長崎電気軌道が運賃改定を申請 10月にも140円へ
長崎電気軌道は2021年6月23日、大人普通運賃を130円から140円への値上げを九州運輸局に申請したことを発表しました。認められれば2021年10月1日にも運賃改定が実施される見込みです。
長崎電気軌道の運賃改定は、従来の120円が現行の130円に変更された2019年4月以来で、2年半ぶりの改定となります。また、小児運賃は70円に据え置かれるものの、500円の一日乗車券は600円へと改定されます。
長崎電気軌道の発表によれば、この数年はインバウンドの好調で観光客の利用は増加していたものの、沿線人口の減少や高齢化などにより、輸送人員は1994年をピークに減少傾向にあるということです。加えて昨今はコロナウィルス感染拡大の影響もあって利用は大きく落ち込み、2020年の輸送人員は前年に比べ64.9%にとどまっています。
これに対し、交通バリアフリー法への対応や利便性向上のための費用は年々増加し、これらの2023年度の設備投資額は、2021年度の1.5倍近くが見込まれています。
長崎電気軌道では、こうした状況を踏まえ、「長崎市内における公共輸送機関としての使命に鑑み、安全性の向上やサービス改善を図るため収支の改善が必要」として運賃値上げに踏み切りました。
25年間100円均一を維持 運賃の優等生 長崎電気軌道
長崎電気軌道は、路面電車としては「日本一安い均一運賃」として知られており、今回の改定が認められ140円に値上げされたとしても、普通運賃としては依然日本一安い運賃となります。
特に1984年から2009年まで25年にわたり100円均一運賃を維持してきた、運賃の優等生です。
この間、1989年の消費税導入(当初は3%)や、1997年の消費税率改定(5%へ増税)の際も、利用者への転嫁は避け、100円均一運賃を維持していました。
しかし、2007年5月に公会堂前(現在の市民会館)交差点で2件の脱線事故が立て続けに発生。7月には2006年に起こった3件の事故について、「軽微な事故」として九州運輸局に届けていなったことが問題となり行政処分を受けることになりました。
これらの対策や運行コストの増加により、2009年10月より大人普通運賃を120円に改定、実に25年ぶりの値上げとなりました。一方、2015年と2016年にも同じ公会堂前交差点で脱線事故が2度発生、現場のカーブの改良工事を行ったことや、低床式電車の導入、運行管理設備の導入などでコストが上昇したことから、2019年には再び運賃改定を行い、大人普通運賃130円となっていました。