大阪メトロが終電延長社会実験を実施  日本はなぜ電車の24時間営業ができないの?  

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国交省、大阪メトロが終電延長実験へ

国交省と大阪メトロは、2020年1月24日と2月21日(いずれも金曜日)、御堂筋線(江坂―中百舌鳥)において、最終電車を2時間程度遅くする社会実験を行うと発表しました。インバウンドの好調や、新たな消費機会拡大を狙い、深夜帯の環境整備を行う実験を行うもので、 国交省によれば「沿線エリアにおける夜間の消費動向や人口流動、交通需要に与える影響を、 外国人と日本人等の属性に分けて調査します。あわせて、深夜運行の実施に際しての鉄道事業者側の課題や対応策についても確認します」としています。また、来るべき東京オリンピックで予定されている首都圏の交通機関の深夜サービスについての問題の洗い出しについても、あわせて検討するとしています。

終電が延長されるのは、御堂筋線全線(江坂―中百舌鳥)で、北大阪急行の江坂―千里中央は対象外です。例えば梅田駅の場合、南行の終電が通常0時08分、北行の終電が江坂行23時56分、新大阪行0時20分のところ、南行が2時7分、北行が江坂行1時56分、新大阪行2時20分と、約2時間の延長となります。延長時間帯は、ほぼ15分おきで運行されます。

御堂筋線は、大阪の中心部を南北に貫く大阪市の大動脈で、梅田、心斎橋、難波、天王寺といった日本でも有数の繁華街やビジネス街が連なっており、さらに新大阪で新幹線と接続し、大阪市北部のニュータウンと南部の住宅街を結び、1日の利用客は110万人に達します。営業係数は44程度で、全国の地下鉄の中でも飛びぬけて低く、大阪メトロが運営する地下鉄8路線の収益のうち、4割が御堂筋線と言われています。大阪で実験対象になるとすれば、御堂筋線以外にないでしょう。

深夜帯、運転規模は拡大するも終電延長は慎重

深夜帯の運転規模は、これまで拡大の一途をたどってきました。電車の本数が増えるにつれ利用客も増加、今や終電までラッシュが続く光景も珍しくありません。バブルの頃には、社会的要請として終夜運行が真剣に検討された時期もありました。その後、バブル経済の崩壊でこのような要請も立ち消えとなり、その結果終電まで日中と変わらない運行頻度が確保される例が増えましたが、運行時間帯はそれほど昔と変化せず終わっています。

個人的には、夜は人間にとって寝る時間で、本来の人間の性質から離れるのはよろしくはないと思うのですが、それは個人の考えであって、夜に活動したい人はたくさんいるのも事実です。また、今まで活動量が小さかった深夜において、鉄道の運行時間拡大が新たな消費需要を生み出すことは十分に考えられます。そうなれば景気も良くなって、まわりまわって自分の生活が潤うわけですから、そう頭から否定するわけにもいきませんね。

世界の都市では深夜でも電車、バスが走っている

世界の大都市では、深夜でも何らかの交通手段が提供されている例が多く、例えばニューヨークの地下鉄が24時間運行をしていることは有名です。また、ロンドン地下鉄も金曜、土曜日に限って一部で終夜運行が行われます。

24時間運行を行うニューヨーク市の地下鉄

また、鉄道に限らず深夜バスが運行されている都市もたくさんあります。例えばパリでは50路線近くで10~60分間隔という高頻度運行が行われ、運賃は昼間と同額です。この他、ローマやロンドン、アジアでは台北、香港、ソウルといった都市では、深夜でも数路線のバスが運行され、交通手段が確保されています。

日本では、大晦日から元旦を除くと、鉄道はせいぜい午前1時ごろまでの運転、深夜バスと言っても終電後に郊外へ向かう数本が運転されるだけで、深夜帯を通じて運行される公共交通機関は皆無です。

