形式区分「番台」と「番代」 どちらが正しい?
鉄道車両の形式には、車両の性能や装備を表す数字や記号のほかに、その車両固有の番号を示すものとして製造番号が付与されます。
例えば国鉄の車両形式では、103系のうち運転台付きの車両はクハ103形として区分され、製造順にクハ103-1、クハ103‐2というように車両形式+製造番号が与えれます。しかし、仕様が違うなどで同じ車両形式でも区分したい場合は、必ずしも製造番号順ではなく、飛び番号が与えられることがあります。先の103系の場合、地下鉄千代田線乗り入れ対応車両はそれまでの103系とは異なる部分も多かったことから、形式区分として製造番号が1001から始められることとなりました。これが一般的に「番台区分」と呼ばれるもので、千代田線乗り入れ用の103系は「103系1000番台」として区分されることとなりました。
私自身も「番台区分」として認識していたのですが、表記によっては「番代」となっている場合もあり、実は統一されていないことがわかりました。
Wikipediaの「番台区分」の項目を見ても、「番代」と表記する場合もある、というあいまいな表記がなされています。
「番台」と「番代」、どちらが正しいのでしょうか?
日本語の使い方では、鉄道車両は「番台」が適切
日本語の使用方法からみれば、鉄道車両の形式区分としては「番台」がより適切なようです。
これは、日本語の「台」と「代」の使い方から判別することができます。
おおむね「台」と「代」の使い分けをまとめてみると
- 「代」は歴史上の期間や時期、人物の年齢の範囲、世代を区分する場合に使用する 例としては「2000年代」や「60代」など
- 「台」はそれ以外で、グループ分けや区別する場合に使用する
と説明されていることが多いようです。しかし、「60代」と表記しても「60歳」となれば「60歳台」と表記したり、時間であっても「11時台」と表記したりするなど、慣用的に使っていてもいざ理由を問われる※と微妙なものもあり、このへんが日本語の難しいところです。
ただし、鉄道車両の場合は歴史上の期間、人物の年齢ではなく製造番号や仕様で区分するわけですから、やはり「番台」という表記が適切ということになると思います。
実際には… 「番台」と「番代」が混在している どちらでもよい?
この「番台」と「番代」にみられる混用は、個人で書いているブログやSNSはともかく、鉄道会社や大手の鉄道雑誌、鉄道模型メーカーなどにも見られ、まったく統一されていません。
鉄道会社の公式発表では、通常形式区分までが表記されることは稀ですが、2022年5月に実施されたJR貨物吹田機関区撮影会の情報公開の中では、展示車両の例として「EF210形式300番台」という表記が見られました。
また、JR東日本の公式サイトでは、車両紹介ページで「番代」表記が使われていますし、JR西日本も公式発表の中では「~代」「~番代」という表記をしてますが、これはJRの前身である国鉄が「番代」を採用していたためと思われます。国鉄が「番代」表記を用いていた理由は、風呂屋の「番台」(もはや死語ですが)との重複を避けたという説もありますが、定かではありません。
鉄道雑誌の場合、鉄道ファン、鉄道ピクトリアルは「番台」、鉄道ジャーナルは混在で、鉄道ダイヤ情報は「番代」という表記が多いようですが、記事により一定しない場合もあるようです。
鉄道模型メーカーでは、KATOは「番台」を使用し、TOMIXは「番代」、グリーンマックスとマイクロエースは商品により混在している模様です。
つまり、現在のところどちらも日常的に使用されており、どちらが正しくてどちらが間違いかは、もはや判断できないようです。日本語としては「台」が適切かとは思いますが、言葉選びは多数決的な要素も大きいので、結論としてはどちらでもいいということになるのでしょうか。
なお、当サイトでは原則として「番台」表記を使用していますが、引用文や商品名に使われている場合は、引用元の表記や商品名を優先して記載しています。
※30代という表記は、漫然と年齢が30~39歳という世代を指すのに対し、30歳台とは、具体的に30歳、31歳、32歳・・・の人のグループを指すため、「代」と「台」が使い分けられるそうです