函館本線 貨物列車存続のための協議開始か 新幹線開業後の函館ー長万部

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函館本線の函館―長万部 鉄道としての存続には否定的な沿線自治体が多数

2022年9月12日付の朝日新聞によると、新幹線開業後にJR北海道からの経営分離が予定されている函館本線函館ー長万部について、貨物列車存続のため国土交通省が北海道、JR北海道、JR貨物と協議を始めることがわかりました。

北海道新幹線は、2030年度の開業を目指して新函館北斗ー札幌で工事が進められていますが、新幹線開業と同時に函館本線の函館ー小樽は並行在来線としてJR北海道から経営分離されることとなっています。このうち、長万部ー小樽については、2022年8月に沿線自治体が廃止・バス転換で合意。残る函館ー長万部についても、2022年8月31日に開かれた協議会において、新幹線に接続する函館ー新函館北斗以外は、鉄道での存続を断念する声が大勢を占めていました。

なお、並行在来線問題は「新幹線ができるとどうして並行在来線は廃止? 並行在来線問題とは」にも書いていますので、よろしければご覧ください。

北海道新幹線延伸で変わる函館本線の役割 貨物列車をどうする?

函館本線は、函館と旭川を結ぶ423.1㎞の路線です。北海道で一番最初に開業した区間を含み、函館と札幌を結ぶ主要な路線のひとつとなっています。

しかし、長万部―札幌については、沿線人口の違いなどから複線化や線形改良がおこなわれた室蘭本線に対し、函館本線は急峻な山越えがあることから、次第に幹線としての役割を室蘭本線へと譲ることとなり、1986年(昭和61年)改正で通称「山線」と呼ばれるこの区間を走る定期優等列車が全廃。以降は細々と地域輸送が行われるのみとなっています。

キハ82 特急北海
函館―札幌を通称「山線」経由で結んだ特急『北海』 1967年(昭和42年)のダイヤ改正で登場、函館本線の代表列車として活躍、最盛期には2往復が存在したが、1986年改正で廃止となった Wikipediaより
14系急行『ニセコ』
14系客車による急行『ニセコ』 函館本線では特急『北海』を補完する役割を持ち、最盛期には釧路まで乗り入れていたこともあった 先頭には荷物・郵便車が連結されており、本州との間の荷物輸送でも活躍した 1986年改正で『北海』とともに廃止されたが、1993年夏臨までは臨時列車として運行されていた Wikipediaより

一方、函館―長万部は、函館と札幌を結ぶ大動脈として、室蘭本線と直通する特急列車が行き交うほか、本州と北海道を結ぶ多数の貨物列車が設定されています。

北海道新幹線の札幌延伸に伴い、函館本線は函館―小樽が並行在来線としてJR北海道から経営分離されることとなっていますが、こうした経緯もあり、長万部―小樽は早々と廃止・バス転換で決着しました。そして今問題となっているのが、残る函館―長万部についての存続問題です。

はこだてライナー
北海道新幹線は函館駅には乗り入れず、渡島大野駅から改称された新函館北斗駅へ乗り入れたため、函館―新函館北斗には新幹線線接続列車として『はこだてライナー』が設定されている 北海道新幹線札幌延伸後も、この区間は鉄道として維持される公算が大きい Wikipediaより

現在運行されている優等列車は、新幹線開業後は廃止される見通しであることから、この区間についても地域輸送のみとなる見込みです。優等列車に比べ地域輸送の割合は小さく、採算が合わないことは明白です。

函館本線鹿部駅
鹿部駅に進入する函館本線の普通列車 ほぼ毎時1本運転される特急『北斗』に対し、鹿部駅に停車する普通列車は2022年現在上下あわせて12本  下り列車は5本しかなく、午前中は1本だけという状態 函館―長万部の輸送密度は、コロナ禍前の2019年度で3,319人となっており、客単価の高い特急列車がなくなればたちまち赤字ローカル線となってしまうだろう 沿線自治体の費用負担は避けられないが、地元には直接利益を及ぼさない貨物列車のためとなれば、存続には否定的になることも当然といえば当然 Wikipediaより

