日本の鉄道技術、イギリスへ

 各種報道によると、日立グループはこのほど、イギリスの鉄道会社アベリオUKから、イギリス中東部向け高速鉄道車両165両(33編成)の受注を成立したそうです。

 

 受注金額は4億ポンド(約532億円)といいますから、かなり大きなプロジェクトになります。

 電気、ディーゼルの両方の機関を搭載し、電化、非電化を問わず走行できるハイブリッド車両で、最高速度は200㎞/h、車内ではフリーwifi、コンセント、乗客向けディスプレイを装備、座席へのケータリングサービスも予定されているそうで、速度はともかく、日本の新幹線よりサービスレベルは上なのでは? と感じてしまいます。

 

 近年、日本の鉄道技術がイギリスで導入される例が相次いでいます。

 近い例では、ロンドン北東の路線で、同じく日立製の800型車両(愛称AZUMA)が5月より運行を始めています。2009年に投入されたイギリス南東部を走る新幹線車両395型も、日立製でした。

 車両だけでなく、JR東日本はイギリスでの鉄道運行権を獲得、遅れや事故の多い現地の鉄道事情改善が期待されています。

 

 イギリスは、言うまでもなく鉄道発祥の国です。どれを開業とみなすかは諸説ありますが、1821年に蒸気機関による旅客運送が始まりました。日本に先立つこと50年、イギリスの鉄道の歴史は、もうすぐ200年になります。

 1920年代、イギリスの鉄道は規模でもサービスでも最盛期を迎えます。しかしイギリスでは間もなくモータリゼーションが起こり、自動車の所有率が高まり、道路輸送が急成長します。この結果、鉄道輸送は大きく減少、さらに第二次世界大戦で鉄道は荒廃してしまいました。

 大戦後、施設やサービスの復旧である程度の水準まで回復したイギリスの鉄道ですが、島国であるイギリスは、ほかのヨーロッパ諸国と比べ鉄道近代化に大きく後れを取ることになります。近代化計画も失敗に終わり、自動車の発達で鉄道整備は大きく抑制され、1923年に31000kmあった路線は、1970年には19000kmまで減少しました。

 

 1970年代以降、辛うじて近代化政策が行われ、ドーバー海峡トンネルによってヨーロッパ本土と結ばれた2000年代以降、本格的に新幹線の建設が行われるようになり、今日もハード、ソフトの両面で改善が進んでいる真っ最中です。

 

 1872年(明治5年)、日本の鉄道は新橋-横浜間で産声を上げました。明治維新後間もない日本には鉄道の技術などなく、設備、技術のすべてをイギリスから買い取り開業にこぎつけました。それから150年、今度は日本の技術が海を渡り、イギリスにやってきました。かつての大先輩イギリスに日本の技術が導入されるなど、当時のだれが考えていたでしょうか。

 そう思うと、歴史の移り変わりが非常に興味深く感じられます。

 

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