっかけに省エネが叫ばれるようになると、抵抗制御に代わる制御方式が求められるようになります。密閉された空間を走る地下鉄では、排出する熱も問題になりました。

そして、抵抗制御に代わって用いられたのが、チョッパ制御(サイリスタ制御)でした。技術自体は1960年代からありましたが、本格採用されるようになったのはやはりオイルショック後でした。

チョッパ制御を採用した201系 省エネ電車として期待されたが、コストの面から201系と地下鉄仕様の203系の採用のみに留まり、205系は抵抗制御となった 
Wikipediaより

簡単に説明すると、チョッパ装置の中では1秒間に数線~数万回という単位で電気回路スイッチのON、OFFが繰り返され、この時間を調整することによってモーターにかかる電力を調整する仕組みで、電気を切り刻む(チョップ)ことから名付けられました。回路がOFFの間は電気が流れないので、必要以上に電力を消費することはありません。

1970年代半ば~80年代半ばにかけて、国鉄や大手私鉄、地下鉄を中心に普及しましたが、チョッパ装置自体が重く、消費電力の削減を打ち消してしまうこと、装置が高価でメンテナンスも難しいことから、排熱問題に悩む地下鉄を除くと、概ね各社1形式を採用した程度で終了してしまいました。国鉄では省エネ電車として期待を込めて201系を製造しましたが、続く205系ではコスト削減のため抵抗制御が採用されました。

交流モーターで省コスト、省エネルギーを達成したインバーター制御

1980年代も半ばになると、半導体を用いた集積回路が実用化されるようになります。

これにより、電源が交流、直流のいずれかを問わず、自由な周波数の交流を取り出すことが容易になりました。これがインバーター装置で、周波数を変えることにより交流モーターの回転数の制御も容易にできるようになります。交流モーターは、直流モーターに比べメンテナンス性に優れ、広く普及していることから調達コストも安くなります。インバーター装置のおかげで常に最適な回転数、消費電力が保たれることから、より省エネルギーを達成することができました。

鉄道においては、特にこの制御方式をVVVF(Variable Voltage Variable Frequency 可変電圧可変周波数)制御と呼び、日本で最初に営業運転に導入されたのは、1982年(昭和57年)の熊本市電8200型でした。1990年代以降は制御方式の主流となり、現在に至るまで採用されています。

日本初のVVVFインバーター制御となった熊本市電8200形 路面電車には地上側に電気設備が少なく、ノイズの影響も少ないためいち早く導入に踏み切った
Wikipediaより

初期のVVVF制御では、使用する周波数の関係上、周波数変換のノイズが独特の作動音を発していました。メーカー、ロットによりそれぞれ作動音が異なり、これがVVVF制御の大きな特徴になっていました。

また、特定の周波数が地上に設置された装置に影響を及ぼす可能性があることから、導入当初は各社とも入念な試運転を行い、設備に影響がないかを確認していました。

一方で一部には騒音として認識されることもあり、VVVF制御の欠点となっていましたが、2000年代以降は技術開発によって騒音問題はほぼ解決しました。現在は、初期車の機器更新も進んでいます。

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