2023年改正で 北海道からキハ183系がすべて引退
JR北海道から、長年北海道の特急列車として活躍してきたキハ183系の引退が発表されています。
国鉄末期から分割民営化を挟んで、基本番台や機関出力型、そしてリゾート列車を含め181両が製造され、一時は北海道の特急列車はキハ183系のほぼ独壇場となっていました。老朽化と後継車両の投入により2000年以降は次第に数を減らし、2022年現在は石北本線の特急『オホーツク』『大雪』に使用される31両と、リゾート列車の『ノースレインボーエクスプレス』5両の計36両となっていました(この他にJR九州が『オランダ村特急』→現在の『あそぼーい!』として製造したキハ183系1000番台が4両存在しますが、今回は割愛します)。
2023年改正では、特急『オホーツク』『大雪』に『おおぞら』のキハ261系化で余剰となっていたキハ283系が充当されることとなり、これによりキハ183系は定期運用を失うこととなります。また、『ノースレインボーエクスプレス』も車体の老朽化により、同じく2023年春の引退が発表されています。
TOMIXから国鉄時代がプロトタイプのキハ183系基本番台と、マイクロエースから『ノースレインボー』がラインナップ
Nゲージとしては、各メーカーからすでに発売済みですが、この中でもTOMIXから2022年11月に基本番台がリニューアル発売となっています。
塗装は国鉄色で、青函連絡船用のアンテナ名が付属、トレインマークは『北斗』のほか札幌ー網走を結んだ『おおとり』が用意されるなど、国鉄時代を再現したものとなっています。
また、マイクロエースからは『ノースレインボーエクスプレス』5両セットが2022年12月発売予定です。
「雪と寒さに強い」北海道専用の特急車両 キハ183系
キハ183系は、1979年(昭和54年)に試作車が登場、1981年(昭和56年)から量産が開始された、北海道向けの特急型気動車です。
北海道では、函館―旭川に道内初の特急となる『おおぞら』が設定された1961年(昭和36年)10月、いわゆるサンロクトオ改正以来、全国標準となるキハ80系を特急列車に使用してきました。
しかし、もともとキハ80系は本州向けの車両であり、特に冬季の厳しい環境と、連日の長距離運転が車両の劣化を進めていました。1970年代の後半になると、こうした酷使から車両の老朽化も進み、故障も頻発するようになっていました。
こうした状況から、北海道では新たに北海道の使用環境に合わせた新型特急車両の投入が計画され、1979年にキハ183系として試作車両が登場しました。
特に、電車においては1978年(昭和53年)に北海道専用となる781系が札幌―旭川の『ライラック』に投入され、従来の485系1500番台を置き換えつつありました。485系1500番台は、485系の中でも寒冷地仕様と呼ばれるグループで、耐寒、耐雪装備を備えた車両でしたが、北海道の冬の厳しさは本州向けの装備では対応できず、トラブルや故障が頻発し、冬季には列車運行が危ぶまれる事態にもなっていました。781系は、近郊用の711系同様、冬の北海度での使用に耐えるよう酷寒冷地仕様となり、雪や寒さに対するトラブルをほぼ解消し、冬季の安定運行に貢献していました。
キハ183系は、この781系での実績と、すでに本州向けの特急列車で実績のあるキハ181系をベースとし、北海道での使用を考慮した「雪と寒さに強い」車両として設計されました。
まず、1979年に試作車となる900番台の12両が登場、1980年より運用を開始。1年半にわたる入念な試運転の後、1981年より量産型となる0番台(基本番台)の投入が始まりました。
車体は、分割併合を前提としない非貫通タイプの前面で、着雪を防ぐためくの字に折れ曲がった独特のスタイルとなりました。悪天候時の視認性を高めるため、711系や781系同様、運転台上に2灯と腰部左右に2灯の合計4灯の前照灯を備えています。また、防寒のため客用窓が本州向け車両より小さめに作られているのが、外観上の特徴です。
機関は、サービス電源を積むキハ183とキハ184はキハ40をベースとした220馬力エンジンを、中間車キハ182とキロ182はキハ181やキハ66をベースとした440馬力エンジンを搭載、180馬力エンジンを1基または2基搭載するキハ80系と比べ、大幅に出力アップが図られました。
当時の北海道では、青函連絡船と接続する函館を中心としたダイヤが組まれ、特急列車は函館から長躯目的地を目指しており、食堂車の連結も必須でした。しかし、1980年(昭和55年)改正からはこれを札幌を中心とした現在に近い体系に改めることとなり、運行時間も短くなることから、キハ183系では食堂車は製造されませんでした。
