E4系2階建て新幹線『MAX』引退 日本の2階建て車両の歴史と世界の状況 

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オール二階建て新幹線E4系 どんな車両だった?

E4系「MAX」、2021年10月で引退へ

JR東日本が1997年から運用してきたオール2階建て新幹線の『MAX』ことE4系が、2021年10月1日を最後に定期運用から引退となります。1997年のデビュー以来、新型車両が登場した後も、そのスタイルと大きさで圧倒的な存在感を与えていました。また、1986年の東海道新幹線100系以来続いてきた「2階建て新幹線」の定期列車の歴史が途切れることにもなります。

通勤輸送の高まり 12両編成のE1系製造へ

E4系は、同様に全車両2階建てとして1994年から製造されたE1系の発展型として、1997年から2003年にかけて8両編成26本、合計208両が製造されました。

E1系新幹線登場時
登場当初のE1系 2000年代以降塗装が変更され、現在のE4系に近い配色となっていた Wikipediaより

1990年代は、首都圏では通勤圏が拡大し、新幹線による遠距離通勤客が増えていた時期でした。また、混雑を嫌って在来線から新幹線にシフトする通勤客も増加し、朝ラッシュにはせっかく新幹線に乗っても座れないことが日常化していました。これに加え、1990年代後半には開業初期に投入された200系が更新時期を迎えることから、朝ラッシュの輸送力増強と車両の置き換えを兼ねて、12両編成すべてが2階建て構造のE1系が投入されました。

E1系は高速性能よりも輸送力が重視され、編成全体の座席定員が1,235名と、200系の16両編成に匹敵する収容力を持っていました。一方で機器類の小型化や車体構造の見直しにより、2階建て普通鋼構造ながらアルミ構造の200系12両編成と比べ若干の軽量化を達成しています。

分割併合に対応 8両編成のE4系登場

E4系新幹線
塗装変更後のE4系 登場当初は黄色帯だったが、2014年ごろからピンク帯に変更され印象が変わった Wikipediaより

その後、東北新幹線では山形新幹線や秋田新幹線への直通列車として分割・併合を行う列車が増加、12両編成でのE1系では併結時に編成両数が多くなりすぎることから、1997年からは8両に短縮した編成を投入することとなり、これ以降製造されたのがE4系でした。

E4系は、やはり高速性能よりも輸送力が重視され、E1系と同様に最高速度は240㎞/hながら全編成を2階建て構造とし、車内販売やバリアフリーに対応するため一部に平屋席と階段昇降機を装備。新幹線初となる3+3列の座席を一部に採用したことにより、8両編成で817名という座席定員を実現しました。E4系を2編成併結した16両編成では座席定員は1634名で、高速鉄道1列車としては世界最大の輸送力を誇っています。

高速化、バリアフリー化に対応できず E4系引退へ

こうして合計26編成が製造されたE4系は、1997年から東北新幹線で、2001年からは上越新幹線で運用を開始。1999年からは山形新幹線『つばさ』との併結も始まり、一時は『つばさ』の併結相手はE4系のみという時期もありました。

他の列車と併結運転を行う傍ら、朝にはE4系同士の2編成併結で通勤輸送に当たるなど、当初の目的通りの運用が行われていましたが、最高速度が240㎞/hで高速化に対応できないことから、2012年には東北新幹線から撤退、以降は定期運用としては上越新幹線のみで使用されていました。さらに製造以来20年前後が経過して老朽化が進んだこと、2階建て構造がバリアフリー化の妨げとなることから、2020年度中にE7系への置き換えが発表されていました。

しかし、2019年10月の台風19号により千曲川が氾濫、車両基地が水没し北陸新幹線用のE7系10編成が使用不能(後に廃車)となったことから、急遽上越新幹線に投入予定のE7系を北陸新幹線に転用、このためE4系は2021年秋まで延命が図られることとなり、10月1日の運行を最後に正式に定期運用から外れることなりました。

なお、定期運用離脱後は全車が廃車されるわけではなく、上越新幹線の旅行商品専用列車としての運行が予定されているということです。

2階建て車両 日本での歴史

2階建て電車の登場 それは大阪市電

日本に2階建ての鉄道車両が登場したのはいつのことでしょうか?

