JRはコロナ禍を乗り切れるのか? 頼みの新幹線は利用不振、地方切り捨て戦法はどこまで通用する?

社会
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ローカル線の整理が始まる? JR西日本が地方路線の再編について言及

JR西日本は2021年2月9日、2020年度はコロナウィルス感染拡大の影響で過去最大の赤字となる見込みであることを踏まえ、地方路線について廃止も視野に入れた再編を行うことを表明しました。

JR西日本の発表をまとめると、今までは新幹線や特急列車、京阪神の収益でローカル線の赤字をカバーしてきたが、今年度はそれができず今後しばらくはできる見込みがないためローカル線の運営をやめたい、ということになります。

例によって儲かる部分だけを残し、不採算だからそれ以外はさっさと切り捨てる、というまあお役所仕事というか、今までのやり方をまたしても通そうという訳ですが、さあ果たしてこれで未来永劫会社が存続できるのでしょうか。

国鉄の置き土産 食いつぶすJR

JRという組織が誕生して今年で34年になります。何となく国鉄分割民営化の後に誕生した「新しい組織」という感じが未だにしますが、前身の「日本国有鉄道」とう組織が存在したのは1949年6月から1987年3月までの間で、38歳の誕生日は迎えられず、37歳で役割を終えたわけすから、もうすぐ国鉄の存在期間と並ぶことになります。

廃止線区についての具体的な言及はないものの、廃止対象として大方の予想を集めるのが木次線 かつては陰陽連絡路線の一つとして優等列車もあったが、現在はローカル輸送のみで、出雲横田―備後落合は1日3往復となっている 冬季には積雪のため長期運休となることも多く、代行輸送もタクシーで事足りるほど 2019年度の輸送密度は190人しかない それでも、中国地方の鉄道地図での存在感は大きく、三江線の亡き今島根県と広島県を結ぶ唯一の鉄道 万が一廃止となると、広大な鉄道空白地帯ができてしまう
Wikipediaより

国鉄という組織は、しばしば国策に振り回され、役所仕事でコスト意識も低く、加えて社会運動の道具ともなり、最終的には37兆円と言われる借金を残して民営化という道筋を辿りました。とかく借金のことばかりが言われますが、そのおかげで日本は国土の隅々にまで鉄道が走る鉄道大国となり、長距離から短距離まで、夜行列車や貨物列車も含めて鉄道ネットワークは世界的にも密なものとなっていました。これだけのインフラ整備を成し遂げたわけですから、むしろ37兆円は負債ではなく日本の将来へ向けての投資ともいえますし、そもそもこれが日本の経済発展にどれほど寄与したかは言うまでもありません。さらなる国土の発展のための先人の大切な置き土産であるわけです。

国鉄改革の一つとして特定地方交通線に選定され、廃止第一号となった北海道の白糠線 1983年から1990年にかけて、この制度で廃止になったのは全国で83路線3,157㎞に及んだ そのうち38路線1,310㎞は鉄道としての存続を選んだが、7路線がすでに廃止された すでに鉄道は交通の主役ではなく、当時の人は廃止してもバスさえ走れば問題がないように思ったかもしれないが、鉄道の廃止は過疎化を加速させ、バス路線すら存続できない例も多くなってきた 大都市圏など利益の出る地域と一緒に経営するか、公的支援がないとローカル線単体で存続するのは難しい
Wikipediaより

しかし、この間、JRがやってきたことは何かというと、とにかく不採算、非効率は切り捨てて、儲かる都市圏や新幹線、特急列車さえやっていればよい、ということでした。話を今回のJR西日本に限るなら、国鉄から民営化の際、ローカル線もたくさんあって赤字になっては困るから、山陽新幹線や近畿圏という絶対に儲かる道具とセットで引き継いだわけです。それを何を勘違いしたのか、自分たちのやることはこれらの維持と発展で、それ以外はばっさばっさと切り捨て、地域のことなど全く顧みず、一方では新幹線や特急列車に乗らなければならないように仕向けてきたのでした。そもそも、冒頭の表明も「今まで維持してやってきた」という上から目線がありありと感じられるものです。せっかく先人たちが築き上げてきた財産を、「今儲からないから」と切り捨てていく、これがJRという組織でした。

姫新線に投入されたキハ127 JR西日本では、新幹線や京阪神には積極的な新型車両の投入、線路の改良が進むが、地方路線にはあまり関心がないようだ 同線では新型車両の投入に合わせて高速化事業を実施し、大幅な利用客の増加を図ることに成功したものの、車両導入費35億円は兵庫県からの無利子貸付、地上設備改良費の45億円のうち35億円が行政負担で、もはや上下分離式と言っても過言ではない この姿が自称「民間企業」だそうだ
Wikipediaより

静かに進む若者の鉄道離れ 一方LCCや高速バスは台頭

その結果、この34年間で何が起こってきたかというと、若者の鉄道離れが静かに、そして確実に進んできました。全国の在来線は新幹線の開業で切り刻まれ、運賃の連続性もなくなり割安切符もどんどん割高に、使いにくくなりました。ローカル線の整理も進み、鉄道で旅できるところや、鉄道自体に触れ合える地域も減少しました。安価に移動できた夜行列車の廃止も相次ぎ、資金のない若者にとって鉄道は高く、縁のないものになっていったのです。

そして、今や若者の旅行や移動は、LCCや高速バスが担うようになりました。航空機などはずいぶん前からネットで予約、座席指定が当たり前で、若者は当然のようにそれらを利用していますが、JRのシステムは大きく遅れを取っていました。

