肥薩線の復旧「単独では断念せざるを得ない」 JR九州が言及

社会

※この記事は2020年9月24日に投稿したもので、情報が古い可能性があります。2022年3月26日付「どうなる肥薩線の存続問題 鉄道での復旧費用は235億円」も合わせてご覧ください。

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肥薩線 JR九州単独では復旧断念か 復旧費用は100億円越え

7月の九州豪雨で大きな被害を受け、今も一部が不通となっている肥薩線について、JR九州は自社単独での復旧について「非常に厳しい」との認識を示しました。復旧費用についてはまだ算出中ではあるものの100億円規模と推定され、開業後の収支も厳しい状態にあり、このままでは復旧は断念せざるを得ないとしています。

肥薩線は、熊本県八代市の八代駅と鹿児島県霧島市の隼人駅を結ぶ86.8㎞の路線です。このうち八代―人吉は球磨川に沿って走る通称「川線」と呼ばれる風光明媚な路線です。また人吉―吉松は、ループとスイッチバックの大畑駅や日本三大車窓の一つといわれる矢岳越えなどの名所がつながり、通称「山線」とも呼ばれています。残る吉松―隼人とあわせ、『ななつ星』を始め『SL人吉』『いさぶろう・しんぺい』『はやとの風』など、観光列車も運行されています。

このうち八代―吉松は、2020年7月のいわゆる令和2年7月豪雨により大きな被害を受け、2020年9月24日現在も不通となっています。特に球磨川に沿う八代―人吉の被害は甚大で、沿線のハイライトでもあった球磨川第一橋梁、第二橋梁が流失、並行する道路とともに路盤や護岸といった構造物まで流失したり土砂で埋まるなどし、JR九州によると「新たに線路を作り直す」ほどの大きな被害を受けています。

JR九州では、これまで「路線維持を前提として復旧費用を算出する」としていましたが、正確な復旧費用はまだ算出されていないものの100億円を超えることが見込まれることから、今回「JR九州単独では復旧は難しい」との判断に至りました。

このまま廃線? 今後復旧方法や復旧後の経営について協議を

肥薩線 かわせみ・やませみ
人吉駅に停車する『かわせみ・やませみ』
Wikipediaより

では廃線が決定したかというとそういうわけではなく、JR九州としては「どう復旧していくかは一企業だけの問題ではない」とし、復旧方法などについては「球磨川の治水事業とも関わる」として、今後は沿線自治体など関係機関との協力を模索する考えです。

考えられるケースとしては、鉄道軌道整備法を適用して国や沿線自治体が復旧費用の一部を負担するほか、治水工事と合わせ護岸や道路との一体的な復旧を行うことでJR九州の負担を圧縮することが考えられます。熊本地震で被災し今年8月に4年ぶりに復旧した豊肥本線ではこの法律を適用し、約50億円かかった復旧費用のうち1/2をJR九州が負担、1/4ずつを国と沿線自治体で負担することで、JR九州の負担額を圧縮しました。

しかし、肥薩線沿線では自治体の被害も大きく、財政的にも厳しいことから、豊肥本線と同様に復旧に向けて動き出せるかは不透明な状況です。また、仮に復旧したとしても、肥薩線の利用自体が芳しくなく、2018年には5億円の赤字を出しており、JR九州では「赤字額も大きく、単独経営は許されない」として、今後経営の在り方についても沿線自治体との協議を持ちたい考えを示しています。具体的には、鉄道として存続する場合は線路などインフラを沿線自治体が所有・維持し、JR九州は運行に専念する上下分離式か、第三セクターへの経営移管、あるいは鉄道としては廃線としたうえで日田彦山線見られたようなBRT化やバス転換が念頭にあるものと思われます。

JR単独での復旧が難しい以上、自治体の支援が欠かせませんが、熊本県は現在のところ自体の行方を静観する方針をとっています。一方、国土交通省からは肥薩線の復旧をサポートする声も上がっており、球磨川の治水事業を含めて今後検討が進められる見込みです。

復旧には長い年月がかかると思われますが、人吉駅で接続するくま川鉄道はすでに路線存続を決め復旧へ向けて動き始めています。肥薩線もまた、以前の姿を取り戻してほしいものです。

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