高速鉄道は何㎞/hまで速くなる? すでに欧州では高速化から汎用性へ  

新幹線
スポンサーリンク

アマゾン タイムセール

人気の商品が毎日登場。

タイムセール実施中

スポンサーリンク

アマゾン タイムセール

人気の商品が毎日登場。

タイムセール実施中

E956形「アルファX(エックス)」公開

宮城県のJR東日本新幹線総合車両センターで2019年10月26日、次世代新幹線の実験車両となるE956形、通称「アルファX(エックス)」が公開されました。報道向けには公開されていましたが、一般市民向けはこれが初公開ということです。

仙台駅に停車するE956形、通称「アルファX(エックス)」
Wkipediaより

この「アルファX」は、将来の最高速度360㎞/hでの営業運転を目指し、2019年5月から試験走行を行っています。試験走行は2022年3月までの予定で、北海道新幹線札幌開業を見据え、新幹線高速化のためのデータが収集される見込みです。車体自体は、さらなる高速化に対応するため最高速度400㎞/hに耐えられるよう設計されています。

2019年現在、世界の鉄道の営業速度ランキング(鉄輪式に限る)1位は、中国の京滬高速鉄道で350㎞/h。ただし、これは設計速度を超えているともいわれ、いつまで続くかは未知数です。2位はフランスTGV、ドイツICE、イギリス・フランス・ベルギーのユーロスター、そして東北新幹線の320㎞/h、次いでスペインAVEの310㎞/hと続きます。従って、360㎞/h運転が実現すれば、一躍世界トップに躍り出ることになります。

世界の高速鉄道 高速化の歴史

鉄道の高速化は、その開業時からずっと行われてきたといっても過言ではありません。より早く、より遠くへという要求は、時代を問わずずっとなされてきました。

1964年(昭和39年)、東海道新幹線が開業、当初は最高速度160㎞/hで慣らし運転を行った後、翌年より最高速度210㎞/hでの運転を開始しました。鉄道の営業速度が200㎞/hを超えたのはこれが初めてで、すでにヨーロッパでは鉄道斜陽化が叫ばれていた中、高速鉄道という新たなジャンルを切り開いたのが、日本の新幹線でした。

新幹線に刺激され、ヨーロッパを中心に鉄道の高速化が図られることになります。いち早く実現させたのがフランスのTGVで、1981年に最高速度260㎞/hで営業を開始します。

パリ・モンパルナス駅に停車するフランスTGV
Wikipedia

1990年代になると、フランスTGVはもちろん、ドイツやICEやイタリアのETRなど、ヨーロッパは高速鉄道の開業ラッシュを迎えます。高速化競争は熾烈なものとなり、90年代前半には概ね250~300㎞/hでの営業運転が主流となりました。日本においても、1991年には東海道新幹線『のぞみ』が270㎞/hでデビュー、世界の高速化に追従します。1993年にはTGVが300㎞/h運転を開始、そして遅れること4年の1997年改正で500系『のぞみ』が最高速度300㎞/hで運転を始め、日本も300㎞/h時代へと突入するとともに、TGVと並んで再び世界のトップに立ちました。

ケルン中央駅に停車中のドイツICE3
Wikipediaより

21世紀に入ると、いよいよ300㎞/hを超えた営業運転が始まります。

2007年、フランスとドイツを結ぶネットワークの一つであるLGV(フランス高速鉄道)東ヨーロッパ線が開業し、TGVとICEがこの区間を320㎞/hで運行するようになり、再びスピード世界一の座はヨーロッパ単独となります。しかし3年後の2010年には中国の京滬高速鉄道が最高速度350㎞/hで開業し、世界のトップに立ちました(事故やトラブルを受け、2011年から最高速度を300㎞/hに落としていましたが、2017年から350㎞/hを再開)。この間、東北新幹線でも2013年より、E5系により320㎞/h運転を行っています。

最高速度の競争はきりがないように思えます。このまま時代が進めば、数年後には400㎞/h台の競争になっているのでしょうか。また、将来的には500km/h程度での運行が行われるようになるのでしょうか。

これ以上の高速化は難しい 空転して速度は上がらない

答えは、「多分行われない」でしょう。その主な理由は、次の2点です。

1つ目は、技術的な問題です。

鉄道は、鉄のレールの上を鉄の車輪で走ります。このため、走行中に発生する抵抗はわずかなもので、鉄道は他の交通機関に比べて省エネルギーで効率的な輸送が可能です。しかし、高速走行の場合は、この抵抗の少なさがマイナス要因となります。

抵抗が少ないということは、地面との摩擦が少ないということです。ある速度に達してしまうと、回転運動を車輪に伝えてもうまく地面を蹴ることができず空転を起こし、速度が上がらくなります。営業用車両ではこの速度は意外と低く、400㎞/h程度からこの現象が始まるとされています。空転を防ぐためには車体を重くし摩擦力を強める必要がありますが、車体が重い分線路に与えるダメージや騒音は大きくなり、対策にコストが必要です。また、消費するエネルギーは増加し、省エネルギーという鉄道の特性は失われることになります。また、コストや消費エネルギーの増加は、結局運賃という形で利用者の負担となります。

鉄輪式世界最高速度樹立に挑む第4402特別編成 高速鉄道を輸出産業として捉えているフランスらしく、技術アピールのデモンストレーションの色合いが強い
Wikipediaより

2004年にTGVが鉄輪式としては世界最高の574.8㎞/hを達成しましたが、この実験は特別に架線電圧を上昇させ、出力を上げ車輪径を大きくした特別編成を組み、空転防止のため重りを積み込んで行われました。つまり技術アピールのためのデモンストレーションとして行われたもので、採算や実用性は初めから度外視されていたものでした。

現状以上に速度を上げるためには、線路の上を走る必要はなく、浮上式リニアや飛行機に任せた方がより経済的です。

時間短縮効果はすでに使い切っている

2つ目は、金銭的な問題です。

90年代から2000年代初頭にかけて、ヨーロッパを始め世界各国で高速鉄道の建設が進みました。その結果、建設費に見合う時間短縮効果が得られる区間がほとんどなくなり、高速鉄道が新規に建設されるペースは近年大きく落ち込みました。

既存の開業区間についても、例え300㎞/hの最高速度を350㎞/hにしたところで、所要時間の短縮はわずかで、その割に対策コストが増加することから、費用対効果の面から速度向上には消極的になってきたのです。その代わり、2010年代以降は、最高速度を抑える代わりに、路線によって車両や線路に特別な対策が必要のない「汎用性」が重要なテーマになりつつあり、それに対応した車両が続々と登場しています。

2017年から営業運転についているドイツICE4 最高速度は250㎞/hに抑えられた半面、投入線区を選ばない編成の柔軟さに対応するなど、汎用化が進められている 
Wikipediaより

以上の理由から、今の技術を基準にすると、現在以上の鉄道の高速化は不可能ではないものの、費用対効果の面からは否定的な結論にたどり着きます。今後は速度だけでなく、より省エネルギー、汎用性が求められるようになるのではないでしょうか。

もっとも、これは現在の世相が変わらないという前提で書いています。例えば空前の好景気の到来で、1分でも早く着くことが求められるとか、電気がタダ同然で得られるようになるとか、何か思考の根拠を根本から変える変化があれば、また変わるかもしれませんね。

タイトルとURLをコピーしました