通称『大垣夜行』に充当される165系 夜行列車とフリー切符を組み合わせると、移動費だけで宿代まで節約でき、節約旅行にはなくてはならない存在だった 夏休みなどの長期休暇には、席を求めて何時間も前からホームには長蛇の列ができる光景もお馴染みだった
Wikipediaより

近年、JR各社では、一人100万円前後という超高価格なクルーズトレインが人気を集めています。JRという会社は、今日明日すぐに儲かることには群がるのが好きなようで、2匹目のドジョウ、3匹目のナマズといった具合に次々と登場しました。なぜ、こんな超高額商品が売れるのか、それは、主な顧客層であるシニア層は、かつて鉄道で旅行していたからです。

電源車を含めて14両の大編成を組んで走る『はやぶさ』 寝台特急は夜行列車の中でも別格の存在で、いつかは寝台特急に乗ってやる、と直角イスの夜行列車から眺めた人も多いのではないだろうか 国鉄末期の頃の写真で、ロビーカー連結前の編成 夜行列車は日本中でありふれた存在で、気軽に利用できる乗り物だった
Wikipediaより

今の60代以上の人たちが若いころ、日本にはたくさん若者向けの列車が走っており、国鉄は資金に余裕のない若者の強い味方でした。冷房もなく、硬いボックスシートで長時間過ごした思い出のある方も多いと思います。その中には、「いつの日か、豪華な鉄道旅行をしてやる」と思っていた方も多いでしょう。だからこそ、高額商品が今売れているのではないでしょうか。若いころに鉄道旅行を経験しない今の若者がシニア層となったとき、果たしてクルーズトレインは見向きされるのでしょうか。いや、そもそも鉄道という手段自体が、いまよりもずっとずっと注目されなくなるでしょう。その時、JRは永遠に儲かり続けると思い込んでいる新幹線や特急列車に、どれだけの人が乗ってくれるでしょうか。

10系客車時代の急行『きたぐに』 急行は列車は多彩な設備を連結している例が多く、安価を求める乗客は座席で、快適性を求める乗客は寝台でと様々な需要に応えていた 深夜帯を含めて停車駅も多く、設備はもちろん長距離輸送から短距離輸送まで多くのニーズに応えていたのが急行列車だった 国鉄末期から民営化以降列車の整理が進んだが、決して需要がないわけではなく、特急化して客単価を上げたり単価の低い列車の運行をしたくないという、運営する側の都合が強く感じられた
Wikipediaより

コロナ禍襲来 JR頼みの新幹線・大都市圏が軒並み危機に

そこに来て、このコロナ禍です。

1年以上に及ぶコロナ禍の影響で、人々の行動パターンはすっかり変わってしまいました。都市部ではリモートワークが一気に進み、通勤需要もすっかり減少、図らずもラッシュの混雑が解消されてしまいました。かつては行楽といえば、遠く、お金をかけて旅行するのが常でしたが、残念ながら当分それは望めそうにありません。出張などビジネス需要もほとんどなくなり、今後も元に戻ることはないでしょう。

つまり、JRが経営の頼みとしていた新幹線、特急、大都市圏が、ことごとく利用不振に陥ってしまいました。しかし、JRという会社は今までそれらを拡大することしか考えてこなかったので、たちまち危機に直面したのです。

コロナ禍で経営が苦しいのは、何もJRだけではありません。もともと地方ローカル鉄道は苦しい状態がずっと続いています。

しかし、その中で真っ先に廃止をちらつかせるような会社はありません。どこの会社も何とか経営を維持しようと様々な努力をされています。きれいな車窓動画を公開し、賛同者には運賃相当額の寄付をお願いする会社、本来は観光客向けの高価な観光列車を、地元の方に安価で提供して鉄道に触れ合う機会を設ける会社、あるいはネーミングセンスあふれるグッズを販売して収益の一部とする会社など様々です。もちろん、鉄道会社以外の多くの企業が、このコロナ禍を乗り切るため、あるいはアフターコロナを見据えて様々な商品や企画を打ち出しています。

ですが、JR西日本が何かしらのアクションを起こしたという話は聞きません。もちろん、何もしていないとは申しません。どちらかというと、今までブラッシュアップしてこなかった分、為す術がないというのが正しい表現でしょう。そうなるとどうしたら自らの商品の魅力を高めたり、話題作りに努めたり、そういうことは何もなしにいきなり「廃止も視野に入れて」となってしまいました。コロナウィルスが原因で利用が低迷というなら、なおのこと利用者のせいでもありません。こんな時こそ、利用者目線でコロナ後の世界を展望するべきではないでしょうか。

アフターコロナ JRは対応できるのか?

1年以上にわたって続くコロナ禍ですが、世界的にもワクチンの接種も進みいよいよ出口が見えてきました。「アフターコロナ」という言葉も盛んに聞かれますが、JRはどのような社会を見ているのでしょうか?

もはや、以前のような旅行や出張は期待できません。リモートの推進で、不必要な出張は少なくなるでしょう。団体旅行や慰安旅行も当面は控えられるでしょうし、旅行=遠出のイメージを持っていた日本人に地元回帰の習慣が植えつけられました。コロナ禍の中、比較的堅調なのは、地元の利用者を取り込んだ観光施設でした。これからは地域を大切にする企業が生き残るかもしれませんが、JRにはあまりそういう気概が感じられません。その証拠が、冒頭のローカル線の整理です。

残念ながら、JRという会社に今までの延長線で明るい未来がやってくることはないでしょう。

遅かれ早かれ訪れるといわれていた新しい社会が、コロナのおかげで早くやってきたわけですが、JRはこの危機を乗り切れるのか? そろそろ、国鉄改革のフィードバックが必要な記事なのかもしれません。

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