しかし、この区間は青函トンネルへと続く、本州と北海道の物流の大動脈となっており、廃線となると北海道の経済にも大きな影響が出ることが予想されます。このため、函館―長万部については、これまでの地域輸送のために沿線自治体が在来線を維持するという構図ではなく、広域的な物流を確保するためより大きな範囲で費用を負担することで路線を維持することが求められます。

津軽海峡線の貨物列車
2022年改正では、青函トンネルには不定期を含め1日上下50本の貨物列車が設定されている 北海道からの農産物輸送はもちろん、北海道向けの物流としても欠かせない存在 Wikipediaより

しかし、今までこうした枠組みで並行在来線が維持された例はありません。並行在来線は、あくまで沿線自治体が自らが利益を得る範囲で費用を負担するという構造上、自分の街を素通りする貨物列車のために赤字確実な鉄道を維持する道理はありません。このため、函館本線の協議においても、早々と鉄道での存続をあきらめる声が上がっているわけです。

函館本線貨物列車の存続は、北海道だけでなく日本全体にも影響が

こうした状況を受け、北海道の農協連合会であるホクレンは、「貨物列車の維持は北海道全てに関係することで、また国や消費者にも大きな影響が出る問題である」として、貨物列車の運行を維持するために国に働き掛けていることを明らかにしました。また、北海道の鈴木直道知事も、「全国的な貨物ネットワークを維持するべく国が中心となって検討を行ない、地域レベルで協議する渡島ブロック会議とは別に議論を進める必要がある」としていました。

そうした中、国土交通省は今後国、北海道、JR北海道、JR貨物を交えた協議会の開催を検討していることが報じられました。国がこうした呼びかけを行うことは極めて異例ですが、それだけ北海道と本州との物流が、日本経済の中で大きな影響力を持っているということにもなります。

DD51牽引時代の石北本線を走るいわゆる「たまねぎ列車」 北見市周辺で収穫されたたまねぎを中心とした農産物を出荷するために運転される 北海道はたまねぎの生産シェアの60%以上を占め、その約半数が北見市周辺がという一大生産地で、出荷時期に合わせて毎年8月~4月ごろまで運行される 石北本線の貨物シェアはわずか20%に過ぎないものの、冬でも安定運行できる鉄道貨物の存在意義は大きく、DD51の老朽化とともに廃止される予定だったが、DF200に置き換えられて1往復が存続している なお、トラックで出荷された北見産の農産物は、旭川か札幌で貨物列車に積み替えられ首都圏や関西を目指す場合も多い Wikipediaより

北海道産の農産物のうち、30%が鉄道で運ばれているというデータもあり、函館本線の存続は北海道だけではなく日本全体の農産物輸送にも強い影響が出ることが考えられます。当初はトラック+フェリー輸送への代替も考えられていましたが、コストの増加は避けられず、ただでさえ人手不足が深刻な状況では、トラックドライバーが集まらない可能性も指摘されています。仮に確保できたとしても、さらにコストの上昇が発生すれば、北海道産の農産物の価格上昇となり、北海道の農業競争力の低下も懸念され、そうなると日本の農業そのものが立ち行かなくなる可能性もあります。

函館本線の存続問題は、北海道の沿線地域だけの問題ではなく、日本の国土をどう活用し、将来の日本の食料をいかに確保するかという、日本人全員にかかわる問題です。

これまでは主導者が不在で、下手に存続問題を提起すると費用負担を求められる恐れがあったため、貨物輸送の問題は誰もがあえて触れてこなかったという経緯があります。しかし、国土の活用は本来国という一番大きな組織が率先して考えるものだと思います。

北海道新幹線の開業は8年後に迫っています。函館本線の貨物列車の存続について、それまでに結論を出す必要があります。

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