なお、試作車両と基本番台は、一部の窓割が異なる他、キロ182には食堂車廃止に対応するため軽食を供給できる売店が設置されるなどの変更点があります。1982年から試作車12両についても、量産車と使用を合わせる量産化改造が行われました。
基本番台となるキハ183系0番台は、試作900番台と合わせて101両が製造され、経年劣化の進んでいたキハ80系を置き換えましたが、全車両の置き換えには至りませんでした。北海道からキハ80系がすべて引退するのは、オリジナル車両が1992年、ジョイフルトレインに改造された車両がすべて引退したのは2002年(すべてが廃車となったのは2007年)でした。
国鉄の「置き土産」 外観の刷新と出力向上を図ったキハ183系後期型
国鉄最後のダイヤ改正となった1986年(昭和61年)ダイヤ改正では、JR発足後を見据えたダイヤ設定と車両の配置が行われることとなり、特に経営の困難さが予想されるJR北海道に対しては、国鉄の予算で新型車両の配置が行われることとなりました。
これがキハ183系のうち、後期型と呼ばれるグループで、1986年から500番台/1500番台として36両が製造されました。これらはN183系とも呼ばれます。
基本的な構造はキハ183系の基本番台を受け継ぎながら、高速化に対応するため機関出力はサービス用電源を持つキハ183‐1500番台が250馬力、それ以外のキハ183-500、キハ182-500、キロ182‐500の各番台は550馬力のエンジンを搭載、最高速度120㎞/hでの運転にも当初から対応していました。
前面は分割併合に便利なよう貫通型に変更され、JR四国に投入されたキハ185系に酷似したデザインながら、基本番台から続く4灯の前照灯が配置されています。
JR北海道となった1988年(昭和63年)には、エンジン出力をさらに強化した550番台/1550番台、通称NN183系が登場。機関出力はキハ183‐1550番台が330馬力、それ以外が660馬力となり、この年の改正より函館本線で120㎞/h運転を開始しました。
1991年には、『スーパーとかち』に使用するため、2階建て車両のキサロハ182‐550番台が新製され、一般車両としてはキハ183系最後の新造車両となりました。
キハ183系は、その後北海道の特急列車の主力車両となり、用途に合わせて様々な改造が施され、実にバリエーション豊かな車両となりました。お座敷車両に改造されたグループや、キハ40改造のキハ400に併結できるよう、仕様を改めた車両も登場しました。
1994年には、『北斗』スピードアップ用としてキハ281系がデビューし、130㎞/h運転を開始。これに合わせキハ183系も130㎞/h対応に仕様を合わせた車両が登場しています。
キハ183系ベースのリゾート列車も
キハ183系は、その性能を買われてリゾート列車としても活躍しました。
1988年には、その第一弾として『ニセコエクスプレス』が登場。山岳路線での運行も考慮し、平屋構造とされましたが、翌1989年には2階建て車両を連結した『クリスタルエクスプレス トマム&サホロ』(2階建て車両の連結は1990年から)が運転を開始。さらに1991年には、『ノースレインボーエクスプレス』も登場し、北海道のリゾート列車は6編成体制となりました。
それまで北海道で活躍していたリゾート列車は、いずれもキハ80系か急行用のキハ56系からの改造車でしたが、『ニセコエクスプレス』『クリスタルエクスプレス』『ノースレインボー』の3列車はキハ183系をベースとして足回りから車体まですべてが新製車でした。
そのため、力不足の改造車に対し、その他の特急列車と足並みをそろえて走行することができ、臨時列車や団体列車だけでなく、定期列車の代走として走ることもありました。
しかし、景気の後退でバブル景気に沸いていた設計当初の目論見は大きく外れ、リゾート列車としての役割も大きく変化、ラウンジなどの設備も必ずしも需要にマッチしたものではなかったようです。
2000年代以降は、北海道内の各方面へ新型の特急車両の投入が進むとともに、次第に老朽化も進行。2001年以降は基本番台を中心に本格的な廃車が始まりました。2010年になると、廃車はN183系にも発生するようになり、2018年には基本番台が消滅しています。
残る車両も2019年以降は苗穂運転所に集められ、2022年4月改正時点では石北本線系統の『オホーツク』『大雪』での運用を残すのみとなっていました。
なお、JR北海道ではキハ183系の引退を記念し、「今こそ輝け!北のキハ183系」と題したキャンペーンが実施されています。
キハ183系の一部をデビュー当時の塗装にした復刻塗装車両が2022年4月より運行されている他、記念乗車券やグッズの販売も行われいています。くわしくはこちらをご覧ください。