置き換え? 区間短縮? 『スーパーはくと』が2024年改正で増発で話題に

車両のはなし
スポンサーリンク

アマゾン タイムセール

人気の商品が毎日登場。

タイムセール実施中

スポンサーリンク

アマゾン タイムセール

人気の商品が毎日登場。

タイムセール実施中

『スーパーはくと』 2024年改正で1往復増発

2024年3月改正で、関西と山陰を結び『スーパーはくと』が、1往復増発(平日は2往復)されることが発表されました。

『スーパーはくと』は、智頭急行が所有するHOT7000形により運行される特急列車で、2023年現在は京都ー鳥取または倉吉で平日6往復、休日7往復が運行されています。

ダイヤ改正後は、京都発着が2往復となる代わりに、大阪発着が6往復となって合計8往復(1往復は毎日運転の臨時列車扱)となり、全体として乗車機会の向上が図られます。

『スーパーはくと』は、登場以来30年が経過することから車両の置き換えや、運転区間について大阪または姫路までの短縮が話題になっていましたが、今後の展開について、情報を整理してみました。

旧国鉄智頭線を引き継いで開業させた「智頭急行」と看板列車の『スーパーはくと』

『スーパーはくと』は、2023年現在京都―鳥取・倉吉を智頭急行線経由で結ぶ特急列車で、1994年に運転を開始しました。

智頭急行線は、もともとは国鉄智頭線として計画されていた路線で、1890年代に姫路ー鳥取に陰陽連絡路線のひとつとして、姫鳥線として構想されたのが始まりです。この姫鳥線は実際に一部で工事が始まりましたが、資金難により中止されました。

その後、姫鳥線の構想は1922年(大正11年)に当時の鉄道省が今後の鉄道建設計画の基礎として定めた「改正鉄道敷設法」で具体化され、「兵庫県上郡より佐用を経て鳥取県智頭に至る路線」として正式に予定線となりました。第二次世界大戦による中断を経たものの、地元の建設促進運動もあり、国鉄智頭線として1966年(昭和41年)に着工しました。

しかし、この頃から国鉄の赤字問題がクローズアップされることとなり、1980年(昭和55年)に国鉄再建法が成立。これにより、収支の見込みが立たないローカル線建設は凍結されることとなり、用地の95%を取得していた智頭線でも、建設は中止されることとなりました。

ただ国鉄再建法では、国鉄としては建設が中止された路線について、地元自治体が負担して建設し、第三セクター鉄道として運営することが認められていました。このため、国鉄との直通特急を走らせる前提で路線の建設を継続することとなり、最も恩恵を受ける鳥取県が中心となり、1986年(昭和61年)に鳥取県、岡山県、兵庫県の合意により智頭急行株式会社が発足、翌1987年(昭和62年)に工事が再開しました。

工事の再開に当たり、鉄道としての効果が最も発揮できるよう高規格化路線として建設されることとなり、従来95㎞/hで計画されていた最高速度は130㎞/hとされ、すでに取得されていた用地や、完成していた路盤を活かしながら一線スルー化やカント改良が行われることなりました。なお、当初は電化計画や、最高速度160㎞/h化計画もあったようですが、智頭駅で接続する因美線の電化が困難であること、投資金額のわりに費用対効果が小さいものであることから、振り子式の高出力気動車を使用した非電化路線として建設されることとなりました。

1線スルー形式の智頭急行久崎駅
智頭急行線の久崎駅 高速運転のため、原則高架構造で、交換可能駅は1線スルー形式を採用している Wikipedia(久崎駅)より @Mitsuki-2368

高規格路線のため、全長56.1㎞のうち43%の24.4㎞がトンネルで、大半は高架路線となっていて、構内踏切を除くと踏切が存在するのはJRと共用部分の上郡・佐用・智頭駅付近のみとなっています。

高規格線で高速バスを圧倒する『スーパーはくと』

さて、『スーパーはくと』はこの智頭急行線を経由し、大阪―鳥取を約2時間30分で結ぶ特急列車です。車両は智頭急行のHOT7000形が使用され、通常は5両、多客時は6両程度の編成で運行されています。

HOT7000形は、智頭急行が開業し『スーパーはくと』が運行を開始した1994年に登場、その後増発に合わせ1997年と2002年に増備され、34両が存在しています。

車体はステンレス製で、基本の配色は普通列車用のHOT3500形とほぼ共通の色調となっています。気動車としては世界で初めて振り子式を採用したJR四国の2000形をモデルとし、出力は350馬力エンジン2基を各車両に搭載、単純に出力だけで比べた場合、キハ181系の1.4倍、2エンジン搭載のキハ58形やキハ81形と比べて約2倍の出力を誇ります。

高出力とステンレス製の軽量車体により、最高速度は130㎞/hで、高規格線の智頭急行線内はもちろん、過密ダイヤの京阪神でも俊足の新快速から楽々と逃げ切る性能を持っています。

HOT7000形 非貫通タイプ
『スーパーはくと』が乗り入れる京都―姫路は、在来線の中でも列車密度が高く、15分間隔で130㎞/hで走る新快速から逃げ切る必要があるため要求される速度も高い ただ、速度は225系や227系に匹敵するが、走行音はひときわ大きく轟音を響かせて通過する 撮影:鉄道模型モール制作室

