京急から反転フラップ式案内表示器(パタパタ)がすべて引退へ
京急川崎駅で使用されてきた反転フラップ式案内表示機、通称「パタパタ」が、2022年2月中旬に引退となることが発表されました。京急川崎駅は、京急で最初に反転フラップ式の発車標が導入された駅で、奇しくも最後の使用駅ともなっていましたが、駅の更新工事に合わせて使用終了となります。
引退を記念して京急では様々なイベントが予定されている他、反転フラップ式案内表示機自体が全国でも希少なものとなりつつあることから、ネット上では惜しむ声も多数挙がっています。
京浜急行電鉄ニュースリリースより
反転フラップ式表示器とは?
鉄道における反転フラップ式案内表示機とは、一般的には駅やホームにおいて列車の種別や行き先を表示する「発車標」の一種です。
古くは、駅員が列車名や時刻の書かれたボードを掲示する方法や、該当する個所を点灯して旅客に知らせる方法などがとられてきました(いずれも、ローカル線などではまだ見ることができます)。
しかし、旅客や列車本数が増加し、行先も複雑になるとこの方式では追い付かなくなり、自動で表示する方法が考えだされました。まずは印刷された幕を回転させて表示する幕式表示器が普及しましたが、新しい列車が登場するたびに幕自体が全取り換えとなることや、案内が増加すると表示まで時間がかかることなどから、反転フラップ式表示器の登場でこちらに主役の座を明け渡すこととなりました。
反転フラップ式案内表示機は、上下に分かれた幕を回転させて内容を変える表示器です。回転するときに「パタパタ」と音がすることから、通称「パタパタ」とも呼ばれています。
1980年代から1990年代にかけては表示器の主役となり、大都市圏はもちろんローカル線に至るまで日本全国で見ることができました。主要ターミナルでは、ずらりと並んだ表示器が列車の発着のたびにパタパタと回転するのがおなじみの光景となっていました。
鉄道以外でも 反転フラップ式はこんなところにも
反転フラップ式案内表示機は、鉄道以外でも使用されてきました。
最も多かったのはやはり同じ交通機関の空港で、到着ロビーや出発ロビーには大きな発着案内板が設置され、パタパタと回転する様子が見られました。
羽田空港では、東京オリンピック対策として1964年(昭和39年)に大型の反転フラップ式発着案内板が設置され、1990年代に撤去されるまで羽田空港のシンボルともなっていました。
また、1978年から1989年まで放送された、毎週の邦楽トップ10を発表するTBS「ザ・ベストテン」では、曲の発表と表示に当時羽田空港にあった反転フラップ式表示機を模したボードが使用されるなど、テレビ番組でもしばしば使用され、反転フラップ式表示機はあちらこちらで見ることができました。
そういえばこんな時計もありましたね。40代以上の方なら見たことある方も多いのではないでしょうか?
1990年代以降 反転フラップ式は減少へ
反転フラップ式案内表示機は、駆動部が多くメンテナンスに手間がかかる一方で、適切にメンテナンスをすれば機械としての寿命は長いものでしたが、LED表示器や液晶表示器が普及したことにより、次第に姿を消すことになります。
特に日本においては多言語化に対応が難しいことなどから、1990年代以降の更新時に撤去される例が多くなり、2000年代以降は急速に姿を消していくこととなりました。
比較的後年まで残っていた空港でも、更新工事に合わせて撤去されることが多くなり、2020年代以降まで現存している例はほんのわずかとなっています。
姿を消しつつある反転フラップ式案内表示機ですが、液晶にはない暖かみが感じられることや、普段は見慣れない行先が一瞬表示されること、そしてパタパタという音がなんとも心地よく感じられることなどから、消え去りつつあることを嘆く声も大きいようです。
英語圏では日本語圏にはない表示方法も
日本だけでなく、当然海外でも反転フラップ式案内表示器は使用されています。近年は日本同様その数を減らしていますが、かつては駅や空港など多くの場所に設置されていました。
日本語圏との違いとしては、英語圏では使用する文字がアルファベット26文字と数字・英記号15文字程度のため、1文字1文字を独立して表示するタイプの表示器が設置されていたことです。なるほど、これなら改正で新しい行先や列車名が誕生しても、更新は最小限で済むことになります。