2024年春以降に順次新型車両へ置き換え 伯備線『やくも』を撮ってきました
伯備線を走る特急『やくも』は、1982年(昭和57年)の電化完成以来381系が使用されてきましたが、JR西日本は2024年度にも新型車両275系を投入し、『やくも』を置き換えることを発表しています。
投入は2024年春以降とされ、最終的に4連×11本の44両が投入される見込みです。一斉置き換えではなく、順次置き換えとされていますが、近いうちに最後の国鉄型特急車両となった381系は、引退することとなります。
引退迫る中、伯備線の381系を追ってみました。
キハ181系から381系 特急『やくも』の歴史
『やくも』に381系が投入されたのは、伯備線電化となった1982年(昭和57年)改正でした。
急カーブの続く伯備線には、投入車両として標準型の183系ではなく振り子機能の付いた381系が選ばれました。
投入当初はサロを含む9両編成で、9編成81両が開設されたばかりの出雲電車区に投入されました。それまではキハ181系による運行で、食堂車を含んだ最大11両の堂々たる編成で運行され、運行区間も益田や浜田まで足を延ばす列車もありましたが、電化を機に岡山―出雲市(のちに知井宮=現在の西出雲)に整理されました。
キハ181系での運行開始当初は1日4往復でしたが、電化の時点で8往復となり、国鉄最後の1986年(昭和61年)改正ではさらに1往復増発される代わりに6両編成化されました。この際、サロを連結するために中間電動車の先頭車化改造が行われ、新形式クモハ381が誕生しています。
JR化後はたびたびテコ入れも行われ、1994年改正では速達タイプの『スーパーやくも』が誕生し、当時の『スーパーくろしお』に準じたパノラマグリーン車を連結した専用編成が使用されました。速達タイプは利用者に好まれたのか、最盛期には『やくも』全列車のうち半数が『スーパーやくも』となった時期もありましたが、車両運用上の都合もあり『スーパーやくも』は2006年改正で廃止。全列車の所要時間が平均化されました。それに代わって、2007年からはリニューアル編成の『ゆったりやくも』が登場しています。
2021年改正で『踊り子』系統から185系外引退したことに伴い、国鉄型車両を使用した最後の特急列車となっていましたが、すでに述べた通り2024年以降は新型車両が投入され、381系は置き換えられる予定です。
ローカル線だった伯備線 新幹線開業で一躍幹線に
伯備線は、岡山県の倉敷駅から鳥取県の伯耆大山駅を結ぶ、138.4㎞の路線です。
運行形態としては、倉敷駅、伯耆大山駅を始終とする旅客列車はなく、山陽本線の岡山や山陰本線の米子、出雲市まで直通する列車が主体となっています。
もともとは中国地方のローカル線に過ぎませんでしたが、1972年(昭和47年)の山陽新幹線岡山開業の際、新幹線と島根県の最短ルートとなることから、一躍主要幹線としての地位を獲得、この時に新幹線連絡列車として特急『やくも』が誕生しました。
当初はキハ181系による運転で、ローカル線としては異例の新製配置となり、食堂車を含む基本8両+付属3両の堂々たる編成でした(付属編成は山陰本線では運用されない場合あり)。
この時点では、『やくも』は1日4往復でしたが、この他に岡山ー浜田・小郡を結ぶ急行『しんじ』も運転されていました。急行が主体の陰陽連絡列車の中で、新幹線連絡という重要な役割を与えられた伯備線には、新製配置されたキハ181系による特急列車の運行という当時としては破格のサービスが提供されていました。
1982年改正では、伯備線とそれに続く山陰本線の伯耆大山ー知井宮(現在の西出雲)が電化され、『やくも』は381系による運転となります。さらに『しんじ』を系統分割した急行『伯耆』が『やくも』に吸収され、伯備線の急行列車の運行はなくなりました。なお、伯耆大山―知井宮は山陰本線初の電化区間でした。
先に述べた通り、『やくも』は2024年春以降に新型車両273系が投入されることとなっており、近い将来381系は置き換えられることになっています。また、EF64も全検を今後は受けないことが発表されており、近い将来置き換え対象になるものと思われ、国鉄時代から続いた伯備線の景色が一変することとなります。