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2020年の豪雨被害で不通となっている肥薩線について、2024年3月中にも関係者が復旧へ向けて合意する見通しであることが報じられました。しかしながら、一部ではこれを否定する報道もあり、事実関係はどうなっているのでしょうか。
不通の肥薩線 2033年復旧の合意向け「最終調整」か 各社が報じる
2020年7月の豪雨で被災し、今もなお不通となっている肥薩線の復旧に関し、2024年3月中にもJR九州と地元が合意することで最終調整入っていることが報じられています。
これは、2024年3月13日付で報道各社が報じているもので、それによると3月下旬にも国、地元、JR九州で検討会議を開き、その席上で2033年の復旧を目指した復興方針案で合意する見通しだということです。
これが事実なら、肥薩線は被災以来3年8か月ぶりに復旧へ向けて動き出すことになります。
2020年6月豪雨で甚大な被害の肥薩線 JR九州は復旧へ消極的
肥薩線は、熊本県の八代駅と鹿児島県の隼人駅を結ぶ124.2㎞の路線です。その全通は1909年(明治42年)と古く、この時点では後に鹿児島本線となる川内経由の路線はまだ存在しておらず、当初は熊本ー人吉―隼人―鹿児島を結ぶ鹿児島本線の一部として開業しました。八代―川内―鹿児島が開業するのは1927年(昭和2年)で、この時点で肥薩線と改称、後に日豊本線も開通したことにより隼人―鹿児島は日豊本線に編入され現在の路線が完成しました。
球磨川に沿った美しい車窓風景や、ループ線やスイッチバックなど観光資源にも恵まれ、ローカル線ながら観光客も多い路線でしたが、2020年7月のいわゆる令和2年7月豪雨によりほぼ全線が被災、特に八代―人吉は橋梁や路盤の流出など大きな被害を受け、それ以降不通となっています。
2022年3月、JR九州は肥薩線の復旧費用が235億円となる試算を公表、特に、流出した球磨川第一橋梁、球磨川第二橋梁の復旧だけでその半分の125億円に上ることを明らかにしました。さらに被災前の時点で年間9億円の赤字が出ている点を踏まえ、JR九州は復旧には消極的な立場をとり続けてきました。
これに対し、国や熊本県はJR九州の負担が少なくなるよう財政支援を行うことを表明。235億円のうち、190億円程度を河川事業と合わせて国が負担し、さらに25億円余りを熊本県が負担、復旧費用の9割を公費負担としてJR九州の実質負担は1割程度におさえ、さらに復旧後は上下分離としてインフラ部分は沿線自治体が所有、負担することが提案されました。
しかし、ここまでの条件を提示されても、JR九州はなぜか「税金を投入する意味はあるのか」「利用促進も併せてもらわないと困る」と上から目線を貫き通し、首を縦に振ることはありませんでした。
報道では、2024年3月にも予定されている検討会の席上で、熊本県側がJRの希望する利用促進案について回答する予定だとしています。
熊本県知事が「合意の事実」を否定 2024年3月のうちに最終判断か
しかし、この報道の直後、熊本県知事はコメントを発表し、「合意にめどが立ったという事実はありません」と報道を否定しました。また、JR九州も「何も決まっていることはありません」とのコメントを出しています。
実際のところ、合意についての公式発表はなく、事実は分かりませんが、熊本県知事が「(4月15日の)任期満了までにめどを立てるため、全力を尽くしたい」とコメントしていること、大手や地元の報道各社が信頼できるソースがないまま報じることは考えにくいことから、「現在のところ合意はないものの次回で合意に至る」というシナリオが完成しており、正式発表前に関係者のリークがったという可能性が高そうです。実際報道では「合意があった」という表現ではなく「合意に向けて最終調整」といった表現が目立ちます。
いずれにしても、2024年3月中には何らかの結論が出されることが予想され、続報が待たれます。