その歴史は意外と古く、1904年(明治37年)にまで遡ることができます。

この前年の1903年、大阪市電が日本初の公営路面電車として開業。営業区間は約5㎞で、5両の電車が用意されましたが、このうちの1両はオープンデッキの2階席を備えた2階建て電車でした。集電ポールの姿が魚釣り用の竿に似ていたため「魚釣り電車」や、納涼電車として親しまれました。

2階建て大阪市電5号電車
大阪市交通局で保存されている、日本初の2階建て車両 当時イギリスで流行していた2階建て路面電車をモデルに製造されたという ただし、この車両は1953年に復元されたもので、残念ながらオリジナルは現存していない 復元時に実際に走行しているため、集電装置はポールではなくビューゲルとなっている 早期に役目を終えたオリジナル車は、松山電気軌道(現在の伊予鉄道)に売却され、その後一部の台車が能勢電鉄に譲渡 廃車後は資料的に価値の高いドイツ製の台車であったことから宝塚ファミリーランドの電車館で展示されていたが、2003年に大阪市へ寄贈され、現在は大阪市交通局が保管している  Wikipediaより

しかし、雨の日や風の強い日は運行できないこと、「家の中をのぞかれる」と沿線から苦情が出たことなどから1911年(明治44年)には廃止されました。

普通鉄道の2階建て車両登場 近鉄ビスタカー

路面電車以外で2階建て車両を導入したのは、1958年に製造された近鉄10000系と、翌年登場した量産車10100系が最初です。

近鉄10100系新ビスタカー
近鉄特急=2階建てのイメージを世間に定着させた近鉄10100系新ビスタカー 試作車ともいえる10000系の欠点を改良し、今日の2階建て車両の原型を作った 3両編成だが、2編成以上を併結して走行することもでき、車内の通り抜けを確保するため先頭車は非貫通、貫通タイプの両方が製造された Wikipediaより

大阪―名古屋において国鉄と競争関係にあった近鉄では、将来の近鉄特急の看板列車として新しい特急車両を投入することとなり、まず試作車両として初代ビスタカーの愛称を持つ10000系7両1編成が導入されました。7両のうち2両が2階建て車両となり、台車間を1段下げる「バスタブ構造」を取り入れ、さらに台車間の屋根を上方へ突出させるドーム構造をとることにより2階席の空間を確保する構造で、アメリカで見られるドーム型車両を模したスタイルとなりました。この10000系をベースとし、欠点を改良して製造されたのが量産車ともいえる10100系(新ビスタカー)で、3両編成のうち中間車が2階建て構造となりました。特例によって車両限界を超える車体を採用し、2階構造を車体いっぱいにまで拡大、近鉄特急=2階建てのイメージを定着させるとともに、今日見られる2階建て車両の原形が出来上がりました。

高速鉄道としては世界初の2階建て 新幹線100系

1985年、それまで0系ばかりだった東海道新幹線で、100系が12両で運転を開始、翌1986年には16両フル編成での運行が始まりました。この際、8号車食堂車と9号車グリーン車を2階建て構造とし、世界で初めて高速鉄道として2階建て車両が登場しました。

新幹線100系X編成登場時の
登場後間もない、100系新幹線の2階建て部分 X編成と呼ばれる初期編成で、奥の168型は2階がグリーン車で1階がグリーン個室、手前の149型は2階が食堂車と、多彩な編成設備も特徴だった 赤文字の「New Shinkansen」の頭文字をとった通称「NS」マークは、後にJRマークへと変更された Wikipediaより

高速鉄道としては、編成中に上方へ飛び出た2階建て車両は空気抵抗や重量で不利になりますが、それ以上に話題性を獲得するためあえて2階建てを採用し、国鉄の思惑通り人気を博すこととなります。100系は1991年までに66編成が製造され、1990年代初頭の新幹線の顔として君臨、新幹線=2階建てのイメージを定着させました。

この成功を受け、東北新幹線の200系でも2階建て車両を組み込んだG編成が登場、速達タイプの通称『スーパーやまびこ』に使用され、1990年代初めの東北新幹線のフラッグシップとして活躍しました。

