EF210 伯備線に初入線 単機で試運転を実施
2023年11月1日から2日にかけて、EF210が伯備線で走行したと話題となっています。
伯備線に入線したのは、岡山機関区に所属するEF210 147で、けん引する車両はなく、単機での試運転でした。11月1日夜に岡山駅を出発、同日深夜に伯耆大山駅まで走行し、翌11月2日に岡山駅へ戻っています。
伯備線をEF210が走行するのは初めてとみられており、その様子はSNSでも多くの投稿が見られます。
EF210の試運転 何のため? 伯備線EF64を置き換えか
さて、この試運転の目的ですが、噂されているのはやはりEF64の置き換えではないか、との説が有力になっています。
「伯備線『やくも』で最後の活躍をする381系とEF64貨物を撮りに行ってきました」でも紹介しましたが、伯備線には定期と臨時合わせて4往復の貨物列車が設定されており、愛知機関区に所属するEF64が運用されています。
愛知機関区には、JR貨物の保有するEF64 1000番台のすべてとなる35両配置され、伯備線のほかや中央本線、篠ノ井線などで、製造当初の目的通り山岳路線で使用されています。しかし、JR貨物はEF64に対して今後全般検査を行わないことを発表しており、検査周期が72カ月(6年)であることを考えると、遅くとも2028年頃には全車両が検査切れとなります。
中央本線や上越線でEF64の後継機として投入されたEH200は、2011年に運用を開始した24号機以降増備がなく、さらにもともとはEF64の重連運用を1台でこなすためのハイスペック機であり、伯備線のように数両のコンテナ車を牽引するためにはオーバースペックとなることが考えられ、後継機について様々な予想が出されていました。
JR貨物 2020年に「伯備線用機関車6両」の調達計画を予定
実は、2020年12月の段階で、新型機関車を伯備線に6両投入する計画があることがわかっています。
日本貨物鉄道株式会社 – 意見招請に関する公示①東海道・山陽線用直流電気機関車26両、②伯備線用直流電気機関車6両、③中央線用直流電気機関車7両
日本貿易振興機構 政府公共調達データベース
これは日本貿易振興機構の発表する政府公共調達データベースでも確認することができ、それによると、JR貨物が「東海道・山陽本線用直流機関車」として2026年度までに26両、「中央本線用電気機関車」として2025年度までに7両、さらに「伯備線用電気機関車」として2024年度末までに6両の調達を予定していることが掲載されています。
この案件は2022年春に三菱電機が受注することで決定した様子ですが、受注内容は2026年度末までに27両となっており、伯備線への投入計画についてもここでは触れられていません。
また、これらの発表の中では、「直流型電気機関車」との記載は見られるものの、EF210であるという記載はどこにもなく、はっきりとしない状態でした。
そのため、今回EF210による試運転が行われたことで、伯備線用のEF64については、そう遠くない将来にEF210で置き換える可能性が高まった、とみられています。
なお、勾配線区で使用されることが主目的だったEF64に対し、EF210は主に東海道・山陽本線など主に平坦線区での使用を考えた汎用設計となっています。それに加え、中国山地を抜ける伯備線は積雪に見舞われることも多く、上越線など豪雪地帯で使用されることが前提のEF64には十分な耐寒・耐雪装備を備えられていますが、EF210はあくまで暖地向けの設計となっています。
これらの状況から、現行のEF210がそのまま使用されるのか、あるいは新たに勾配線区、耐寒・耐雪装備を備えた新形式が区分されるのかに注目が集まっています。
伯備線では、2024年春以降『やくも』に273系が投入され、順次381系を置き換える予定となっています。EF64も近日中に置き換えとなれば、国鉄型車両ばかりだった伯備線の景色も一変することとなります。