2023年3月改正 E257系投入で高崎線系統から651系が運用離脱
JR東日本は、2023年3月改正で高崎本線の特急列車にE257系5500番台を投入することを発表しました。これに加え、現在の『草津』を『草津・四万』に名称変更、平日運転の『スワローあかぎ』と土休日運転の『あかぎ』が『あかぎ』に統一されます。
これにより651系は定期運用を失う見込みで、JR東日本初の特急型車両であり、在来線で初めて本格的に130㎞/h運転を行った651系の去就に注目が集まっています。
在来線初の130㎞/h運転を行った651系 そのカギはブレーキだった
651系は、常磐線の485系『ひたち』置き換え用として1989年改正で運転を開始しました。
それまでの485系のイメージを継承しながら、白を基調とした斬新なスタイルで、そのカラーリングから「タキシードボディのすごいヤツ」というキャッチコピーが与えられ、正面の大きなLED愛称表示も話題となりました。485系を使用した列車と区別するため、651系を使用した列車には『スーパーひたち』の愛称が与えられました。
651系の最大の特徴は、在来線の車両としては初めて130㎞/h運転を行ったことでした。
在来線の最高速度は、1968年(昭和43年)10月のいわゆるヨンサントオ改正で120㎞/hとなって以来、651系の運転開始まで向上が見送られてきました。
日本の鉄道車両には、かつては鉄道運転規則で600m条項と呼ばれる安全基準があり、在来線では最高速度から600m以内で停止できる性能が求められていました。
これは、一般的には踏切の安全対策と言われていますが、なぜ600mとなったのかは諸説があり、はっきりとはわかっていないようです。いずれにしても、列車の速度向上の足かせとなっていたことは事実で、長きにわたり120㎞/hが在来線の最高速度となっていました。
651系では、すべての車輪に滑走検知システムを搭載することで、ブレーキをかけた際にロックした車輪の制動力を一時的に開放する再粘着制御をおこなうことにより、全体として安定した制動力を確保することができ、これが最高速度の向上につながっています。
なお、2002年に鉄道運転規則自体が廃止されたため、それに代わる国土交通省の省令では、「制動距離は600mを基準とするが、その他の方法により安全が確保できる場合はこの限りではない」とされています。また、1989年改正では485系を使用していた『雷鳥』が、湖西線で同じく130㎞/h運転を開始しましたが、これは湖西線には踏切がないため特例として認められたものでした。
651系は、形式が示す通り交直両用型ですが、搭載している機器は50Hz専用となっています。現在はインバーターの普及で周波数の問題はなくなりましたが、JR東日本では当時試作編成の207系を除いてインバーター制御の車両はなく、JR東日本にVVVF制御の量産車が登場するのは、1993年の209系の登場を待つ必要がありました。
651系 常磐線の『スーパーひたち』で運転を開始
651系は、1989年改正で常磐線の特急『スーパーひたち』として運転を開始しました。
常磐線の優等列車は、首都圏に近い上野ー勝田とそれ以北では輸送量が大きく違い、また全線通しの需要も東北新幹線の存在で少ないことから、需要に応じて組み合わせ出来るよう基本の7両と付属の4両という編成構造とされました。これらの組み合わせで、末端区間では付属編成のみの4両、最需要区間では基本編成単独の他、基本編成と付属編成を連結した11両で運転されていました。
1989年改正では、基本編成7連5本と付属編成4連3本が投入され、1日7往復の『スーパーひたち』として運転されました。翌1990年改正では、増備車7連3本、4連5本が2次車として投入され、『スーパーひたち』はほぼ1時間間隔での運転となり、仙台まで運用区間を拡大しました。逆に485系『ひたち』は、平以北から撤退し、この区間は651系による運転のみとなりました。
651系は、その後1992年にさらに基本、付属1編成ずつが投入され、それぞれ9本ずつの合計99両が製造されました。
1997年からはE653系の投入が始まり、翌年には485系が常磐線系統から撤退、この時点で列車名が『スーパーひたち』と『フレッシュひたち』の2本に統一されました。
2012年からは後継車となるE657系の投入が始まり、2013年改正で常磐線の特急列車はいったんE657系に統一されます。この時点で付属編成を中心に廃車が始まるようになりますが、運用を外れた651系は波動用として、主に185系が担当してた臨時列車を中心とした運行に使用されました。また、E657系の一部が改造工事で運用を外れるのに伴い、所要数を満たすため2013年から2015年にかけて再び『フレッシュひたち』に充当されました。
その後は需要に合わせて緩やかに廃車も進行、常磐線からは2020年の普通列車を最後に完全に引退となりました。
また、2011年の東日本大震災では、常磐線を走行中の付属1編成が不通区間に取り残され、長期にわたって原ノ町駅に留置されたままになっていましたが、2016年に廃車されています。
651系の活躍は常磐線から高崎線へ 1000番台へ改造
2014年からは、常磐線での運用を外れた651系に対し、高崎線系統の特急で使用するための改造が施され、1000番台として区分されたグループが誕生しました。
直流区間しか走行しないため、一部の交流機器を撤去して直流区間専用になっていますが、すべて撤去してしまうと車体の重量バランス上問題が生じるため、基本的には回路を切り離したうえで機器の大半は残置されています。
後に追加で投入された7両を含め、全部で7連×6本と4連×3本の合わせて54本が投入され、185系で運転されていた高崎線系統の特急列車を置き換えました。ただし、付属編成は2015年以降定期運用がなく、1編成を残して2017年に廃車となっています。残りの1本は、『伊豆クレイル』に再改造され、小田原―伊豆急下田で運転されました。しかし、車両の老朽化により2020年3月で運転を終了、6月にラストランが予定されていましたが、コロナウィルス感染拡大により中止となり、そのまま廃車となりました。
2023年改正でE257系5500番台に置き換え 651系はどうなる?
先にも述べた通り、JR東日本は、2023年3月改正で高崎線にE257系5500番台を投入、651系を置き換えることを発表しました。これにより、651系の今後について注目が集まっています。
651系の今後については、1980年代の製造開始で車齢も40年に高いことから、これを機に廃車が進行する可能性が高そうです。
ただ、651系の配置数6編成に対し、投入されるE257系5500番台は5編成とみられており、この1編成の差が何を意味するのかは分かりません。
単なる運用削減なのか、あるいは651系の一部が波動用として残るのか、この辺りは判然としておらず、続報が待たれるところです。