TGV新型車両 TGV M 「アヴェリア・ホライズン」が公開
フランスに本拠を置く世界大手の鉄道車両メーカーであるアルストム社Alstomが2022年9月9日、フランス国鉄SNCFから受注していた高速鉄道用の新型車両「TGV M」を公開しました。
「TGV M」は、アルストム社とフランス国鉄の間で2015年頃から計画され、2016年から正式に開発が進められていた車両で、TGV車両としては第4世代となります。また、アルストム社の高速鉄道車両には「Averia」のブランド名がつけられていますが、TGV Mには「Avelia Horizon(アヴェリア・ホライズン)」という名称がつけられています。
2018年には、国内線仕様の10両編成×10本と、国際線仕様15両の合計115両がフランス国鉄からアルストム社に発注され、今回公開されたのはその先行試作車となっています。2022年8月にはさらに10編成100両の追加発注が行われていました。
TGV M「Avelia Horizon」とはどんな車両 今までの車両とは違う? 最高速度は?
今回公開されたTGV Mは、1995年から製造されているTGV Duplexと同様、客室部はオール2階建て構造を採用しています。客室部はすべて付随車で、両端に機関車を連結する動力集中式である点も、これまでのTGVと同様になっています。
なお、日本のE4系が運用を終了したことにより、製造元のアルストム社のサイトなどでは「世界で唯一の2階建て高速列車」と表記されています。
最高速度は350㎞/hとされていますが、現在TGVの営業最高速度は320㎞/hとなっていて、将来のスピードアップの余地を残しつつ、若干の余裕を持たせた設計となっている模様です。過去にはTGVは360㎞/h運転へ向けての準備をしていると報じられていましたが、すでにヨーロッパでは最高速度向上には消極的であるため、この性能が営業運転で発揮されるかはわかりません(「高速鉄道は何㎞/hまで速くなる? すでに欧州では高速化から汎用性へ」もよろしければご覧ください)。
輸送力増強を図りつつ、開発コストやメンテナンスにかかる費用を削減するため、TGV Duplexでは1編成当たり機関車2両+客車8両の固定編成でしたが、これを需要に合わせて客車7~9両の可変編成とされています。また、1等車や2等車の変更、自転車スペースやラゲッジスペースの設置や撤去も容易な構造となっています。車体構造の見直しなどにより、TGV Duplexの最大座席定員634人に対し、TGV M「Avelia Horizon」では740名となっています。
これまでのTGVと異なる点としては、コスト削減のため、国内向けTGVではなく海外向け高速鉄道をベースに開発されており、これにより20%ほどの調達コストを削減しているということです。
環境面でも配慮され、構造材の97%がリサイクル可能となっている他、二酸化炭素排出量も32%削減されています。
TGV M「Avelia Horizon」 営業運転はいつから?
アルストム社の発表によれば、TGV M「Avelia Horizon」は今後チェコにある実験線で、時速200㎞/h程度の試運転を2022年末まで行うということです。
また、座席の仕様の検討や、バリアフリープロセスの見直しも平行して行われるほか、供食設備も一新され、バー車両は新規設計されます。
これらの検証を行い、TGV M「Avelia Horizon」は2024年のパリオリンピック開催に先立って2023年から営業運転を行う予定です。