木次線 大雨被害から運転再開へ 存続の瀬戸際続く

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大雨被害の木次線 7月14日より運転再開

2021年7月6日から13日ごろにかけて、島根県東部を中心に大雨が続き、山陰地方の鉄道でも大きな被害が発生しましたが、利用状況から存続の瀬戸際に立たされている木次線についても、7月14日より全線で運転が再開されました。

JR西日本の発表によれば、7月9日現在、山陰本線で土砂崩れが7か所など13か所が被災、特に倉吉ー浦安は7月11日まで運休となりました。翌12日から全線で運転を再開しましたが、この日は再び大雨により米子―浜田が終日運休となっています。

JR西日本 米子支社管内被災個所一覧より

また、木次線では、7月6日から7月9日まで宍道ー備後落合の全線で運転見合わせとなり、線内では5か所の土砂崩れが発生しました。

7月10日に被害の少なかった木次―備後落合が運転を再開、7月12日には全線で運転を再開しましたが、やはり雨脚が強くなり10時過ぎに宍道ー出雲横田が運転見合わせとなり、午後には全線で運転取りやめとなりました。

その後安全確認が順調に進んだことから、今日7月14日より全線で通常通り運転が再開されています。

かつての陰陽連絡線から一転 存続問題がちらつく木次線

JR西日本は2021年2月18日、存続問題を含めてローカル線の在り方について関係機関と協議していくことを発表しました。対象線区については述べられていませんでしたが、当然存続の協議対象として考えられたのが木次線でした。

木次線は、山陰本線と接続する島根県の宍道駅から、芸備線と接続する広島県の備後落合駅を結ぶ81.9㎞の路線です。急峻な中国山地を超える路線で、急勾配や急カーブの続く路線ながら、かつては山陽地方と山陰地方を結ぶいわゆる陰陽連絡線として重要な役割を果たし、広島と松江を結ぶ急行『ちどり』などが行き交っていました。

陰陽連絡急行サボ
陰陽連絡列車と言えば、その主役は急行だった かつては中国地方を縦断するありとあらゆる路線で急行網が形成されていたが、道路整備が進むにつれてその数を減らし、JRへと引き継がれた時点ではわずかの存在になっていた 辛うじて残った列車も、1990年代にはほぼすべて姿を消した 撮影:鉄道模型モール制作室

しかし、陰陽連絡のメインルートが電化された伯備線に移ったことや、沿線の道路整備で利用は激減。1往復残った急行『ちどり』が1990年3月改正で廃止されてからは、純然たるローカル線となっていました。2019年の輸送密度は190人、国鉄分割民営化の1987年でさえ690人で、本来なら特定地方交通線として国鉄時代に廃止対象となるべき路線でしたが、沿線道路の未整備を理由に存続が決まりました。

沿線には大きな街も少なく、自動車への依存度が非常に高い地域で、最も運行本数の多い宍道―木次でも1日10.5往復、最も少ない出雲横田―備後落合では3往復という閑散線区となっています。さらに山岳地帯を走るため豪雨、豪雪などの被害もたびたびあり、沿線の道路整備が進んで代替交通手段の確保が容易になったこともあって長期運休となることも珍しくなく、木次線では2012年以降は1ヶ月以上の運休が7回発生しています。

こうした状況から、三江線の次は木次線か、と噂されるようにもなり、沿線自治体にも危機感が生まれ、様々な利用促進策が行われてきました。

観光列車『出雲おろち』も運行終了 木次線廃線へのカウントダウンか

山間部を走る木次線は、その険しい地形から急勾配や急カーブが連続する路線ですが、逆にそれを活かして観光利用の促進が行われていきました。また、同様に中国地方のローカル線であった三江線が廃止される一方で、これまで木次線存続について具体的に言及されたことはありませんでした。