特急から普通列車まで2階建て車両が在来線でも続々

国鉄分割民営化から1990年代前半にかけては、2階建て車両の投入が相次いだ時期でした。

1989年、東海道本線東京口を走る211系のグリーン車に、2階建て車両が投入されました。遠距離通勤の増加でグリーン車の需要が高まっていたためで、狭軌としては世界初の2階建て車両でした。これ以降、首都圏の在来線各線では2階建てグリーン車の連結が進むこととなりました。

211系2階建てグリーン車
狭軌鉄道としては世界で初めて2階建て構造を採用した211系 遠距離通勤の需要に応えたもので、当初は編成中のグリーン車のうち2両中1両が2階建てに差し替えられ、後に2両とも2階建てとなった 同じ東海道本線の113系編成にも連結され、首都圏各線に2階建てグリーン車が連結されるきっかけとなった Wikipediaより

211系の成功を受けて、JR北海道では『スーパーとかち』に、JR東海では『あさぎり』など特急列車へも2階建て車両の連結が進みました。寝台特急でも、改造車ながら個室が2階構造のものの多数登場。普通列車としても、常磐線の415系で1両のみ試作された後、1992年には在来線初のオール2階建て車両215系も登場しました。

また、私鉄でも京阪電鉄が1995年より特急の編成中に1両を組み込み、料金不要の私鉄特急としては破格のサービスを提供しました。

しかし、2階建て車両にも欠点がありました。車両の構造上乗降に時間がかかることや、バリアフリー化に対応が難しいことが挙げられます。そのため、現在に至るまで活躍しているのは大半がグリーン車など需要が限られるケースがほとんどで、混雑することが多い日本では、普通車ではやはり取り扱いが難しいようです。

海外では… 古くから2階建て車両が活躍している国も

ヨーロッパでは、日本よりも大型の車体規格を活かして、国によっては古くから2階建て車両を運行している所もあります。

フランス国鉄では、輸送力不足が問題となったTGVにおいて、1995年からオール2階建てのTGV Duplexを投入、列車本数はそのままで大幅な定員増化を実現しました。

オール2階建てTGV Duplex
E4系と同じくオール2階建て構造のフランス国鉄SNCFのTGV Duplex 最高速度は320㎞/h、基本編成は10両で、これを2編成併結した20両編成で運行される列車もある ただし、ホーム有効長の都合上客車1両は20m級で、20両編成でも日本の新幹線16両とほぼ同じ編成長となる また、各編成の両端は機関車で、20両編成のうち4両は旅客は乗車できない このため、1列車当たりの座席定員は1,032人で、平屋構造の編成と比べると1.4倍の輸送力の持つが、N700S系16両の1,319名より少ない Wikipediaより

フランス・パリ近郊を走るPER(イル=ド=フランス)では、定員増加と着席サービス提供のため、1930年代から2階建て車両による運行を行っています。中には2階建て3扉車も存在し、2階建て車両の欠点であった乗降時間が伸びる問題を解決しています。

パリ近郊線PER 2階建て3扉のZ22500型
パリ近郊で運行されている、フランス国鉄SNCFのZ22500型 2階建て車両だが片側3扉で、2階建て車両の欠点だった乗降の遅延を最小限にしている ヨーロッパ各国では通勤ラッシュといっても日本ほどは混雑しないため、座席定員の増える2階建て車両の投入はむしろ好まれる傾向がある  Wikipediaより

スイスでインターシティ(国内特急)に使用される主力車両IC2000型客車は、地上設備の改良なしに輸送力を増強するため、オール2階建てとなっています。編成中には食堂車またはビストロ、バーを連結しており、かつての100系新幹線のように2階席からの眺望を楽しみながら食事できるスペースが設けられています。

スイス インターシティ用IC2000型客車
スイス国鉄SBBでインターシティ(国内特急)に使用されるIC2000型客車 地上設備の改良なく輸送力アップを狙ってオール2階建て構造となった 編成中には食堂車も連結する 客車のため動力を持たず、車体の大きさのほとんどを輸送力増強に振り向けられることとなった なお、ヨーロッパでは進行方向によって機関車を繋ぎ変えることは基本的にしないため、進行方向によっては客車に取り付けられた運転台から最後部の機関車を制御して推進運転を行う Wikipediaより