日本ではなぜ「終夜運行」が行われないのか

なぜ日本の鉄道は、深夜は動かないのか? その問いの答えは決まって「保守時間が必要だから」というものでした。その理由はもっともです。ニューヨーク地下鉄は、ほぼ全線が複々線となっており、夜間は片方だけを利用することで1日おきに保守時間を確保しています。しかし、貨物列車は24時間昼夜を問わず走っていますし、1970年代頃までは夜行列車も絶え間なく走っていました。保守作業も自動化、機械化が進み、施設のメンテナンスフリー化も進んだ今、例えば週末だけなどなら、十分日本でも対応できそうです。さらに、「保守が必要」というのなら、バスが走らない理由にはなりません。

決定的な理由は、日本では交通機関は「採算をとる手段」との考えが強いことではないでしょうか。海外の都市では、交通機関は「需要があるから供給する」ものなのです。電気やガスが、メンテナンスや採算性を理由に夜間の供給を止めるでしょうか? もちろん採算がとれるに越したことはありませんので、地方都市や過疎部など輸送量の少ない地域ではマイカーやタクシーに任せたほうが効率がいいでしょう。しかし、東京や大阪ほどの大都市になると、深夜の移動量も大きなもののはずです。

確かに、深夜も通じて鉄道を運行するとなると、人件費も大きく上がります。治安の問題や、保守作業の見直しでコストも上昇するでしょうから、事業者にはただの負担となることが考えられます。そもそも諸外国では、これらのコストはインフラ整備費として社会全体で負担することが多く、日本のように民営鉄道会社が都市交通を担っている例はあまり多くありません。もし日本で深夜交通を本格的に導入するなら、まずは「鉄道やバスは電気やガス、水道、道路と同じ社会インフラであり、利用者だけでなく社会全体で支える」という国民全体の意識改革が必要でしょう。その上で、事業者の負担増加分は社会費用から補填するしかありません。

保守、人員問題、課題はだれが負担すべきなのか

もう一つ考えられるのは、交通機関、特に電車やバスは「サービスを提供する側の都合が強く出ている」というものです。

航空券を購入するとなると、非常にたくさんの種類の運賃が出てきます。購入したい人は、購入時期、変更条件などと値段を見比べ、自分の目的に合った航空券を購入します。同じ区間、同じ日付であっても、需要に合わせ便ごと、あるいは航空会社ごとに価格が大きく異なることも珍しくありません。予約は全てネットで完結、座席指定まで自宅でできるシステムが、ずいぶん前から整備されていました。

ところが、鉄道の予約システムはどうでしょうか。ようやく新幹線など一部の特急でネットによる予約が始まりましたが、全体としては大きな遅れを取ってきました。「乗りたいんだったら買いに来い」と言わんばかりに、ほとんどの乗車券類は駅に出向いて買わなければなりません。販売価格は正式価格のみ。需要によって価格が決まるシステムもなく、売れなければ列車を廃止するだけで、需要を掘り起こそうという意欲も感じられません。「放っておいても客は来る」という国鉄全盛期の古き悪しき意識がまだ残っているようにも感じます。

先日JR西日本が、保守作業の効率化と、将来にわたって保守人員を確保することを理由に終電の大幅な繰り上げを発表しました。また、働き方改革で、終電周辺の利用客が減少していることも理由の一つに挙がっていました。この報道を聞いた時、将来的にはこれが根付くのか、世の中はこれからそちらに進むのか、とも思いましたが、世界を見ると左様にあらず、と今は感じています。人手不足、作業の効率化も避けては通れない問題ですが、そればかりを優先すると、需要に応えるのではなく、運行する側の都合が優先されかねません。その最たるものが、国鉄時代に悪名高かった「保守間合い」や新幹線の「半日運休」でしょう。

少子高齢化が進んでいる今、社会が少しづつ縮小していくことは避けられません。しかし、その中で社会インフラを維持していくことも避けられない事実です。コストや人手不足など様々な問題はあるでしょうが、利用者にとって便利な世の中が続くことを祈るばかりです。

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