特に列車密度の低い出雲横田―備後落合は30‰を超える勾配の続く難所で、出雲坂根駅の3段スイッチバック(2段階折り返し)は、JR西日本唯一として有名です。また、出雲坂根駅と一つ南の三井野原駅の間は、6.4㎞の間に標高が126mも高くなり、三井野原駅は標高726m(727mという表記もあり)とJR西日本の中で最も高い標高のある駅となっています。険しい地形を抜けるのは鉄道だけではなく、並走する国道314号線でも、二重ループで標高差167mを駆け降りる奥出雲おろちループ橋がよく知られており、木次線の車窓から眺めることもできます。

出雲坂根駅付近のスイッチバック ジグザグに列車が昇っていく様子がよくわかる 次の三井野原駅との標高差は160mにも達する 駅近辺には「延命水」と呼ばれる湧水があり、よく知られているが、1日3本の路線でわざわざ来る人も少ない 近年の出雲坂根駅の利用客は1日平均1人でだという Wikipediaより

こうした観光資源を生かし、1985年には米子駅で出雲坂根駅で湧き出る延命水「奥出雲の銘水」の販売を始めるなど、地元と一体となった増収策や乗客誘致が行われています。また、1998年からはトロッコ列車『出雲おろち』の運行が始まり、年間14,000人を集める木次線としてはなくてはならない観光資源となっていました。

出雲おろち
DE15+12系2両で運転される『出雲おろち』 1998年の運行開始以来木次線の主役を務めてきた 年間の利用客は多い年で2万人を超え、コロナ禍前の2019年度も14,000人程度が利用した DE15は本来は除雪用の機関車で、ラッセルヘッドの取り付け部がそのままで使用される この他、DE10がけん引する場合もあるが、どれも経年車であることは確か 運行継続には、遅かれ早かれ後継車が必要となる Wikipediaより

ところが、JR西日本は車体の老朽化を理由に2023年度限りで廃止することを発表、これが木次線廃止へ向けての序曲ではないかとの考えが広まりました。JR西日本は公式発表として後継車両の計画はないことを明らかにしていますが、島根県と沿線市町は6月7日、JR西日本に『出雲おろち』の運行継続を求めるとともに、後継車両を導入する場合には財政支援を行うことを発表しました。

大雨による土砂崩れ ひとまず廃線危機を乗り越え運行再開

そこへきて、木次線では大雨による土砂崩れが5か所も発生。特に被災した個所が木次線の中でも利用客の多い区間だっただけに、この区間が不通となると存続問題に直結するのではないかと心配されていました。

木次線利用促進の一つとして行われている、定期券補助の取り組み 取り組み自体は悪くないと思うが、1日10.5往復では通勤にはとても使えないだろう 周知のため雲南市長が木次駅前でチラシを配っている姿がニュースになっていたが、駅に来る人はすでに列車の利用者であり、列車を使わない人はそもそも駅に来ないはずなので、誰に向けてアピールしていたのかは謎 そもそもこうしたPRを行うために、企画者やPR者自らは車で移動するわけで、沿線人口の減少とも相まって地元の利用促進は難しい 本来JR発足時の想定では、新幹線や大都市圏とローカル線をセットにすることでローカル線の維持も図るはずだったが、JR西日本はうまみの部分以外はすべて切り捨てるつもりらしい 木次線利用促進協議会WEBサイトより

しかし、今回の被害に関してはいち早く復旧や安全確認が進み、無事運転再開となりました。昨今ローカル線では、自然災害が廃線の引き金となる例が多くみられることから、木次線の存続について心配された方も多かったかとは思いますが、ひとまず一安心といったところです。

一方で、備後落合駅で接続する芸備線は、区間は明らかにされていないものの、末端区間について存続が協議される段階に入っています。万が一芸備線が廃止ということになれば、木次線は全くの盲腸線となり、利用状況から考えても廃止される公算が高くなります。現在のところ、木次線の存続については言及がなく、芸備線も上下分離式で存続する可能性がありますが、いずれにしても今後の存続については予断を許しません。

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