近郊列車Sバーンでも、フランス同様定員の増加と着席率の向上を狙い、2階建て車両が多数運行されています。

スイス・チューリッヒ圏のSバーン(近郊列車)で運行されるRABe514形電車 ヨーロッパでは、都市部でも低床式ホームが一般的なので、1階席の床はホームと同じ高さとなり、階段を上り下りする必要がない 通勤電車を含めて動力集中式が長く採用されてきたヨーロッパでも、近年動力分散式を採用する例が増えつつあり、 RABe514形も制御電動車で付随車を挟む2M2Tとなっている Wikipediaより

この他、ドイツやオランダ、イタリア、そして国際寝台列車などでも、2階建て構造の車両を見ることができます。

そもそもヨーロッパでは、都市近郊の普通列車でも機関車+客車の動力分散式を採用する例が多いため、2階建てにしても動力装置の問題もなく、車体の大きさをめいっぱい客席空間として活かすことができるのが特徴です。

アメリカではこんなものまで2階建て 複層貨物鉄道輸送-コンテナ2段積み貨物列車

北米では、鉄道の旅客輸送はニューヨークやロサンゼルスなどといった大都市の地下鉄や観光列車などを除くと一般的ではありませんが、いくつかの都市圏では限られた施設の中で最大限の輸送力が発揮できるよう、2階建て車両で運行されている通勤列車が存在します。

アメリカの通勤列車
アメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキの通勤列車の例 ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市を除くと、アメリカ人にとって鉄道といえば貨物列車だったが、近年はこうした通勤列車が各都市圏で運行されている 車両限界いっぱいの武骨なデザインはいかにもアメリカっぽい 通勤列車といっても、日本とは異なりほとんどが非電化で、機関車+客車の運行形態が基本となる また、平日の朝夕しか運行されない路線も多い Wikipediaより

特に近年は環境意識の向上で自動車大国だったアメリカ、カナダでも、富裕層を中心に列車通勤を始める利用客が各都市圏で増加傾向にあり、大編成、大型車両での大量輸送は鉄道の本領発揮といったところです(コロナ禍による通勤スタイルの変化で、2021年現在利用状況が激変しているという情報があります)。

さらに北米では旅客にとどまらず、貨物列車まで2階建て列車が運行されています。

アメリカで運行される2階建てのコンテナ貨物列車
複層貨物鉄道輸送 Double-stack rail transport と呼ばれる、コンテナ2段積みによる貨物列車 時には列車全長が数キロに及ぶ場合もあり、1回あたりの輸送量は日本の比ではなく、鉄道による貨物輸送はアメリカではなくてはならない 当然重心が高いトップヘビーとなるため、貨物の積載にはできるだけ重心が低くなるよう考慮する必要がある 当然高速運転などできるはずもなく、そもそもアメリカでは鉄道貨物にスピードは求められていない Wikipediaより

1984年に始まったこの輸送は複層貨物鉄道輸送 Double-stack rail transport と呼ばれ、現在アメリカの貨物列車の7割がこの方式で運行されています。中央部がへこんだトレイのような貨車に、2段重ねにしたコンテナを輸送するもので、単純に計算して1列車の輸送力が2倍になることになります。

8重連牽引・全長2キロ!アメリカの貨物列車 8-Engine Trains on Tehachapi Loop
カリフォルニア州南部にあるテハチャピ峠Tehachapi Passを越える貨物列車 全長2㎞にも及ぶ貨物列車がループ線で峠を越える 1本目は本務機3重連+後補機重連、2本目はなんと8重連 場合によっては、編成中に機関車を連結する場合もある 勾配にも力ずくで立ち向かう、なんともアメリカらしい光景

いかにもダイナミックなアメリカらしい輸送方式ですが、架線や橋梁、トンネルなどがあり車両高さに制限の厳しい路線は走行できません。それらの改修には巨額の費用が掛かるため現在は制限のない区間で運行されていますが、いくつかの路線では改良工事が行われたか、または改良が予定されています。

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