『スーパーはくと』の誕生により、播但線経由の『はまかぜ』で4時間以上、山陽新幹線と因美線の急行『砂丘』を利用しても4時間近くかかっていた大阪―鳥取は2時間30分で結ばれるようになり、大幅な時間短縮で好評を持って迎えられました。また、この時代は鳥取自動車道も山陰自動車道もなく、高速バスでも大阪―鳥取は4時間前後要しており、鉄道が高速バスに対抗できる数少ない区間となっていました。

HOT7000形 貫通タイプ
通常の運用では京都・大阪方、鳥取方とも非貫通タイプの先頭車両となるが、検査時などは方向転換できてどちらでも使える貫通タイプのHOT7020形が充当される場合がある 振り子機能で車体が傾斜しても車両限界に抵触しないよう、車体上方が絞られているのも特徴 Wikipedia(智頭急行)より @Mitsuki-2368

また、中国自動車道の開業以来、それまで大阪と山陰各地を結んでいた急行列車網は相次いで開業した高速バスに所要時間、運行本数とも太刀打ちできず大打撃を受け、削減に次ぐ削減が続いていましたが、智頭急行の開業は久しぶりに一矢報いることとなりました。

智頭急行 HOT3500形
普通列車用のHOT3500形 高速運転を行う特急列車から逃げ切るため、最高速度110㎞/hの性能を持つ 配色も特急用のHOT7000形と同系色となっている なお形式のHOTとは、沿線自治体の兵庫、岡山、鳥取の頭文字で、3500は出力350馬力にちなむ Wikipeida(智頭急行HOT3500形気動車)より @Mitsuki-2368

当初は新大阪―鳥取に2往復、新大阪―倉吉に1往復(この他にキハ181系を使用した『はくと』が新大阪―倉吉に1往復)でスタートした『スーパーはくと』は、利用の好調を受けて1995年に京都まで延長、1997年には5往復体制、2003年には7往復体制になっていました。

『スーパーはくと』の2つの話題 区間短縮と車両置き換え

『スーパーはくと』については、近年次の2点が話題となっていました。

一つ目は運転区間が短縮されるというもので、関西側の発着駅を姫路駅とし、京阪神とは新幹線で連絡するというものです。

これについては、2022年4月に鳥取県知事が定例議会で「JRから内々に話がある」と発言したことがあり、噂ではなく実際に検討材料としては上がっているようです。

ただし、これは『スーパーはくと』のサービス低下を意味するものではなく、同時に「姫路で折り返すことで、~(略)~山陰側のほうの増便の可能性というのは確かにあるのです」とも発言しており、つまり運行区間を短縮する代わりに運行頻度を高めて利便性の向上を高めようというものです。

『スーパーはくと』は登場以来、関西圏と鳥取の所要時間では3時間前後で結んでいる高速バスを圧倒していますが、高速バスはピーク時には30分間隔、土休日は19往復が運行されており、逆に運行本数では高速バスが『スーパーはくと』を圧倒しています。さらに高速バスの大阪側は大阪駅だけではなく、難波、USJ、神戸と多くのターミナルを経由する便利さを誇っています。

このため、智頭急行の利便性向上のためには、新幹線乗り継ぎの手間を増やしてでも本数を増加させたい意図は十分に理解できます。ただし、新幹線と在来線特急の乗り継ぎ割引も廃止される現在では、運賃・料金面ではかなり不利な状況に置かれることが予想されます。

また、『スーパーはくと』は京都―姫路でJR西日本に乗り入れていますが、この区間ではJRから智頭急行に対して車両使用料が支払われていて、智頭急行にとって貴重な収入源であることから、経営的にも苦しくなることが考えられます。

これらの点を踏まえた上で、2024年改正では大阪発着に短縮の上1往復の増発という結果に落ち着いたものですが、関西では2025年に万博の開催が予定されており、それに合わせて特急列車の再編が行われる可能性もあります。

智頭急行 大原駅
車両基地のある大原駅 交換する特急列車の横でさらに普通列車が退避する光景は、この路線が特急街道であることをよく表している なお、車両基地へはいったん引き上げ線を経由する必要があるが、引き上げ線の有効長は2両分しかなく、特急用のHOT7000形が入線することは考慮されていないWikipedia(大原駅_(岡山県))より @Masikyo

二つ目は、『スーパーはくと』用のHOT7000形の置き換えの話題です。

既に述べた通り、HOT7000形は3次にわたって製造されましたが、初期車両は1994年製で、間もなく車齢30年を迎えます。一般的な特急用車両の周期としてはそろそろ置き換えとなっても不思議ではありません。

実は、2018年度に発表された中期経営計画では、「特急車両更新についての検討」とした項目で「特急「スーパーはくと」の車両更新について幅広く検討します」との記述がみられ、車両更新について少なくとも近い将来の置き換えに向けて検討が進んでいることは事実のようです。また、当時の鳥取県知事が県議会で車両の置き換えに触れるなど、意欲を見せていました。

しかし、5年前に発表となったこの計画以降、具体的にどのように検討されたのかは明らかではなく、この経営計画は2023年度末をもって計画年度が終了となります。

ただし、引き続き検討材料としては上がっている模様で、一部ではJR東海のHC85系のようなハイブリッド車両の可能性も報じられていますが、報告によればまだまだHOT7000形が実用に耐える状況であることから、置き換えが喫緊の課題とはされていない模様で、全体としては「検討中」というのが正しいところのようです。

まもなく2024年度以降の中期経営計画が発表される見込みで、その中で検討の進捗具合が発表されるかもしれません。

※2023年もたくさんの方にご愛読いただき、ありがとうございました。次回の更新は2024年1月10日ごろを予定しています。

タイトルとURLをコピーしました